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FBのヘイトスピーチ対策に“弱腰”だとして広告主が次々に降板 リーバイスやパタゴニア、ユニリーバなど

 米フェイスブック(Facebook)がヘイトスピーチや人種差別的な投稿を放置しているとして、広告の出稿を一時的に取りやめる企業が増えている。

 今回の広告ボイコットの背景には、米ミネソタ州ミネアポリスで5月25日に黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて、世界中で抗議運動が行われていることがある。抗議デモのほとんどは平和的に行われているが、一部で略奪行為などがあったことから、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がツイッター(Twitter)に「略奪が始まれば、銃撃も始まる」と投稿。それがフェイスブックのサービスに表示されていることに対して、同社のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)最高経営責任者(CEO)が「トランプ大統領のツイートは、暴力的な発言を容認しないというフェイスブックの規約に違反していない」と表明し、それを削除していないことに端を発している。

 フェイスブックは以前から人種差別的な投稿について厳格に対応していないと批判されていたこともあり、今回は全米黒人地位向上協会/全米有色人種地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored People)や、公民権運動を推進する非営利組織のカラー・オブ・チェンジ(Color of Change以下、COC)などの市民団体が「利益のためにヘイトを許すな(Stop Hate For Profit)」というキャンペーンを立ち上げ、フェイスブックや同社が擁するインスタグラム(Instagram)に広告を出すことを止めるよう企業などに呼びかけた。

FBの言い分や対応

 フェイスブックは事態の収拾を図るため、広告主の企業や代理店からおよそ3000人を招いてのビデオ会議を6月30日に開催した。同社からは、キャロリン・エヴァソン(Carolyn Everson)=グローバル・マーケティング・ソリューション担当バイス・プレジデント、ニール・ポッツ(Neil Potts)=パブリック・ポリシー担当ディレクター、ガイ・ローゼン(Guy Rosen)=インテグリティー担当バイス・プレジデントらが出席したが、特に大きな発表はなく、ヘイトスピーチへの対応も従来通りの対策を続けるという内容だった。

 フェイスブック側の出席者らはビデオ会議の席上で、ヘイトスピーチにもさまざまな種類がある上に、内容が複雑で微妙なニュアンスのものもあるため判断が難しく、万能の解決策はないと説明。例えば、レズビアンに対する蔑称として“ダイク(Dyke)”という言葉があるが、同性愛者の女性たちによる「ダイクス・オン・バイクス(Dykes on Bikes)」というオートバイの同好会があるため、“ダイク”という単語を一律に禁止すればいいというものではないという。

 なおフェイスブックでは、AI(人工知能)がヘイトスピーチだと判定した投稿を人間の目でも判断するために、およそ3万5000人のスタッフを抱えている。これによってヘイトスピーチの90%はユーザーから報告がある前に発見されているというが、1日のアクティブユーザー数が17億にも及ぶことを考えると、3万5000人では手が回らないのではないかと考えざるを得ない。

 関係者の情報によれば、発端となったトランプ大統領のツイートについてAIはヘイトスピーチだと判定したものの、担当者らは「略奪が始まれば、(警察や軍による)銃撃が始まる」という意味ではなく、「略奪が始まれば、(一般市民による)銃撃も起きる」という意味だと解釈し、問題のない発言だと決定したという。しかし多くの人々が指摘したように、これは公民権運動が行われていた1960年代に、フロリダ州マイアミ市の白人の警察署長が黒人の多い地区で取り締まりを行った際に使用したフレーズであり、トランプ大統領はそれを引用したとみられている。フェイスブックの担当者らはこのことを知らずに判断を下したようだが、ツイッター社では「暴力を賛美することを禁止する当社規定に反する」として警告メッセージを付け、ツイートをクリックしないと表示されないようにした。

 7月3日の時点で、コカ・コーラ(COCA-COLA)、ユニリーバ(UNILEVER)、スターバックス(STARBUCKS)、フォード(FORD)などの大企業のほか、リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)、アディダス(ADIDAS)、プーマ(PUMA)、パタゴニア(PATAGONIA)、ルルレモンアスレティカ(LULULEMON ATHLETICA)など、ファッション業界からも多数の企業が「利益のためにヘイトを許すな」キャンペーンに賛同し、280社以上が少なくとも7月一杯はフェイスブックへの出稿を取りやめることを宣言している。

 このムーブメントはこれまでにない広がりを見せているが、それでもフェイスブックが得ている巨額の広告収入のほんの一部に過ぎないため、同社としてはあまり危機感がないのではないかと見る向きも多い。一方で、「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動の影響もあり、人種差別的な投稿を放置することに対する世間の風当たりの強さが以前とは異なっていることから、今回は真剣に取り組まざるを得ないのではという意見もある。

企業側の考えについて

 では、広告主である企業側はどう考えているのだろうか。米マーケティング会社クエスタス(QUESTUS)のジェフ・ローゼンブラム(Jeff Rosenblum)創業者は、「当社の顧客である大手ブランドのほとんどは、少なくとも7月中はフェイスブックやインスタグラムへの広告出稿を差し控えているが、そのことを大々的に発表していない場合もある。いずれにせよ、消費者から反発を受けるリスクを負ってまでフェイスブックに広告を出す理由はないし、出稿先はほかにいくらでもある。とは言え、これはあくまでも一時的な措置で、フェイスブックが早く何らかの解決策を打ち出してほしいと思っているブランドも多いだろう。今後どうなっていくかは、世間のムードにもよるのではないか」と語った。

 COCはまた、フェイスブックのジョエル・カパラン(Joel Kaplan)=グローバル・パブリック・ポリシー担当バイス・プレジデントについて、「ヘイトスピーチの増殖を許している」ことを理由に解雇するよう同社に求めている。同氏はブレット・カバノー(Brett Kavanaugh)米最高裁判事が学生時代に起こしたとされる性的暴行疑惑の公聴会に、同判事(当時は候補者)を支援する友人として出席していたため、社会的にも厳しく批判された。COCはフェイスブックに宛てた公開書簡の中で、「空約束はもうたくさんだ。ジョエル・カパランを雇用し続けているということは、ヘイトスピーチ対策に本気で取り組むつもりはないと表明しているようなものだ」と述べている。

 フェイスブックのザッカーバーグCEOとシェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)最高執行責任者は、COCなど広告出稿のボイコットを呼びかけている市民団体とのミーティングを強く求めていると報道されていたが、米ウェブメディア「ジ・インフォメーション(The Information)」によれば、それが実現しそうだという。なお、COCは以前にもザッカーバーグCEOとミーティングを行っているが、その際は特に成果はなかったとコメントしている。