ビューティ
特集 CEO2024 ビューティ編

【シロ 福永敬弘社長】地域に利益を還元しながら、社会をより良くする

PROFILE: 福永敬弘/シロ社長

福永敬弘/シロ社長
PROFILE: (ふくなが・たかひろ)1973年広島生まれ。大学卒業後、リクルートに入社。雑誌編集長やメディアプロデュース責任者などを経て、2014年にシロに入社。経営全般の戦略立案や、新規・海外事業の実行を担当。16年、専務取締役に就任。21年、社長に就任した PHOTO : TAMEKI OSHIRO

シロは2023年4月、創業の地である北海道砂川市にモノ作りと環境、観光をテーマにした付帯施設「みんなの工場」をオープン。同市の活性化を目的に、砂川市民と子どもたちを主役に進めてきた町づくり“みんなのすながわプロジェクト”にとって、シンボリックな存在が完成した。「みんなの工場」は全面ガラス張りで、同社が大切にする透明性を発信。今井浩恵会長は社会課題の解決と経済性の両立に挑む起業家としてアワードを受賞するなど、再び注目度が高まっている。福永敬弘社長に23年を振り返ってもらった。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

創業地の北海道・砂川で
市民と進める町づくり

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は、念願の体験型複合施設「みんなのすながわプロジェクト」が形になった。

福永敬弘シロ社長(以下、福永):形になり、人流が生まれ、砂川市民のみなさんや行政から一定の理解を得られるようになった。とはいえ4月末のオープン以来、施設への来場者数は23万人。年間150万人の計画にはほど遠い。コンテンツの拡張など、やるべきことは多い。

WWD:当初から、「形になれば、理解していただけることがある」の一方、「形になって、新たに見える課題もある」と言っていた。

福永:市民の皆さんの反応は、間違いなくポジティブになった。いくら砂川市全体の活性化のためとは言え、オープン前の民間企業による施設は皆さんにとって「得体のしれないもの」。だがオープンして人流が生まれ、「みんなの工場」だけでなく、近隣のトンカツ屋まで含め、点ではなく線で潤ってきた。すると違和感や不安は払拭されていく。

WWD:一方の課題は?

福永:一番は交通インフラだ。駅から歩ける距離ではないのでシャトルバスを運行しているが、1時間に1本では足りない。レンタカーなどでの来場が増えれば、駐車場の拡充も必要だろう。砂川市だけではなく、鉄道会社との協議が必要になる。「みんなの工場」の雇用も課題だ。今は「シロ(SHIRO)」のブランド力で、従業員には砂川市に移住してもらっている。新規採用と異動をあわせて40人強、新卒も6人、砂川市で働き始めてくれた。われわれの「ふるさと納税」による税収アップで、砂川市の子どもの医療費が来年、高校生まで無料になるのは移住の一助になった。地域とブランドで町を共創する関係性が生まれつつある。今までの砂川市は、「旭川に行くとき、通過する町」。行政とは、こんな現状に歯止めをかけたいと話している。タッグを組んで、遊べて、滞在できる町にしたい。来年以降は、市内の砂川パークホテルの改装に着手する。年間6000万円の赤字ホテルに20億円を投資して、砂川市のコミュニティスペースに変える。町が変われば、付近の住民も変わるだろうし、新しい発想を持つ移住者が増える。周囲の飲食施設も変われば、砂川市に滞在する時間が楽しくなり、地元の充実は「みんなの工場」の雇用に寄与する。地元の牛乳を使ったソフトクリームなどの小さなソフトから、ホテルを筆頭とする大規模なハードまで。利益を地域に還元しながら、「シロ」の故郷から世の中、社会をより良くするビジネスに挑む。

WWD:訪れているのは、どんな人?

福永:約6万人が道外からだ。売り上げは、周辺人口は最も少ないのに全31店舗の中で「圧倒的1番店」。インバウンド的な特需はなく、ローレル時代からのファンも多い。

WWD:砂川を含め、23年の商況は?

福永:売上高は、前年比13.2%増。客数も同13%増で、年間のお買い上げ客数は300万人を超えた。過去数年は新規:リピートが65:35だったが、今年は逆転。リピーターが過半数を超えた。3年に及んだコロナ禍で接客できなかった状況が改善され、220SKUの中からニーズに合う商品をご案内できるようになったのが大きい。引き続きフレグランスの売り上げが過半数を占めており、むしろシェアは増加しているが、スキンケアやメイクアップも成長している中、フレグランスの勢いが上回っているだけのこと。日本の香水市場に風穴を開けた自負もあるのでネガティブには捉えていない。一方、23年はスキンケアで10、コスメティックで28アイテムを新商品として発売した。今後もプロダクトアウトを続けることで、フレグランスとスキンケア、メイクアップの理想的なバランスを探りたい。

WWD:23年は、「ふるさと納税」にも積極的だった。

福永:昨年は8億円の寄付額を集めた。砂川市の他、ラワンぶきを調達している同じ北海道の足寄(あしょろ)町、酒かすを頂戴している北海道夕張郡栗山町の3市町で、産地の素材を原材料に使っている商品を「ふるさと納税」の返礼品に選んでいただいている。砂川市の子どもの医療費と給食費が無料になるのは、われわれの「ふるさと納税」の返礼品による税収アップによるもの。「ふるさと納税」は大都市に集まりがちなお金を地方にまわし、行政の施策にまで反映できる可能性を感じている。

WWD:新たな販路では、アジアでの拡販にも意欲的だ。

福永:現在、海外売り上げのシェアは全体の2%弱。9月に実店舗を立ち上げた台湾、ようやく商標権が決着して越境ECがスタートした中国は、年間2億円前後の売り上げを見込んでいる。海外においては、さまざまな国々からオファーをいただいている。薬事などにもスピーディーに対応できるのは、工場を持つ私たちの強み。24年は、韓国やタイなどで本格的なビジネスが始まるだろう。

会社概要

シロ
SHIRO

自社内に製品の開発から販売まで全ての機能を持ち、創業当初からエシカルな信念に基づくモノづくりを続けている。国内外で見つけた素材の力を最大限に引き出すスキンケア、メイク、フレグランスを提案。日本全国に展開するほか、ロンドンや台湾に実店舗を構え、米国や中国ではEC販売を行う。製品に使う素材同様、厳選した食のセレクト「シロ ライフ」、素材のおいしさを伝える「シロ カフェ」、美しさを体感できるサロン「シロ ビューティー」などの業態も手掛けている。2021年6月から「みんなのすながわプロジェクト」を推進。23年4月には新工場と付帯施設を含む「みんなの工場」をオープン。今春、北海道の長沼町に一棟貸しの宿泊施設「MAISON SHIRO」の開業を目指す

問い合わせ先
シロ カスタマーサポート
info@shiro-shiro.jp

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