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自分と向き合いしっかり毒だし! 何度も足繁く通う玉川温泉湯治合宿 【トラベルライター間庭がハコ推し!】

旅の質が重視される今、個々にとって満足度の高い施設が求められている。今回は私が毎年訪れ、体の奥から毒を絞り出そうと、合宿をしている秋田県の玉川温泉を紹介する。自炊部もある、昔ながらの湯治場であり、快適、癒しだけでない、試練の場でもある。パワフルな泉質であるため、湯ただれや倦怠感などの好転反応も。そんな苦しみに耐えつつ、シーズンごとの棚卸し感覚で連泊している。本気で体に向き合う奇跡の湯治場は行く価値ありなのだ。

ここにしかない源泉、鉱石――奇跡の湯治場、秋田県・玉川温泉へ

心身をリセットするために、私が定期的に訪れているのが、秋田県の玉川温泉だ。秋田新幹線こまちの田沢湖駅からバスで約1時間。岩肌から蒸気がもくもくと立つ光景が近づいてくると、たどり着いた・・・と感慨深くなる。周辺にある建物は玉川温泉だけ。徒歩圏内にコンビニやカフェなどなく、ここに連泊すると施設内にこもることになる。そしてどこにも行かず、湯治に専念することこそが贅沢なのだ。

1週間、2週間と長逗留するリピーターの多いこの温泉は、4泊以上だと割引になる。今っぽく表現すれば、「暮らすように滞在」している。自炊部もあり、共同キッチンには、コンロやレンジ、鍋などの調理器具などもそろい、身一つで問題ない。それでも食材や家電を大量に持ち込み、引っ越しですか?と聞きたくなるようなツワモノも!シェアダイニングで宴会しているグループもいて楽しげだ。売店には食材もそろい、レトルトカレーやカップラーメンもあるので、買い物や調理に時間を割くことなく、ただ、ただ、こもれる。

カフェテリアのような食堂も利用できる。朝晩のビュッフェ、ランチは稲庭うどんや比内地鶏ラーメン、親子重などのローカルグルメを提供していて、旅気分も満喫。ファンシーな娯楽施設はないが、湯治に専念し、体を癒すにはもってこいの環境なのだ。

取り扱い注意のパワフルすぎる強酸性の源泉に驚愕

滞在中は朝4時から深夜12時まで、ひたすら大浴場に通う。源泉そのものの100%、希釈した50%など、浴槽は11種。刺激が極めて強い強酸性の源泉なので、はりきって100%源泉には飛び込まないように!pH1.2というレモンより酸が強い源泉は強烈だ。部屋にもある指南書によると、まずは体に負担が少ない源泉50%のぬるい湯(39度前後)でチェックすべし、とある。3分くらいを目安に入浴し、刺激が強い、ピリピリすると感じたら、無理せず低濃度の弱酸性の浴槽へ。問題なければ熱め(42度前後)の源泉50%などでじっくり5分入浴。そして身体が慣れてきたらいよいよ100%に挑戦。ここでは濡れた手で目をこするなど厳禁。薄皮が剝がれていくような感覚の強い酸。ピーリング効果は抜群で、入浴後はむき卵のような肌になる。

通常ならば「5分ほどほどに、8分じっくり、3分で整える」というのが湯治のセオリーなのだが、ここ玉川温泉ではあまりにパワフルで体力を消耗するため、3分でならして、5分じっくり、2分できゅっと仕上げるような短縮プログラムを推奨しているそう。立ち湯や打たせ湯、寝湯などもあり、そのときの体調に合わせて自分でメニューを組める。

というのも2度目、3度目と入浴するうちに、強酸性のお湯の刺激により、思わぬ部分が痛くなってきたりする。私の場合、2日目以降に鼻の横や爪の際、首筋のあたりがピリピリとしてきた。時には赤く腫れあがる湯ただれを起こすこともある。ちょっとした切り傷、眼やデリケートゾーンなどの粘膜は飛び上がるほど痛む。

刺激が強くて源泉100%にはなかなか入れない場合は、箱蒸湯という選択も。これは木の箱に入り、頭だけをだして座る、一人用サウナのようなもので、温泉の蒸気吸入により、源泉100%を体内に取り込める。いわゆるスチームサウナ、蒸気湯もまた100%濃度の蒸気。地熱によりふつふつと湧いてくる湯気とヒバの香りが身体を包み、奥から浄化されるようだ。けれど、蒸気が歯のエナメル質にダメージを与える可能性もあるので「必ずうがいを」という注意書きもあり、なかなか恐ろしい。飲泉場でも、必ず薄めて、必ず最後は真水でうがいをして、と念押ししている。なにせ蛇口は真っ黒、包丁が錆びてしまうくらいの強い酸なのだ。

毎週、土・日・月には「初めての玉川温泉」という15分程度の講座も開かれ、泉質や入浴方法、注意事項などについてのレクチャーを受けられる。また常駐の看護師による個別の湯治相談室も無料で受けられ、ここがリゾートではなく、湯治宿であることを実感する。

これぞ唯一無二! 大自然の中での天然岩盤浴

そしてここまで足を運ばないと体験できないのがアウトドアでの天然岩盤浴体験だ。玉川温泉の施設の目の前には「玉川温泉園地自然研究路」があり、その道を5分ほど進むと温度98度、日本一の強酸性水が大量に湧き出す源泉、大噴(おおぶき)と対面する。塩酸を主成分とし、噴水のようにごぼごぼと湧く様子は、恐怖さえ感じる。

玉川温泉は世界中に台湾の北投温泉とこのエリアでのみ、産出(生成)される希少な鉱石「北投石」でも知られる。鉛を含む重晶石で、ラジウムを放出する。自然研究路をさらに進むと小屋が3軒並び、噴湯・噴気に囲まれ、大地の息吹を感じる区域に。この東屋の中にゴザを敷き、寝転がることでじんわり芯を温めるのだ。場所によって温度もそれぞれで、長く座れないほど熱くなったスポットも。低温やけどをしかねないので要注意。温度ではなく、ラジウムが多く放出されているといわれるのが神社の周り。目的や体調にあったマイベストスポットを手探りで探していく。湯の川は含まれる硫化物で鮮やかな黄色に。コバルトブルーの水との対比が目にまぶしい。こんな風景、ほかにはない。

野趣あふれる天然岩盤浴もまた湯治の1つ。泉質刺激による温泉療法と天然岩盤浴を組みあわせることで相乗効果をもたらす。噴気孔の蒸気に包まれ、下からはじわっとほぐれるように地熱が伝わってくる。汗がどくどく吹き出し、動悸も激しく。サウナとはまた違った「整い」を実感でき、体中の水分が入れ替わったような感覚に。地球のエネルギーをダイレクトに取り込むような手ごたえがあるのだ。毛布やアルミのフィルムに包まれミイラのようになった人など、みな真剣に体と向き合っている。私は滞在ごとに、文庫本を何冊絵も持ち込み、ひたすら読書。ここではWifiもつながらないので、デジタルデトックスにもなるだろう。

湯治は試練!思いがけない好転反応もありえるので覚悟して

玉川温泉での湯治は、娯楽でもリラックスでもなく、療養だ。お湯に力があり、時にはノックアウトされそうになる。試練もあるこの滞在を、私は「デトックス合宿」と呼んでいる。

力強いエネルギーは好転反応も引き起こす。回復の過程として一時的に体調が悪くなる症状だ。急激な倦怠感や炎症、かゆみや痛み、吹き出物や下痢などの不調が訪れる。来る度に好転反応も違うのだが、私の場合、体がだるくなり、時には頭痛も。のどのあたりに赤い発疹ができたり、トイレに行く頻度がやたら増えて小の方が濃くなったりする。今回は頭が凝り固まっていたのか、頭皮から滝のような汗が出て困った。

良くなろうと細胞が活発になっていることを実感でき、このつらさはどこか心地よい。体がだるく、眠くなるので、食事が何よりもの娯楽だ。朝食・夕食のビュッフェは旬の野菜中心。秋田名物のきりたんぽ鍋や比内地鶏やじゅんさい、はたはたなどの地元食材をふんだんに使ったメニューが日替わりで並ぶので、連泊しても飽きることがない。ヘルシーなのに食道楽。それゆえ私にとっては、玉川温泉の滞在は、合宿であり、バカンスにもなりえるのだ。

山岳温泉リゾート・新玉川温泉でスマートな療養もおすすめ

玉川温泉は湯治に特化した施設なので、設備は質素。かつ4月下旬から11月下旬からの夏期のみの営業。雪深い地域だけに12月からは閉館となる。けれども玉川温泉の少し手前にある新玉川温泉は山岳温泉リゾートとして最新の設備を誇り、冬季も営業している。客室もリゾートホテルのように洗練され、畳敷きにベッドの和モダンや、ワーケーションにも最適なシングルルームなど、個々のニーズに合わせた10タイプから選べる。本格的な湯治場よりも現代的な施設のほうが安心、という人にもおすすめだ。

大浴場は玉川温泉と同様、青森ヒバで造られた風情ある大空間で、同じ源泉。浴槽は15種もあり、100%源泉の浴槽はより広い。私はひそかに玉川温泉より風情があり、優れているのでは、と感じている。新玉川には露天風呂もある。夏は新緑、冬は雪見風呂と、自然と一体になれる温泉だ。玉川温泉同様、箱蒸湯やスチームサウナ、蒸気湯もあり、本格的な湯治も可能。新しい施設なので、段差も少なくバリアフリー。機能性を第一に設計されている。

夏期は双方を行き来する無料のシャトルバスも運行しているので、私は玉川温泉に滞在し、日帰りで気分転換、もしくは最終日に新玉川温泉に立ち寄り、仕上げ湯にしている。

玉川温泉は本格的な湯治の場だけに、現在、闘病中の人も集まる。手術痕が痛々しかったり、車いすでサポートされて岩盤浴に向かう人の姿も。そういう今を闘う人と出会い、交流することで、不思議なのだが力を授かり、明日からまた頑張ろうという気持ちになれる。玉川温泉での湯治は、心身だけでなく、魂のデトックス合宿でもあるのだ。

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