ビューティ

「クリニーク」創業家ドクターに聞く、シンプルスキンケアの哲学と次の研究分野

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)傘下のスキンケアブランド「クリニーク(CLINIQUE)」は、1967年に米「ヴォーグ(VOGUE)」の対談で編集者のキャロル・フィリップス(Carol Phillips)が著名な皮膚科医だったノーマン・オラントラック(Norman Orentreich)博士に「美しい肌はつくりだすことができるか?」と問いかけ、その答えが「イエス」だったことをきっかけに翌年2人は共同で「クリニーク」を創業した。当時、皮膚科医が行う問診をヒントに独自の肌カウンセリングを開発。肌本来の健やかさを引き出すシンプルケアを提唱した。

現在も皮膚科学に基づくスキンケアと徹底したアレルギーテスト、100%無香料のポリシーを貫いている。今年1月には、フェイスラインの肌の緩みにアプローチするエイジングケアクリーム“スマート リペア アップ クリーム”(50mL、1万3200円)を発売した。「クリニーク」が初めてエイジングケア商品を発売したのは77年まで遡る。40年以上にわたり肌の老化について皮膚科学、皮膚生理学観点から研究を重ね、現在は11人の皮膚科医、63人の調合化学者、8人の臨床医、10人の科学者の専門家チームが低刺激で誰でも安心して使えるエイジングケア商品を提案している。共同創業者のノーマン・オラントラック博士の息子であり「クリニーク」顧問皮膚科医のデビット・オラントラック(David Orentreich)博士とジャネット・パルド(Janet Pardo)「クリニーク」製品開発 シニア ヴァイス プレジデントに、ブランド哲学や注力する研究分野について聞いた。

ブランドの心臓は
“3ステップスキンケア”

WWD:「クリニーク」は「美しい肌は作りだすことができる」とうたっている。そのスキンケア哲学は?

ジャネット・パルド「クリニーク」製品開発 シニア ヴァイス プレジデント(以下、パルド):「クリニーク」が誕生する以前から、オラントラック博士は皮膚科を受診する患者に対して3ステップのスキンケアを推奨していた歴史がある。シンプルな3ステップスキンケアがブランドの心臓であり魂だ。ステップ1でソープを使って汗や皮脂の汚れをきれいに落とし、ステップ2で角質をケアするふき取り化粧水をコットンにたっぷり含ませ拭き取り洗顔では落とし切れない古い角質を取り除く。最後のステップ3で肌に必要な潤いを乳液が補う。「クリニーク」では10種類以上のソープ、6種類のローション、2種類の乳液からスキンタイプに合ったものを選ぶことができる。皮膚を健全な状態にして、その上にスキンケア化粧品を付けることでその機能をより効果的に発揮させることができる。

デビット・オラントラック博士(以下、オラントラック):例えば、皮脂や古い角質などの汚れを洗い流さず、スキンケアもしていない状態で日焼け止めを塗ってもそれは機能しない。肌に不要なものを取り除いて潤いを与えた肌の上に塗るからこそ日焼け止めも機能を発揮する。皮膚科医であった父が3ステップスキンケアを推奨するようになったのは、患者の肌を観察して肌のトラブルがなぜ起こるかを理解したためだ。皮膚は実はとても活発で汗や皮脂を出したりするわけだが、表皮で何が起こり、ニキビやくすみができるのか。これらの問題にアプローチする成分としてサリチル酸が皮膚科では治療に使われていた。サリチル酸は炎症を防ぎ、微生物の繁殖を防ぐのにも有効で、アレルギーの原因にもならず、単純な構造なので副作用もない。

パルド:コットン1枚を使って肌の上を覆っている“障害物”を取り除く簡単なステップだけで、どんなに効果があるかを感じることができる。ベーシックスキンケア商品は長い歴史があるが既存のお客さまだけでなく新しいお客さまも魅了し続けている。現代では大気汚染などの懸念もあり、朝晩拭き取りローションを使うことは非常に重要になっている。1度使うと手放せなくなる人が多い。

ニキビや色素沈着
日焼けケアの商品群も充実

WWD:「クリニーク」の愛用者の属性についてどのように分析している?

パルド:利用者調査や他のプレステージブランドやマスブランドとの比較はもちろん行っているが、「クリニーク」はあらゆる年齢層から支持があることが分かっている。われわれは全ての年齢層に対して、ニキビや色素沈着、日焼けなどさまざまな肌悩みに対して解決策をもたらす商品群を抱えている。使ってみて違いを感じた結果、母から子へ、あるいは友人間でそれが共有され、「クリニーク」の肌へのアプローチがミレニアル世代やそのもっと上の世代などあらゆる層から信頼を得ている。

WWD:消費者ニーズの変化は?

パルド:ブランドの長い歴史の中で、ニキビケアの分野から新しいカテゴリーを作ったり、日焼け後のケアを充実させたり、色素沈着の対応する商品群もブランド誕生時にはなかったものだ。妊娠をコントロールするピルを使うようになって色素沈着を起こす人が出てきたという経緯がある。シワに対するニーズも増えている。それにはレチノイド(レチノールをはじめとするビタミンAを指す総称)が有効で、レチノイドは皮膚病に対して医薬品として効能がある物質だが、それをより安全に使うための研究開発も行った。最近では、レーザー照射と複合成分の塗布を比較するような臨床研究の結果も発表している。このようにニーズに対応する形で商品カテゴリーを拡充してきた。

慢性的なアレルギーの研究に注力

WWD:現在、注力している研究分野は?

オラントラック:「クリニーク」は安全性を最も大事にするブランドだ。アレルギーに対するサイエンスを進展させることに常に関心を持ち続けている。アレルギー反応には、ダメージを起こす何かがその裏にあるということだ。体には免疫反応という大事なシステムがあって、有害な作用を起こそうとするバクテリアに対抗するために免疫機能である炎症が起きる。その炎症を抑えることは恩恵もあるけれど皮膚組織に対して何らかのダメージを与えることにもなる。今、われわれが考えているのは、長く続く慢性的なアレルギーと皮膚の老化には関係があるのではないかということだ。老化と炎症という2つの現象に共通性があるのではという仮定から何か知見を得て、スキンケアに使えることがあるのではいかという研究を行っている。アレルギーを持つ人は年々増えており、さらにアレルギーを慢性的に持つ人はそうではない人と比べて老化が早く進んでいる。

パルド:「クリニーク」は55年間にわたりアレルギーテストを行ってきた。そんなブランドはほかにそうあるものではないので、この分野はわれわれがやらなくてはいけないと考えている。「クリニーク」は安全性と最も大切にしているが、同時に効果との両立にも力を入れている。鏡を見て効果を実感できるけど、肌に優しく炎症が起きていない。これを追求することでお客さまの期待に応えていきたい。

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