ファッション

パリ五輪メダルで認知度が急上昇 パリ発「ショーメ」の新CEOに聞く歴史とモダニティーの共存

PROFILE: チャールズ・レオン/ショーメ最高経営責任者

チャールズ・レオン/ショーメ最高経営責任者
PROFILE: 香港生まれ。香港中文大学とパリのESSECビジネススクール卒業。カルティエでキャリアをスタートし、マーケティングや小売分野に従事。2006年にショーメに入社。6年間にわたり中国市場中心にアジア太平洋地域を担当。その功績が認められ12年、ディストリビューション&セールス担当バイス・プレジデントに昇格。18年、フレッドのCEOに就任。24年1月から現職
PHOTO:KOHEI KANNO

フランス発「ショーメ(CHAUMET)」は、1780年にパリで創業した老舗で、ナポレオン1世御用達のジュエラーとして知られている。世界中の王族や貴族に愛され、ティアラがメゾンのアイコン。7月に開幕するパリオリンピック・パラリンピック(パリ五輪)のメダルも手掛けるフランスを代表するジュエラーだ。メダルの発表時に全世界でニュースが放映され、ブランドの認知度がアップしたようだ。今年1月には、同じくフランス発ジュエラーの「フレッド(FRED)」を率いたチャールズ・レオン氏がショーメの最高経営責任者(CEO)に就任。4月に東京都内で開催した顧客向けハイジュエリーイベントのために来日したレオンCEOに話を聞いた。

フランスの国宝的なジュエラーとして時代と共に進化

WWD:CEOに就任して初めて行ったことは?

チャールズ・レオン=ショーメCEO(以下、レオン):新年にチームのみんなとガレット・デ・ロワ(フランスで新年を祝うケーキ。王様のお菓子と呼ばれ、切り分けたケーキの中のフェーヴという陶器を当てた人は、その日、王・王女になれるといわれ、紙製の王冠をかぶって祝う)で、好調だった昨年度の実績も兼ねて戴冠式のように祝った。

WWD:「ショーメ」のジュエラーとしてのポジショニングは?

レオン:特別で名声があるフランスの国宝的な存在。フランスの歴史上の重要な出来事と共に歩んできたし、今年のパリ五輪のメダルをデザインした。メダルは、最も美しく輝く宝石であるべきだ。買えるものではない。勝たなければ手にすることができない貴重なもの。それを作ったパリのブランドであることを誇らしく思う。

WWD:他のジュエラーと違う点は?

レオン:歴史以外では、最高の職人技、品質の高さ、洗練されたパリジャンテイストが挙げられる。あまり目立たず、非常に高度なクラフツマンシップが光るクワイエット・ラグジアュリーを体現するジュエラー。文化的な遺産のようなメゾンだ。

WWD:歴史あるメゾンをどのように発展させるか?

レオン:以前は、王侯貴族へジュエリーを提供していた。ナポレオンやジョゼフィーヌ皇后などは当時のファッションアイコンで大きな影響力があった。昔はディナーに行く際にティアラを着用していたが、今は、リングやネックレスなどに形を変えている。過去にとらわれるのではなく、その時代のライフスタイルに合わせて進化していくのが重要。歴史がありながらも、今日的であることが大切だ。

ブランド認知がアップし“ビー マイ ラブ”が絶好調

WWD:売れ筋のジュエリーと中心価格帯は?

レオン:今まで“ジョゼフィーヌ”や“リアン”の人気が高かったが、ここ最近は“ビー マイ ラブ”がリングを中心に好調だ。かわいらしさとクールな面、両方あるし、ユニセックスに着用でき、人気が高まっている。売れ筋価格帯は、25万〜68万円程度。コミュニケーション強化を行ってきたし、パリ五輪のメダルを手掛けるというニュースの影響もあり、知名度がアップして新顧客獲得につながっている。日本では、今年の第1四半期の売上高は前年比51%増だった。訪日客の購入もあるが、そのほとんどが日本人客によるものだ。

WWD:強化するカテゴリーや市場、施策は?

レオン:ハイジュエリーを強化していく。ドラマチックで、現代的なハイジュエリーのイベントを開催するつもりだ。「ショーメ」は自然を着想源に、その時代にあったベストの技術を駆使して生き生きとした繊細な作品を作ってきた。それを時系列的に見てもらえるような展示もしたい。好調の“ビー マイ ラブ”も強化する。モダンでユニセックスなデザインなので、大きな可能性を持っている。日本で人気の“ジョゼフィーヌ”“リアン”も引き続き注力していく。市場に関しては、中東と東南アジアを強化する。インドやタイ、スリランカは宝石の採掘が行われており、伝統的なハイジュエリーが根付いている。最近では、ヨーロッパのスタイルのジュエリーが求められ始めた。昨年ベトナム、マレーシアに、今年タイに出店した。インドやインドネシアへの出店も視野に入れている。中東の若い層には、“ビー マイ ラブ”と“リアン”が大人気で、日常的にジュエリーを楽しんでいる。中東では、サウジアラビアとUAE首長国連邦に各3店舗、クエートに2店舗、カタールに1店舗を運営している。

WWD:今後の世界戦略は?現在、何カ国で販売しているか?主要市場は?

レオン:もっと多様性のある顧客層を取り込みたい。「ショーメ」を知らない人や男性にもブランドを知ってもらいたい。また、「ショーメ」=ブライダルというイメージを崩して、記念日、ご褒美、ギフトなどさまざまなオケージョンで購入してもらいたい。ヨーロッパ、中東、アジア中心に19カ国に直営店、コーナーも含めると今年、店舗数は92店舗になる予定だ。主要市場は、中国、フランス、中東だ。

WWD:日本における戦略は?

レオン:日本は最も伸長率が高い市場の一つ。アジアでは最も歴史のある市場で、強い顧客ベースがある。日本人の消費者は成熟していて職人技に価値があることを良くわかっている。ストーリーを伝えながら、日本人が求める洗練された上品なスタイルを届けていきたい。日本市場には積極的に投資していく。まずは、大阪・心斎橋店の改装を予定しており、パリの雰囲気と関西のテイストをどのようにミックスするかが課題だ。その次には銀座本店を改装する。パリ・ヴァンドーム広場を銀座に持ち込む意気込みで行うつもりだ。

WWD:今年はパリ五輪のメダル制作などで注目が集まるが、ブランドとしてどのような取り組みを行うか?

レオン:常に動きのあるブランドにするため、コミュニケーションの方法を変えるつもりだ。もっと、モダンな現代にマッチしたものにしたい。今年後半には、新しいキャンペーンを展開する。

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