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特集 CEO2024 ファッション編

【ベイクルーズ 杉村茂CEO】売り上げ目標達成に向けターゲットとマーケットを拡大する

PROFILE: 杉村茂/ベイクルーズ取締役CEO

杉村茂/ベイクルーズ取締役CEO
PROFILE: (すぎむら・しげる) 1962年8月22日生まれ。神奈川県出身。アパレルメーカーを経て84年にベイクルーズに入社。2003年、同社初の子会社ジョイントワークスの初代社長を務め、14年9月1日から現職。趣味はスポーツ観戦とスニーカー収集 PHOTO:YOW TAKAHASHI

ミドル層からの支持を基盤に成長してきたベイクルーズ。ここからさらにマーケットを広げファンの絶対数を増やしていくことが成長のカギになる。2024年は売上高前期比16%増の数字を掲げてビジネス規模の拡大を目指す。2月の虎ノ門ヒルズ ステーションタワーへの新たな大型店舗の出店は大きな挑戦だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

成長のカギは
絶対的なファンの増加

WWDJAPAN(以下、WWD):今年2月には虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに大型複合店舗のオープンを控える。

杉村茂取締役CEO(以下、杉村):ビジネス街である虎ノ門での大型店は当社にとってもチャレンジであり、最初の2〜3年は苦労する前提だ。目指すは全盛期のパリのコレットやミラノのコルソ・コモのように世界の業界人の目的地になる店。もちろん日本のお客さんにも買ってもらいたいが、世界の業界人が日本に来たときは必ず見にきて、感動してもらえる場所にしたい。今まで当社にいなかった層にお客さんになってもらうきっかけにもなる。アパレル以外にも、飲食やアート業態も出店する。服以外にも興味があるいろんな人が集まってほしい。

WWD:2023年9月に始まった45期の注力領域は?

杉村:この2年間、安売りしてお客さんをがっかりさせるのはやめましょう、結果として利益を出す構造を作りましょう、とスタッフに働きかけてきた部分は浸透した手応えがある。だから今度は規模を拡大するために、あえて売上高にこだわる。この2年間で培ってきた利益構造を前提に、売上高は前期比16%増を目指す。当社にとっては、かなりハードルの高い数字だ。ターゲットとマーケットを拡大して絶対的なファンの数を増やしていかないことには達成できない。店長たちには、今までの使い古した引き出しばかりではなくて、新しい引き出しをもっともっと増やしてほしいし、結果が出ればきちんと還元していく方針だと伝えている。

WWD:現場の工夫に加えて、経営側からはどんなサポートをしていくのか?

杉村:セールの抑制は浸透してきたものの、モノ作りの部分で在庫を残さない仕組み作りが必要だ。たとえば、無理に製品を作らずに生地や付属の在庫は残していいと伝えている。そのぶん、発注するタイミングや状況を慎重に見極めたり、別のブランドと連携して活用したりしてもらう。パンデミックや世界情勢など予想できない外的要因にも対応できる考え方が問われる時代になった。

WWD:市場がモノ消費からコト消費にながれている中で、ファッション市場のポテンシャルをどう見ている?

杉村:服を買う人たちみんながファッションを好きで買っているわけではない。そういう人たちにもっと服の楽しさやこだわりを伝えていこうと思えば、まだまだ可能性はある。当社は真ん中(ミドルマーケット)に偏りがちで、地方のショッピングセンター(SC)にはほとんど出ていない。そういうところに対しても、ベイクルーズなりの解釈でマーケットを広げることはできる。

WWD:24年に仕掛けていくことは?

杉村:手薄だったマスボリュームに向けては、伊藤忠商事がライセンスを持つ「アウトドアプロダクツ(OUTDOOR PRODUCTS)」の国内アパレルおよびブランドストア運営に関するパートナーシップ契約を締結した。春には東京・中目黒に路面店を出店予定で、そこを皮切りに駅ビルや郊外の大型SCに積極的に出店していく。もう一つは、アッパーマーケットへの挑戦だ。パリコレを経験している日本人デザイナーと組んで新ブランドを立ち上げる。海外でショーや展示会を開くことも見据えている。

WWD:23年はどんな1年だった?

杉村:44期(23年8月期)は、増収増益で過去最高の利益が取れた。この4年でECの売上高は100億円ほど増えた。とはいえ高い予算を掲げているのでそこには若干届かなかった。来客数も何も手を打たなければ自然には戻ってこない。いろいろ変えていく必要を感じている。店舗の人材獲得も深刻な課題だ。

WWD:業界全体で人材獲得が課題に挙がっているなかで、ベイクルーズが23年久しぶりにリアルで開催した入社式では、ファッション好きな若手が集まり熱気を感じた。

杉村:人材不足の部分では、店で一人前に仕事ができる人が少ないということ。バランスの取れたチーム体制や新人教育は引き続き課題だ。24年は新卒を23年の倍以上採用した。継続して採用を行っていると優等生ばかりが集まってしまう。学歴に関係なく多様な人材を入れるように意識している。人材が枯渇するとその業界はどんどん廃れてしまう。去年は役員以外の社員全員の給料を、月額2万円、年間で25万円程度、総額8億円賃上げした。プライドを持って仕事をしろと言っても、社員の生活水準をきちんと上げていかないと口先だけになってしまう。ある社員はランチに使える予算が限られていると言っていた。本社の前に出ているキッチンカーのランチも厳しいと。地方から1人で出てきて、自分で家賃を出して生活していたら、そうなるのはよくわかる。自分自身もそういう時代があった。でも月2万円給料が上がったら、お昼に食べたいものを食べられるくらいにはなる。すごく大事なことだ。働きがいはもちろんだが、一人一人の生活水準が上がるようなサポートは会社として必要だと思っている。

会社概要

ベイクルーズ
BAYCREW'S

1977年設立。アパレル、家具、飲食、フィットネス事業を展開。2016年に売上高1000億円を突破。17年に本社オフィスを渋谷キャストに移転。21年にベイクルーズとファッション事業のジョイントワークス、フレームワークス、JS.ワークス、ルドーム、ラクラス、家具事業のアクメ、飲食事業のフレーバーワークスを統合。他にラデュレジャポン、ウィルワークス、台湾ベイクルーズ、ル・プチメック、Foodies USA. Incを傘下に持つ。23年8月期の連結売上高は1389億円、期末店舗数は409店舗

問い合わせ先
ベイクルーズ
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