ファッション

生地にこだわりオンライン受注生産 ジョイックス初のオリジナルブランド「ルーペ」

 「ポール・スミス(PAUL SMITH)」や「ランバン コレクション(LANVIN COLLECTION)」などラインセンスビジネスを主とするジョイックスコーポレーションが、1971年の創業以来初のオリジナルブランド「ルーペ(LOOPE)」をスタートする。オンライン受注生産型で、1月13日に受け付けを開始する。ブランドコンセプトやターゲット、なぜこのタイミングなのか?などについてキーマン2人に聞いた。

次の50年を見据えた、
新たな“矢”としての挑戦

WWD:2020年に創業50周年も迎えたが、このタイミングで初のオリジナルブランドを立ち上げた経緯について聞きたい。

小西道雄「ルーペ」ブランドマネージャー(以下、小西):ジョイックスのビジネスの核はライセンスビジネスだ。それは偉大な財産だが、マーケットが目まぐるしく変わる中で、新たな“矢”が必要だと常々感じていた。そんな折、社内で新規ビジネスプランを募る機会が設けられ、即手を挙げた。ジョイックスがライセンスビジネスを通じて培ったモノ作りのノウハウ、工場や生地メーカーとのリレーションシップを生かして、今マーケットが求めるものを求められる価格で提供できないか?とスタートした。クイックかつフレキシブルに進めるためにもオリジナルブランドである必要があった。

WWD:デビューシーズンは4アイテムのみの展開だ。そこにも意図がある?

木村献「ルーペ」デザイナー(以下、木村):“「ルーペ」は生地に特化しよう”と決めた。だからアイテム数を絞り、生地にフォーカスしたかった。服は生地からできているが、その上質さを語るケースは、ことカジュアルにおいては少ないのでは?と考えた結果だった。

WWD:生地はオリジナル?

木村:ほぼオリジナルで、全て日本製。いずれも工場や職人との話し合いによって生まれた。

WWD:産地にもこだわる?

木村:“適材適所”という言葉がぴたりと当てはまり、15カ所ほどに依頼している。例えば、スエットはふんわり仕上げた“a”が和歌山産なのに対して、シャリ感のある“z”は愛知産だ。小西の言う通り、生産背景と長年の付き合いがあるから、われわれのニュアンスをくみ取ってくれ、無茶も聞いてくれた(笑)。とても感謝している。

WWD:“a”と“z”は対極を表現している?

木村:特性の異なる2つの素材を選んでいるという意味ではその通りだし、2つあることで互いの魅力を際立たせたいと考えた。

WWD:では、11から55のサイズ表記の意味は?

木村:S、M、Lで表すと、その時点で既成概念の内側に収まってしまう。そこで「ルーペ」では33を中心に、放射線状にサイズ展開した。その際に微妙に比率を変えて、僕なりの最適解を示した。サイズ選びから自分らしく、“遊び”を持ってほしくて、この表現とした。

1つのアイテムを、
2つの異なる生地で提案する意味

WWD:1つのアイテムを、2つの異なる生地で提案するのはなぜ?

木村:生地が変わるだけで着心地はもちろん、スタイリングでも変化を楽しめることを伝えたかった。また、さまざまなライフスタイルの人にアプローチしたかったからだ。

WWD:価格についても聞きたい。

小西:オーバーサイズスエットが税込2万4200円~、イージートラウザーズが1万9800円~、ワイドロングシャツが2万3100円、ロングスリーブTシャツが1万5400円。良い生地で作った服を1人でも多くの人に届けたいとの思いから、従来の発想では考えにくい原価率にしている。これを実現するため、「ルーペ」は店舗を持たず、在庫も持たないことにした。

年内に3回ドロップ、
4月にはジーンズも登場予定

WWD:「ルーペ」をどんな人に、どんなふうに着てほしい?

木村:ペルソナは設定した上で、さまざまな人に着てもらい、“気が付けばクローゼットに「ルーペ」がある”が理想的。モード、古着、ノームコア……、とにかく自由に着てほしい。生地が擦り切れるまで長く共に過ごしてもらえる服を作ったので、あらゆる人のスタイルと共生したいと思う。

WWD:生地を推す「ルーペ」だが、デザインやディテールにも玄人好みのこだわりを随所に取り入れている。ユーザーにそれを届けるためにどうアクションする?

小西:どこを切り取っても恥ずかしくない思いとこだわりを詰め込んでいるが、それをお客さまに押し付けることはしたくない。木村は共生と言ったが、僕が考える「ルーペ」の最重要キーワードは“共感”だ。そのためには、まず認知が必要。SNSやユーチューブ(YouTube)でブランドのスタンスを積極的に発信したいし、ポップアップショップでリアルなタッチポイントも作っていきたい。まずは、1月13日から「二子玉川 蔦屋家電」で催事を行う。

あらゆる人のライフスタイル
と共生できるブランドに

WWD:デビューを前に少し気が早いが、今後の展望について聞きたい。

小西:年内にあと3回ドロップする。アイテム数はそれぞれ初回と同程度で考えていて、4月分ではジーンズも登場する。定番化するアイテムや生地のリピートの有無については検討中。いずれにしても、50年目で初めてオリジナルブランドを立ち上げたのだから、マーケットに迎合するのではなく、われわれが信じるものを全力で作って届けたい。そして、「ルーペ」に共感してもらえたら最高だ。

INFORMATION
「ルーペ」ポップアップショップ

日程:1月13〜16日
場所:二子玉川 蔦屋家電 E-room2
住所:東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズS.C. テラスマーケット

問い合わせ先
ジョイックスコーポレーション
03-5213-2532