ビューティ

“原料オタク”が作る自宅キッチン発のシンプル化粧品 2年で売上高10倍へ

 高校時代に自身の肌悩みがきっかけで化粧品に配合されている成分に興味を抱き、自宅のキッチンで肌に負担の少ない化粧品作りを始めた石田彩ラピスラズリ社長。自身を「原料オタク」というほど配合成分にこだわりを持つ。2015年に誕生したスキンケアブランド「ラピスラズリ(LAPISLAZURI)」は、シンプルステップでありながら摩擦と紫外線から徹底して肌を守り抜くアイテムを展開。実直なモノ作りが口コミで広がり、売上高を2年で10倍にするという目標を掲げ成長を遂げようとしている。

WWDJAPAN(以下、WWD):学生時代から化粧品が好きで自分で作るようになったのか。

石田彩ラピスラズリ社長(以下、石田):高校時代から乾燥肌に悩まされ、化粧品でケアしても肌の調子が整わなくて……。今思えば、ケアの方法が適切ではなかったし生活習慣も乱れていたことも一因だと分かるんですけどね。その当時はどんな化粧品でケアしても全然ダメだったんです。いろいろな製品を試すうちにピリピリするコスメとそうじゃないものの違いは何か?と成分表を見出したんです。スキンケアの大半が水が最初に表示されているのを知り、水を中心に構成されているなら自分でも作れるのではないかって思ったんです。ここから“原料オタク”の道がスタートしました。

WWD:最初に作ったアイテムは化粧水だった。

石田:インターネットで検索すると化粧水は水とグリセリンで作れることが分かり試してみました。「生活の木」に原料がそろっていることも知りました。しかし保湿力を高めようとすると成分が調達しにくかったんです。なのでまずは原料が手に入りやすいリップクリームを手作りすることに。ミツロウを溶かして固めればよいので簡単。もちろん硬さ調節に回数を重ねました。それを使用したら荒れた唇の調整も良くなりました。保湿成分やミントなどを加えて友人にプレゼントしたら好評だったんです。買わせて欲しいとまで言われて。それからは趣味で作るようになりました。

営業職から転身 趣味を仕事に

WWD:その後「ラピスラズリ」を立ち上げることに。

石田:高校を卒業し半年後に結婚し、19歳で出産しました。子育てしながら働きやすい生命保険の営業職を4年ほど続けていましたが、子どもの体調不良などで休まざるを得ないことが度々あり、周りのサポートはあったのですがどこか申し訳なさを感じる部分もあって……。趣味で続けていた化粧品作りを仕事にしようと思うようになりました。24歳の15年3月に「ラピスラズリ」をスタートしたのですが、最初の製品を発売するとき第二子を妊娠中で臨月だったんです。大きなお腹でプレゼンテーションしたのを覚えています。

WWD:事業も一からのスタートだった。

石田:乾燥肌の一番の原因は紫外線なので、最初の製品は日焼け止め“LLサンスクリーン”にしました。OEMメーカーに協力を得て処方も含め自信を持ってオススメできる製品は完成したものの、ウェブサイトを作ることも頭にありませんでした。知り合いからアマゾンで販売できると聞き問い合わせしてなんとか発売できることに。初回で3000個を生産し、初月は100本売れましたが後が全く売れませんでした。初月は友人たちが購入してくれたんですよね。翌月以降は十数本しか売れませんでした。

初回生産分を売り切る

WWD:ブランドの転機は。

石田:初回生産分をクリアするため雑誌社へプレゼント企画に使ってほしいと連絡したり、ギフティングしたり、ブログやツイッターを立ち上げたりしました。楽天のスキンケア担当者にも連絡して委託販売も始めましたね。化粧品の消費期間は3年です。2年で3000個売らないといけないためと必死でした。そんなとき美容化学者でユーチューバーのかずのすけさんがツイッターで日焼け止めを紹介してくれて一気に盛り上がりました。在庫が8本になった時、10本まとめ買いがあったんです。そのときの感動は忘れません。OEMメーカーに追加生産の依頼をしたところ驚かれたのも覚えています。小規模のメーカーは大半が一度の生産で終えることが多いそうなんですよ。

WWD:ブランド誕生から7年が経過するが全ラインアップは6品と多くない。

石田:乾燥肌の最大要因は紫外線と摩擦。こだわっているのはラインアップと成分のシンプルスキンケアです。ラインアップに関しては、一般的には化粧水と美容液、乳液、クリームがスキンケアステップとするとこれらを塗布するたびに摩擦が生じます。多機能にして1本にした方が摩擦が少ないわけです。成分を見ると化粧水や美容液、乳液は水とグリセリン、セラミドが剤形を変えて配合してあります。同じ成分なら1本で済んだ方が肌にも消費者にもよいと思うんです。成分に関しては、天然由来にこだわるということではなく必要と判断したものを採用します。本当に「ラピスラズリ」を使うお客さまの肌に必要な成分か、という観点から一つ一つ自分の肌で試して精査しています。成分が多いと肌に合わない人が増え、肌荒れのリスクも高まります。その分、効く濃度をしっかり配合するのが重要です。原料や処方にこだわるあまり、今では生産を依頼していたOEMメーカーのサティス製薬の執行役員に就き、サティス製薬が運営する銀座美容外科クリニックの運営も担当しています。

WWD:成分以外のこだわりも貫く。

石田:製品は厚さ3cm以下の容器で作ることにも徹しています。郵便ポストに入るサイズなのですが、それなら配送料を抑えることが可能に。また製品の鮮度を保てるように1カ月で使い切れる容量にもしています。サブスクリプションも行っていますが、売り上げの85%が定期購入者によるものです。

WWD:今後のラインアップの拡充やブランドの成長については。

石田:今年5月にリブランディングし、スキンケアはほぼラインアップがそろいました。今後はインナーケアとベースメイクに取り組む予定です。既存製品のアップデートも欠かせません。これまでモノ作りから電話対応、発送、パンフレット作りまで一人で対応してきました。お客さまと密なコミュニケーションが取れるという利点がありますが、一方で限界もあります。近年はカスタマーサービスやPRも外部の力を借りています。今まではモノ作りに没頭するあまりブランドの露出は二の次でした。今後は乾燥肌や乾燥肌の人はなぜシンプルなスキンケアが良いのかなどの啓もう活動も積極的に行っていきます。その一環として7月29日21時〜インスタグラムでライブ配信を行います。今はブランドを大きく成長させる時期。販路の拡大なども視野に入れ、現在の年商2000万円を2年以内に10倍にする目標を掲げています。

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