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特集 CEO2024 ビューティ編

【ポーラ・オルビスHD 横手喜一社長】組織の壁をなくし主体的な挑戦や変革を

PROFILE: 横手喜一/ポーラ・オルビス ホールディングス社長

横手喜一/ポーラ・オルビス ホールディングス社長
PROFILE: (よこて・よしかず)1967年東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1990年4月ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。2006年フューチャーラボ社長や11年宝麗(中国)美容(ポーラ瀋陽)董事長兼総経理を経て、15年からポーラ執行役員商品企画部長、16年1月にポーラ社長に就任。20年1月ポーラ・オルビスホールディングス取締役グループ海外展開担当などを経て、23年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

鈴木鄕史会長の意思を引き継ぎ社長就任1年が経過した横手喜一社長は、組織のリゾーム化を推進することを軸に舵取りをはじめ、グループ会社との連携を強めてきた。国内のみならず海外事業でも同様で、これまでの縦割りから水平の連携が取れる組織に変革。それら取り組みが長期経営計画「VISION 2029」のステージ1の最終年度であった23年の好結果に結びついた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

トップダウンを飛び越えていく風土へ

WWDJAPAN(以下、WWD):23年の取り組みと成果、組織のリゾーム化の進捗は?

横手喜一社長(以下、横手):グループ全体を見る立場として、組織を一度バラバラに考えた後に融合するという取り組みを進めた。コロナ禍で人とのつながりや理解し合うことが希薄になったと実感する。われわれのビジネスはお客さまの気持ちを動かすことがベースになるため、人と人が向き合った時に生み出されるものをよみがえらせるのが狙いだ。

WWD:組織の壁を取り払い、つながり合える人間関係を再構築した。

横手:トップダウンではなくそれを飛び越えていけるような風土を浸透させたい。グループ全従業員約4100人、一人一人が持つ個性や強み、思いを存分に発揮し、そこから生まれる主体的な挑戦や変革がグループやブランドの未来を切り開く。個のエネルギーこそが組織を進化させるだろう。それは従業員だけでなく役員も同様で、昨年からグループ主要会社役員によるリーダーシップチームを組成した。異なる立場の相互理解やグループ共通課題の認識をあわせつつ、それぞれが持つ個の力を結集してグループ共通課題の変革や成長戦略を作る事を目的としている。そのためには、あえて幼少期からの自己紹介から始め胸襟を開いて議論できる場を作ることで、一人一人の個性と価値観が理解でき、考え方や発言に共感も生まれてきた。その上で、長期経営計画である「VISION2029」の達成に向け、バックキャスト志向で新中期計画策定にあたった。そのような1年だったと振り返っている。

WWD:現在のブランドポートフォリオで手薄に感じていることは?

横手:「VISION2029」の主戦略の一つに、新事業領域拡張がある。化粧品の枠組みとは異なる別の分野にビジネスチャンスを生み出すことを重視する。化粧品はお客さまを美しく、健やかに人生を豊かにする手段の一つであるが、それだけが全てではない。そのためには肌研究を長年続けてきた研究所発の新しい技術こそが人の生活スタイルを変容できるのではないか。研究領域もただ単に機能性を重視する従来の研究だけでなく、肌研究の知見を活かしたウェルビーイング領域や社会課題解決も含めた研究をテーマにしている。

WWD:若手社員の活躍も目覚ましい。

横手:この3年で若手社員を中心に約300件の新規アイデア提案があった。昨年は子ども向けブランド「スタスタ」や香水のサブスク「エラム(ERAM)」、オンラインのファスティングプログラム「リモファス」など事業化に進んでいるものもある。約300件の中から誕生したものに、研究所の新しい技術などを反映できたら面白い科学反応が生まれるだろう。

WWD:新価値を生み出すために人材の多様性を重視する。

横手:環境を戦略的に用意しないと熱意やスピード感をもった事業創出が実現しにくい。そのためにも、今後はグループ全体での人材採用の在り方を見直し、多様な人材を登用・育成していくための枠組みを作っていく。ブランドの垣根を越えた人材配置を積極的に行うことで、グループの持つ多様なブランドやカルチャーが学べ、多彩な経験値を得ることで、個性豊かな人材育成につながるだろう。

WWD:24年に注力すべきことは?

横手:まずは海外事業。成長のカギは重点市場である中国に変わりない。市場変化をダイレクトに捉える現地リーダーシップのもと、マルチブランドの強みを生かし、グループとして最適な戦略を市場や顧客の変化に対応しながら迅速に遂行し、業績最大化を実現できる組織体制へ移行を進める。その一環として1月に、中国に地域統括会社であるリージョンカンパニーを設立した。また、これまでポーラとオルビスの中国の現地法人だったポーラ上海とオルビス北京をホールディングスの完全子会社化とした。今後はグループが中国市場全体を捉えて、どのブランドで勝負するのかを考えるべき。現地に権限を渡しビジネスを組み立て資金配分をどうするのかも任せたい。昨年、その土壌を整えてきたので今年はそれを実行に移す時期だ。

 

一方で、海外に投資するには国内の事業基盤を盤石なものにする必要がある。「オルビス(ORBIS)」は商品力をフックに顧客構造がよりよくなってきたため、ブランドの魅力を再発信する。「ポーラ(POLA)」はSNSを含めたデジタル施策を強め、エステやカウンセリングを提案するサロン型ショップへ誘導し、より深い「ポーラ」のファンになってもらい継続率やLTV(顧客生涯価値)が上がるOMO施策を推進する。「スリー(THREE)」は23年11月に精油のみで構成したフレグランス“エッセンシャルセンツ”を発売した。今後は、精油を軸にフレグランスからスキンケアまで一気通貫する売り場を作り強化していく。

会社概要

ポーラ・オルビス ホールディングス
POLA ORBIS HOLDINGS

基幹ブランドを展開するポーラは1929年創業。女性が活躍する訪問販売を中心に事業を拡大し、89年に百貨店市場に進出する。現在、訪問販売はサロンを拠点とするビジネスに形を変えている。手掛けるブランドは「ポーラ」「オルビス」「ディセンシア(DECENCIA)」「スリー」「ファイブイズムバイスリー(FIVEISM × THREE)」「ジュリーク」「フジミ(FUJIMI)」など

問い合わせ先
ポーラ・オルビス ホールディングス
03-3563-5517

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