ニュース

欧米のさまざまな企業が抗議デモに賛同 人権団体などに寄付

 米ミネソタ州ミネアポリスで5月25日に、黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて、世界中で抗議運動が行われている。こうした動きに俳優やアーティストなど多くの著名人が賛同する中、企業トップらも賛同の意を表明している。そのいくつかを以下に紹介する。

・ターゲット(TARGET)
 同社は今回の事件が起きたミネソタ州を拠点とするスーパーマーケットチェーンだ。同社のブライアン・コーネル(Brian Cornell)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「ミネアポリスは痛みの中にある。しかしこの痛みはミネアポリスだけでなく、全米が感じているものだ。2月にはアマド・オーブリー(Ahmaud Arbery)氏が、3月にはブレオナ・テイラー(Breonna Taylor)氏が射殺され、また過去にも数えきれないほど多くの(黒人の)市民が殺されたことを、私たちは覚えている。長年にわたって積もり積もってきた痛みが、ジョージ・フロイド氏の殺害をきっかけに爆発したのだと思う。当社では、従業員が身を寄せ合い、互いに慰め合い、これほど恐ろしいことが起きているのに社会が変わらないことを嘆き合った。そして目的を持ってこの痛みと向き合おうと誓ったのだ」と語った。

 抗議デモの大半は平和的に行われているが、一部の参加者が暴徒化して店が略奪されるなどの被害も起きている。ミネアポリスの中心街にあるターゲットの店舗も略奪による大きな被害を受けているが、同社では被害の大きい地域に救急手当セットや生活必需品などを大量に提供するという。また今回の被害によって休業せざるを得ない店舗の従業員に対しては、今後数週間の給与を全額支払うことを約束している。

・米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)
 エリック・ノードストローム(Erik Nordstrom)CEOと、ピート・ノードストローム(Pete Nordstrom)社長兼チーフ・ブランド・オフィサーは、従業員向けに公開書簡を発表。「人種差別問題や、多くの有色人種の人々が経験してきたことを無視することはできない。当社の従業員、顧客、そして社会に対し、私たちは人種差別という暴力を非難する姿勢を明確に打ち出す義務がある。企業として、私たちには社会をよりよい場所にする機会が与えられている。それを踏まえてここ数年、ノードストロームでは多様性や包括性の推進、そして帰属意識の強化などに取り組んできた。意見を述べることはもちろん重要だが、耳を傾けることも大切だと私たちは考えている。今日、この国で有色人種として生きるのがどういうことなのかについて、当社の従業員や顧客が共有してくれる言葉に耳を傾けることから全てが始まる」と表明した。

・リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)
 チップ・バーグ(Chip Bergh)社長兼CEOは、「われわれは黒人社会と共に立つ」と題したコメントを発表。同氏はその中で、「アメリカに根深く巣食っている人種差別という最も恥ずべき遺産が原因で、今この国は燃えている。ミネアポリスの警察官4人によるジョージ・フロイド氏の殺害は無分別かつ残虐な行為であり、その少し前に起きたアマド・オーブリー氏とブレオナ・テイラー氏の、そして過去に起きたたくさんの殺害事件も同様だ。彼らのことや、彼らを失った家族やコミュニティーのことを考えると本当に胸が痛む。彼らをこんな目に遭わせていいはずがないし、私たちはもっとましな人間にならなければならない。全米で起きている抗議運動は、有色人種のアメリカ人が何世代にもわたって感じてきた痛み、苦しみ、怒り、恐怖を反映したものだ。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King Jr.)はかつて、『暴動は声なき者たちの言葉である』と語った。私たちは彼らの声に耳を傾け、行動しなければならない」と述べている。

 同社は、社会から疎外された人々を支援する団体リブフリー(Live Free)と、言論の自由を守ることを目的とした非政府組織(NGO)のアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union)にそれぞれ10万ドル(約1070万円)を寄付する。

・VFコーポレーション(VF CORPORATION)
 「ヴァンズ(VANS)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などのブランドを有する同社のスティーブ・レンドル(Steve Rendle)会長兼社長兼CEOは、フロイド氏が殺害された事件について、「絶対にこんなことが起きてはならない。ましてや、繰り返されてはならない。しかし正直に言えば、また起きてしまうだろうと分かっている。これまでも長年にわたって、米国だけではなく世界中で繰り返されてきたからだ。本当に心が痛むし、こんなことは容認できない。現在の危機的な状況が起きたのは新型コロナウイルスのせいだが、フロイド氏を殺したのは“人種差別”という名のウイルスだ。残念ながら、世の中は前者に対する治療薬の開発にしか興味がないように見える。私たちはこの人種差別というウイルスからは逃げてはならないし、闘い続けなくてはならない。しかしそれはあくまでも協力し合って建設的に行うべきことで、破壊的で暴力的な抗議を通じてであってはならない。これから数週間にわたり、当社や傘下ブランドは人種差別に対して反対する意見を表明し、前向きで建設的な対話を行っていこうと考えている」とのコメントを発表した。

・LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON 以下、LVMH)
 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」などを擁する同社のアニシュ・メルワニ(Anish Melwani)米LVMH会長兼CEOは、「無意識のバイアスをなくすことにいっそう尽力し、全米および世界中の従業員と顧客のために、当社の傘下ブランドが平等の精神をさらに推進するようサポートする。ミネアポリスをはじめ、ここ数日の間に米国で起きていることには本当に胸に痛む。当社が黒人社会と共にあり、不平等や不寛容、そしてこれまで目にしてきたような悲劇的な事件を決して許さないことを、LVMHグループのグローバルリーダーシップを代表して表明する」と社内向けのメールで語った。

・ケリング(KERING)
 同社は、「ケリングおよび全ての傘下ブランドは、人種差別反対運動に連帯して共に立つ。平等を求めて、あまりにも多くの黒人の命が失われてしまった。われわれは沈黙しないし、傍観もしない」と声明を発表。全米有色人種地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored People以下、NAACP)と、米国での警察による暴力行為をなくすための活動組織キャンペーン・ゼロ(Campaign Zero)に寄付を行った。

 また同社の傘下ブランドである「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」「ブシュロン(BOUCHERON)」「ポメラート(POMELLATO)」なども、構造的な人種差別と闘う団体や、警察による黒人社会への暴力を止めることに注力している団体などに寄付を行っている。

・PVHコープ(PVH CORP)
 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などを擁する同社のエマニュエル・キリコ(Emanuel Chirico)会長兼CEOは、「PVHは人種差別を厳しく非難する。長きにわたってこの国にはびこってきた構造的な人種差別に反対し、黒人社会と共に立つ。黒人の命も大切だ。これは普遍的な真理であり、物議を醸したり争いを起こしたりするようなコメントであってはならない。これが当たり前のことになるまで、当社は尽力し続ける」と従業員に向けた公開書簡で述べた。

 同氏はまた、「当社は正しい方向に進んでいることを確かにするため、アフリカ系アメリカ人のエンパワーメントを支援する団体BRAAVEと提携し、経営陣や人事部、法務部、PVH財団(The PVH Foundation)などを含めたプロジェクトチームを立ち上げた。またPVH財団は、人種差別と闘う人権団体であり法律事務所のNAACPリーガル・ディフェンス・アンド・エデュケーション・ファンド(NAACP Legal Defense and Education Fund以下、NAACP LDF)と、ニューヨークを拠点とする公民権団体の全米都市同盟(The National Urban League)にそれぞれ10万ドル(約1070万円)を寄付するほか、北米の従業員が6月中に行う寄付に対して100%の上乗せ(マッチング)をする。当社はまた、人種差別や人種バイアスについて学ぶための資料やガイダンスを集めており、従業員と共有する」と説明した。

・トリー バーチ(TORY BURCH)
 今回の悲劇的な事件を受け、アフリカ系アメリカ人の従業員向けのカウンセリングを提供するほか、人種差別や人種バイアスについて学ぶためのワークショップを全従業員に提供する。これに加えて、従業員が人種差別などの難しい話題について家族や友人らと話す“進行役”となれるよう、トレーニングプログラムを立ち上げる。またトリー バーチ財団は外部団体と提携し、人種バイアスをなくすために今後も尽力していくことを発表した。

・G-IIIアパレル グループ(G-III APPAREL GROUP)
 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」などをライセンス生産する同社のモーリス・ゴールドファーブ(Morris Goldfarb)会長兼CEOは、「当社は人種差別やその他のあらゆる不公正を全く容認しない『ゼロ・トレランス』方針を導入しており、今後もそれを継続する。社内外でよい変化を起こすためには、一人ひとりの力が必要だ。当社は人種や社会における格差の是正を支援するため、黒人大学基金連盟(United Negro College Fund)などの団体に寄付をする」と述べた。

・H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)
 同社はNAACP LDF、公民権団体のカラー・オブ・チェンジ(Color of Change)、人権擁護団体のアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union)に50万ドル(約5350万円)の寄付を行った。また人種バイアスについて学ぶための手段や資料などを従業員に提供するほか、会社としてさらに何をしていくべきかを学ぶため、黒人指導者を含めたプロジェクトチームを設立する。

・ギャップ(GAP)
 同社の傘下ブランド「ギャップ」「オールドネイビー(OLD NAVY)」「アスレタ(ATHLETA)」「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」はNAACPと、構造的な人種差別と闘う人権団体エンブレース・レース(EmbraceRace)に25万ドル(約2675万円)を寄付した。それに加えて「バナナ・リパブリック」は、失業などで困窮している人のために2000万ドル(約21億円)相当の新品の衣料品を提供する。またギャップ基金(Gap Foundation)は、新型コロナウイルスの影響で困窮している家族を支援するため、さまざまな非営利団体に100万ドル(約1億700万円)の寄付を行う。

・マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)
 同社は黒人の従業員と相談の上、全従業員が人種平等について学ぶための教育プログラム「黒人従業員フォーラム」を立ち上げた。また社内の人種構成や、同社で取り扱うデザイナーの人種をより多様なものにするため、毎年調査してリポートを発表する。

・フェイスブック(FACEBOOK)
 同社では、従業員の一部が6月1日に“バーチャルストライキ”を行った。これはドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がツイッターに「略奪した者は銃撃される」と投稿したものがフェイスブックのサービスに表示されていることに対して、同社のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOが「トランプ大統領のツイートは、暴力的な発言を容認しないというフェイスブックの規約に違反していない」と表明し、それを削除していないことに反発してのもの。同社では在宅勤務が実施されているため、従業員らは当日仕事をしないことで抗議運動への連帯を示したという。

 ザッカーバーグCEOはこれに対し、「トランプ大統領の投稿がそのまま残されていることに多くの人々が腹を立てていることは知っている。しかし当社の姿勢は、当社のポリシーで明確に規定されているリスクや、特定の危害を生じさせるという差し迫った危険性がない限りは、できる限りの表現を許容するというものだ」と自身のフェイスブックページに書き込んだ。なお、同社は人種差別と闘う複数の団体に1000万ドル(約10億7000万円)の寄付をすると発表した。

 一方で、ツイッター(TWITTER)社はトランプ大統領による問題のツイートが「暴力を賛美することを禁止する当社規定に反する」として警告メッセージを付け、ツイートをクリックしないと表示されないようにしている。

・タペストリー(TAPESTRY)
 米「フォーチュン(FORTUNE)」誌による全米トップ500社のリスト「フォーチュン500」に含まれる企業で、黒人のCEOは4人しかいない。「コーチ(COACH)」や「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」などを擁するタペストリーのジデ・ザイトリン(Jide Zeitlin)会長兼CEOは、そのうちの一人である。

 同氏は従業員に向けた公開書簡で、「この手紙を書こうとしては、何度も手が止まった。目に涙が浮かんでしまうからだ。今回の事件は、私にとって個人的なものだ」と語りかけた。「暴動が起き、当社のさまざまな店舗が略奪などの被害に遭ったと報告されたとき、何よりも従業員のことが心配だった。幸いなことに全員無事だったが、次にハンドバッグや靴などを略奪した人々のことが気になった。この社会は、人種差別に抗議するにはもうこの方法しかない、失うものなど何もないのだからと思わせるぐらい、彼らを追い詰めてしまったのだろうか。ショーウィンドーやハンドバッグなら、いくらでも代えがある。しかしジョージ・フロイド氏、アマド・オーブリー氏、ブレオナ・テイラー氏、エリック・ガーナー(Eric Garner)氏、トレイボン・マーティン(Trayvon Martin)氏、エメット・ティル(Emmett Till)氏や、その他の数え切れないほど多くの犠牲者たちを生き返らせることはできない。彼ら一人ひとりを含め、黒人の命は大切なものだ」と述べ、同社が構造的な人種差別と闘うための長期計画を策定していることを発表した。