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アルベール・エルバス氏が残した言葉の数々 写真とともに振り返る愛すべきデザイナー人生

 「ランバン(LANVIN)」のアーティスティック・ディレクターを14年間務めたアルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏は生前、「ファッションとはエンターテインメントであり物語でもある」と語っていた。キャリアを通して同氏が米「WWD」に残した言葉の数々や、ファッション業界での業績を70枚の写真とともに振り返る。

 「ファッションは非常に重要な存在だ。私たちファッションデザイナーにはそれぞれに役割がある。世界に美しさを振りまき、女性の気持ちに寄り添い、勇気付ける義務がある。今日はバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)でトランクショーを開催した。接客をした女性が帰り際に、『これで私は金欠になるけど、すごく幸せ』と言った。ファッションが人に何を与えられるかの全てを表現していると思った。うまくいかない時こそ、良いドレスを買ってみるのはどうかな」(ファッションの意義について/2008年)

 「多くのデザイナーの最大の敵は、企業のCEO(最高経営責任者)だ。CEOもまた、デザイナーをうまく扱えないと言うだろう。しかし私たちは対立の立場にあるのではない。デザイナーはコントロールされるべきではないし、CEOも敵ではない。平和であるべき。この業界はそれぞれの協力で成り立っている。対話こそが、この業界が必要とするものだ」(手を組むことについて/2008年)

 「アメリカに移った時、ジェフリー・ビーン(Geoffrey Beene)のもとで働いた。当時英語がそれほど上手でなかったため、同氏に『そのドレスはとても商業的ですね』と言ってしまった。ビーン氏は顔をしかめ、商業的と言う言葉を使わないように諭した。代わりに、“デザイアブル(魅力的)”という言葉を教えてくれた。これをきっかけに、みんなのデザイアが渦巻く世界に足を踏み入れたのだと確信した」(デザイアについて/2008年)

 「自分のアーカイブを見た時、“デザイア”という言葉が頭に浮かんだ。そこから女性のためのコレクションを作り、ファッションへの欲望、デザインへの渇望を極めると決めた。デザインに重きを置く『ジェフリー ビーン」の出身だったので、私はすぐにデザインに夢中になった。それを女性や現実と結びつけて発展させていった。私の人生は、いかに関連性を高め、必要なものとなれるかが中心を占めている」(「ランバン」の本質について/2012年)

 「私は女性に注意を払い、女性が日々変化しているのを感じ取ってきた。ライフスタイルはますます複雑化して、生きづらくなっている。だからこそファッションを通して生活を楽にする手助けをしようとした。例えば最初のコレクションのワンピースは、多くの人がロマンチックと評価した。しかし、私はロマンチックな要素を見いだしていなかった。楽チンであること、シンプルであることを重視していた。朝から子どもや夫の世話をしながら母親と電話を繋ぎ、仕事の電話もとる。これは10年前のオンラインチャットが普及する前の生活様式の一例だが、現代の女性は今も変わらず忙しい。女性が毎朝悩むことなく、シッパーを上げ下げするだけで良い簡単なアイテムをワードローブに提供したかった」(ワンピースについて/2012年)

 「現代的なものというと、いつもひどく見栄えの悪いものを連想してしまう。私がやりたいのは、現代が美しいということを表現すること。現代性はブラックレザーやたくさんのジッパー、ロックンロール、ヘビーメタルでなくてもいい。私にとっての現代は、美しく感情的で、快適でタイムレスなもの。とてつもなくチュールをふんだんに使ったドレスを着て座る女性が、現代的なのかどうか、私には分からないな」(現代について/2012年)

 「ファッション産業は美しい。世界で最も素晴らしい産業の一つだ。この業界はいつも嘘っぽく表面的で、無知であるように感じられるかもしれない。誰も傷つけたく無いので詳細は伏せるが、ほかの業界のパーティーに参加したこともある。しかし、たくさんの素晴らしい友人や誠実な人、忠実で賢い、勤勉で才能のある人とは間違いなくファッション業界で出会ってきた」(ファッション業界人について/2014年)

 「多分私が初めてプレ・コレクションを発表し始めたと思う。人生の1番の間違いだったが。パリのホテル デ クリヨンに10数名の編集者やリテーラーを招待して、美しい花に囲まれて紅茶を飲んだり、花やファッションについて話したりするだけでも素晴らしいと思った。実際はもっと多くの人が来たいと志願したので、2回目を開催した。参加したいという人の数は増え続けたので、1シーズンとして定着した。そして実際お店にあるほとんどのアイテムはプレ・コレクションに関するものとなった」(プレ・コレクションについて/2014年)

 「直接伝えられたらより良いが、自分の能力を疑うことは減ってきた。あるショーの開催前夜、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)氏に会ったときに『調子はどう?』と聞いたら、彼は『最悪だ』と答えた。これまでの何年もの功績を持ってもそう感じるのかと驚いたが、彼は『これまでがあるからこそだ』と返事した。その返事がいかに聡明で賢く、優しいものであるかに心を掴まれ、それ以来私も使っている」(自信を持つことの難しさについて/2014年)

 「私は常に直感で仕事をしている。たくさん考えて、理屈で仕事をしてもうまくいった試しがない。直感こそが本質だ。マーケティングなどに対して、より一層取り組みを深めているが、女性が白いTシャツを一度購入したからといって次のシーズンも売れるわけではない。新しいシーズンを新しいアイテムで迎えることがデザイナーの全てだ。そうでなければ、存在する意味はないだろう」(直感について/2014年)

 「われわれデザイナーは、夢、直感、そして感情を持ったクチュリエとしてスタートした。そこから女性は何を必要としているか、何が欲しいか、生活をより良く、簡単にするために何ができるか、そうすればもっと美しく魅せることができるかをずっと考えてきた。クリエイティブ・ディレクターに就任すると、デザインもするにはするが、ディレクションをすることになる。私たちは画像作りにもこだわり、アイテムが写真でよく映えることも確認する。そして今、“ラウドネス(音の強弱に加えて、主張の強さや派手さなども指す)”が新しく浸透してきた。ラウドネスはファッションに限らず、新鮮でかっこいいものとして広まっている。私はささやくほうが好きだ。そっちの方がより深く、長く残ると思うから」(自己主張について/2015年)

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