ファッション

ビヨンセやリアーナが出資するフランス発の「デストレー」 創業者がビジョンを語る

フランス発の「デストレー(DESTREE)」は、ジェラルディーヌ・ギヨ(Geraldine Guyot)とラティシア・ロンブローゾ(Laetitia Lumbroso)が2016年に立ち上げたブランドだ。商品デザインを手掛けるギヨは、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者の次男アレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)の妻としても知られる。

フランスの伝統的な装飾技術パスマントリーを用いた“ギュンターバッグ”(11万9900円)や、奈良美智の作品に着想を得たジャケット(7万5900円)とパンツ(6万4900円)のセットアップなど、アートに造詣の深いギヨが生み出す商品は、これまでにないデザインを求める女性たちから支持を集める。日本では、グルッポタナカが国内市場における独占販売権を取得し、卸売やポップアップ、公式ECサイトで販売する。

22年には、シリーズAラウンドにおいてベンチャーキャピタル「セコイア・キャピタル (Sequoia Capital)」および女性の個人投資家を引受先とする資金調達を行なった。投資家には、ビヨンセ(Beyonce)やリアーナ(Rihanna)、ジゼル・ブンチェン(Gisele Bundchen)、ガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)らが名を連ねる。女性経営者として確固たるビジョンを軸に、グローバルにビジネスを広げるギヨに話を聞いた。

WWD:ロンドンの名門セント・マーチン美術大学(CENTRAL SAINT MARTINS)では、美術史を学んだ。アーティストを目指していた?

ジェラルディーヌ・ギヨ=デストレー共同創業者兼チーフ・ブランド・オフィサー(以下、ギヨ):いいえ。昔からアート作品が好きで、ギャラリーや美術館などアーティストを支える仕事に憧れていました。アート批評を学んだ学歴は、ファッションデザイナーとしては珍しいのではないでしょうか。でも、この経験がブランドをユニークなものにしてくれていると思います。

WWD:ブランド立ち上げの動機は?

ギヨ:卒業後フランスに戻り、24歳で共同創業者のラティシア・ロンブローゾと一緒に「デストレー」を立ち上げました。ジュエリーやバッグのカテゴリーはすでに飽和状態で、ビジネス的に苦しんでいるブランドも多く知っていましたから、まずは大好きな帽子を軸にスタートしました。小さい頃から、ファッションは身近な存在で、美しい服で溢れていた母のクローゼットを覗いて、いろんな服を試してみるのが好きでした。思い返せばその頃から、いつか自分のブランドを持ちたいと夢見ていたと思います。

スタートは、フランスのモノづくりにこだわる手頃な価格帯の帽子ブランド

WWD:当時ほかの帽子ブランドには何が欠けていた?

ギヨ:一方に「ザラ(ZARA)」や「トップショップ(TOPSHOP)」のような巨大なブランドがあり、他方で「メゾン・ミッシェル(MAISON MICHEL)」のようなラグジュアリーブランドはありますが、その間のプレイヤーは少ない。私はそこを埋める、高品質で手頃な価格帯のメード・イン・フランスのブランドを立ち上げたいと思いました。帽子のモノづくりは非常に複雑で、真のサヴォアフェールが求められます。情熱を持って作られる長い過程にも感銘を受けました。私たちにとって、地元の経済を支えることもとても大事な視点で、今でもほとんどの商品は、メード・イン・フランスにこだわっています。

WWD:立ち上げ当初から、すでにモノづくりのネットワークを持っていた?

ギヨ:いいえ、全く。グーグルで地元のハットメーカーを検索するところから始めました。片っ端から電話をかけて、「すみません、ハット100個を作りたいのですが………」と頼むんですが、最初は「たった100個?」と笑われました。それでも、「すぐに100万個にしてみせるから」と説得し続けてチャンスを掴むことができました。手頃な価格で実現することも私たちのビジョンでしたから、メーカーと話し合いを重ね、お互いが納得する価格に落とし込むことができました。

WWD:発売当初の反響は?

ギヨ:とてもよく売れました。そこから手応えを感じて、バッグやジュエリー、レディ・トゥ・ウエアにカテゴリーを広げました。今レディ・トゥ・ウエアは特に好調で、ハットの売り上げを超えました。今ではレディ・トゥ・ウエアとハットが私たちのビジネスの2大カテゴリーです。

WWD:デザインの着想源は?

ギヨ:アート作品からヒントを得ることも多いですし、ビンテージ品の場合もあります。どこに旅行しても、現地のビンテージショップは必ずチェックします。服や食器、家具、きっと家にあるものの95%くらいがビンテージ品です。ベッドのシーツでさえも、ビンテージ品なんです(笑)。

新鮮なデザインを求める幅広い女性たちが支持

WWD:憧れている人物は?

ギヨ:父です。父は不動産で起業しました。ジャンルは違いますが、一から会社を立ち上げ、大企業に育て上げた父にはとても影響を受けています。同じ女性起業家としては、トリー・バーチ(Tory Burch)。その両者には、夢を描くことの大切さ、同時にそれを実現するために一生懸命努力し続けることを学びました。まだ「トリー バーチ」には届かないけれど、夢を実現できると思わせてくれる素晴らしいチームがいます。

WWD:現在の顧客層は?

ギヨ:30〜60代まで幅広い年齢層の方に支持されています。彼女たちに共通しているのは、何かこれまでとは違ったデザインを探しているという点。アイコニックな色使いやアシンメトリックで遊び心のあるデザインは、プレス関係者やバイヤーからもユニークだと評価されています。主要マーケットは、米国、フランス、韓国、イギリスがトップ4。9月にはロンドンの百貨店ハロッズでも取り扱いが始まるので、期待しています。特に韓国での伸びは顕著です。大きなマーケティング戦略をするわけでもなく広がっていきましたが、韓国の実業家の李富真が結婚式で、私のバッグを着用してくれたときには、問い合わせが殺到しました。先日友人である、ブラックピンク(BLACKPINK)のロゼ(ROSE)がインスタグラムに上げてくれたので、さらに知名度が上がるはずです。彼女は素晴らしい人物で、ブランドのことも応援してくれています。

WWD:資金調達には、ビヨンセやリアーナらが参加している。

ギヨ:女性の投資家を募ることも、私が自分に課した挑戦の1つでした。女性だけでビジネスを成長させることができると世界に証明したいと思ったから。それを成し遂げた自分たちを誇りに思います。彼女たちには定期的にアドバイスをもらっています。ちょうど先日は、ビヨンセからの依頼で彼女のツアー用にハットを作りましたよ。

WWD:日本では、どのようにブランドを成長させていく?

ギヨ:日本は、世界のトレンドセッターです。流行に敏感で、アヴァンギャルドな商品を好む日本の消費者には、「デストレー」が受け入れられる土壌が十分にあると思っています。まずは卸売に注力しますが、来年をめどに出店もできたらうれしい。

WWD:今後のビジョンは?

ギヨ:今後は世界で出店を加速したい。ちょうど1年前にパリに初めて店舗を出店しましたが、とても好調です。個人的には、大きな夢を描くこと、それに向かって諦めずに努力する素晴らしさを多くの人に伝えていきたいです。

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