ビジネス

ケリング、23年は減収減益 「グッチ」「サンローラン」「ボッテガ・ヴェネタ」が軒並み不調

ケリング(KERING)の2023年12月通期決算は、売上高が前期比3.9%減の195億6600万ユーロ(約3兆1305億円)、営業利益は同13.9%減の46億4300万ユーロ(約7428億円)、純利益は同17.5%減の29億8300万ユーロ(約4772億円)の減収減益だった。

地域別の売上高は、観光客の鈍化が響いた西欧が同2.9%減の54億500万ユーロ(約8648億円)、百貨店を中心に国内需要が低下した北米は同18.9%減の45億ユーロ(約7200億円)だった。一方、売り上げの35%を占めるアジア太平洋地域(日本を除く)は中国市場が回復基調にあることを受けて同4.3%増の68億4800万ユーロ(約1兆956億円)、観光客の増加と円安が寄与した日本は同12.5%増(現地通貨ベースでは24%増)の14億ユーロ(約2240億円)だった。

ブランド別での売上高は、売り上げの半分程度を占める主力の「グッチ(GUCCI)」が同5.9%減の98億7300万ユーロ(約1兆5796億円)だった。北米市場の冷え込み、地政学上の先行き不透明感、全体的なラグジュアリー需要の低下により苦戦した。なお、23年9月にデビューショーを披露したサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)新クリエイティブ・ディレクターによるコレクションは、24年2月後半から店頭に並ぶ予定のため、今回の売り上げには含まれていない。

ケリングのオペレーションと財務を担当するジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)副最高経営責任者(CEO)は、「24年に『グッチ』の業績が急激に成長するとは考えていないが、デ・サルノ=クリエイティブ・ディレクターによるコレクションへの反応がいいので、下半期には売り上げが回復していくのではないか」と述べた。

また、23年9月にマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)=グッチ前社長兼CEOが退任した後、ケリングのジャン・フランソワ・パリュ(Jean-Francois Palus)=マネージング・ディレクターが暫定的に同職を務めているが、ブランドの方向性を固める意味もあり、当面は同氏が続投するという。

フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEOは、「ジャン・フランソワは就任から6カ月も経たないうちに『グッチ』の現状を分析し、今後数年のロードマップを策定するなど大きな成果を上げてくれた。現在、最優先すべきはブランドを率いる強力なエグゼクティブチームの構築だが、彼はその面でも優れたリーダーシップを発揮した」と評価した。

ピノー会長兼CEOはまた、23年を「試練の年だった」とし、主力の「グッチ(GUCCI)」の立て直しに注力してケリングの業績向上に努めると説明。しかし、23年度も増収増益だった競合のLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)にさらに水をあけられた格好だ。

「サンローラン」と「ボッテガ・ヴェネタ」も減収

ほかの主なブランドとして、北米と西欧での売り上げ減が重しとなった「サンローラン(SAINT LAURENT)」は同3.7%減の31億7900万ユーロ(約5086億円)だった。「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は、アジア太平洋地域で回復の兆しが見えるものの、マクロ経済の悪化やその他の要因によって同5.5%減の16億4500万ユーロ(約2632億円)だった。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が属するその他のメゾン部門は、卸の不調により同9.3%減の35億1400万ユーロ(約5622億円)だった。

そうした中、ケリング アイウエア(KERING EYEWEAR)およびコーポレート部門は、同37.7%増の15億6800万ユーロ(約2508億円)だったが、これには22年10月に買収が完了したサングラスブランド「マウイジム(MAUI JIM)」が含まれており、既存店・現地通貨ベースでは同10%増だった。アジア太平洋地域を筆頭に、全ての主要市場で好調だったことが寄与した。

超富裕層を引き付ける方策とは?

ケリングは今年1月、ニューヨーク5番街のビルを9億6300万ドル(約1434億円)で購入した。ケリング傘下のブランドで5番街に店舗があるのは、今回購入したビルと通りを挟んで隣に立つトランプ・タワーに出店している「グッチ」のみのため、将来的には同ビルにいずれかのブランドがオープンすることが予想される。ケリングは最近、ほかにもパリのモンターニュ通りおよびカスティリオーネ通りにある不動産を購入。また、傘下である「ブシュロン(BOUCHERON)」のパリ旗艦店がある歴史的な邸宅と、東京・表参道の物件を所有している。

ピノー会長兼CEOは、経済環境が悪化する中でも、その他のメゾン部門に属するジュエリーメゾンが総じて好調だったこと、特に「ブシュロン」が2ケタ成長だったことを挙げ、「当社の傘下ブランドが得意としてきた“クリエイティブ・ラグジュアリー”と比べ、“タイムレス・ラグジュアリー”の力学(強さ)が明らかになった」と指摘。超富裕層を引き付けるには、よりエクスクルーシブな商品を、さらにプレステージな環境で提供することが必要だと述べ、短期的にコストがかかっても設備投資は必要だと説明した。

一方で、同氏はエントリープライスの商品をそろえる重要性についても言及。「ボッテガ・ヴェネタ」では24年に、「バレンシアガ」と「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」では25年に、ハイエンドな香水をローンチする計画を明らかにした。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ミラノコレ総括 「プラダ」のミックス&マッチにトレンドの兆し

「WWDJAPAN」10月7日号は、2025年春夏ミラノ・ファッション・ウイークを総括します。今季はデザイナーらが考える「生き方」が表出したシーズンでした。個々が抱える生きづらさを出発点に、批判の目を持って疑問を呈したり、ポジティブに現実を受け止め軽やかに生きるための術を提案したりといった表現が目立ちました。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。