ビューティ
特集 CEO2026

【SK-II 西田文彦事業代表】「退屈なまでの一貫性」を磨き、選ばれ続けるブランドへ

PROFILE: 西田文彦/P&Gプレステージ 「SK-II」事業代表

西田文彦/P&Gプレステージ 「SK-II」事業代表
PROFILE: (にしだ・ふみひこ)「日本発のイノベーションを世界に羽ばたかせるビジネスリーダーになりたい」という信念の下、国内医療機器メーカーの海外営業を経て2011年にP&Gに入社。一貫して「SK-II」事業に携わり、シンガポール、日本、香港、台湾でのブランドマネジメントを経験。日本の「SK-II」営業組織を統括した後、22年1月から現職 PH0TO : TAMEKI OSHIRO

「クラシックとイノベーション」を両輪に、ブランド価値をどう高め続けるか。西田文彦P&Gプレステージ 「SK-II」事業代表は2025年を、45年にわたり継承してきた独自の天然由来成分「ピテラ™※1」という資産を再定義しながら、新たなヒーロー製品を育てた転換点と位置付ける。“LXP 金継ぎ”シリーズ や“ジェノプティクス CC プライマー/UV クリーム”の投入により、ハイエンドから若年層まで製品ポートフォリオの裾野を広げ、ブランドの次なる成長曲線を描く。

エントリーからスーパープレステージまで
製品ポートフォリオを拡充

WWD:2025年をどのように総括するか。

西田文彦「SK-II」事業代表(以下、西田):クラシック(ヒーロー製品)とイノベーション(新製品)の両立により、「SK-II」を一段高い次元に引き上げることができた一年だった。ブランドの歴史を振り返ると、どちらか一方に偏り成長が鈍化した時期もあった。しかし現在は、45年間変わらず愛されてきた資産と、新しい価値創出が非常に良い形でかみ合っている。

WWD:イノベーションの象徴となった製品は。

西田:“ジェノプティクス CC プライマー/UV クリーム”は、強いインサイトを起点にマーケティング全体に一貫性を持たせ、明確なアイデアで展開した代表例だ。手に取りやすいアイテムで、ピテラ™体験のエントリー商材として機能している。裾野を広げた結果として若年層へのリーチにも成功し、アットコスメトーキョーのポップアップイベントの先行販売では3日間で完売するなど、話題性と実売の両面で成果を上げた。“スキンパワー リニュー”シリーズも40年のハリ研究の集大成として話題を作った。たるみなどのエイジングサイン※2は顔の下半分ではなく、頬の“ハリの頂点”から始まるというインサイトに着目し、“頂点ケア”というストーリーを処方、パッケージ、店頭体験にまで貫き成功を収めている。

WWD:昨年は“ジェノプティクス CC プライマー/UV クリーム”により、若年層へのリーチが拡大した。一方で、24年には最高峰ライン“LXP 金継ぎ”シリーズを発売し、スーパープレステージカテゴリーにも進出している。

西田:“LXP 金継ぎ”シリーズは、百貨店の外商チャネルが好調で、デパコスと初めて出合う顧客層との接点を生み出している。“LXP 金継ぎ”は、単にブランド間でシェア争いをするのではなく、プレステージ、さらにスーパープレステージ市場の成長に寄与している。日本におけるプレステージスキンケアの世帯浸透率は約8%と欧米や中国に比べると低い。この浸透率をいかに増やしていくかが重要だ。“LXP 金継ぎ”を頂点に、“ジェノプティクス CC プライマー/UV クリーム”のようなエントリーアイテムまでをそろえる明確な製品ポートフォリオにより、消費者のステージに応じた長期的な関係構築を目指す。市場の中で勝つのではなく、市場そのものを育てていくことが「SK-II」のビジョンだ。

WWD:EC・デジタル領域の強化も進んだ印象だ。

西田:昨年、アマゾンに出店し非常に好調だ。ECは世帯浸透率の観点からも大きな成長機会があると捉えている。実際に、ECを通じて初めてプレステージスキンケア、「SK-II」を使い始めるお客さまも増えている。実店舗とECユーザーでは購買行動や売れ筋に違いがあり、店頭ではそこでしか得られない体験が求められる一方、ECでは効率性や購入タイミングがドライバーとなる。「SK-II」ではチャネルごとの役割を明確にし、全体最適化を図っている。チャネルを分断せず店頭とデジタルを融合し、消費者一人一人の体験をつなげることが競争力になる。

WWD:コミュニケーション面での新たな取り組みは。

西田:24年末にインスタグラムの日本公式アカウントを開設した。美容部員が知見や体験を発信することで、店頭体験をデジタル上に拡張し、消費者理解のフィードバック拠点としても機能している。また、トップ美容部員を本社に迎え、消費者とのコミュニケーションに関わってもらっている。最前線で顧客と向き合っている人材が加わることで、消費者理解の解像度が飛躍的に高まった。

WWD:26年、その先に向けた成長戦略は。

西田:「SK-II」の未来を考える上で、最も重要なのは「退屈なまでの一貫性」だ。25年に45周年を迎え、26年に入っても、戦略の軸が大きく変わることはない。消費者理解を起点とし、ブランドの中核であるピテラ™の価値をイノベーションとコミュニケーションを通じて進化させ続けることが第一だ。もう一つの軸は、それを誰が、どのように届けるかだ。「SK-II」にとって最大の資産の一つに、スキンエキスパートである美容部員の存在がある。卓越したカウンセリング力と肌測定に基づく提案を通じて、単なる製品販売ではなく、体験としてのブランド価値を届けていく。この構造は今後も変わらない。「SK-II」が目指すのは、流行を追うブランドではなく、選ばれ続けるブランドだ。そのために必要なのは、新しさと変わらなさを愚直なまでに両立させようとする姿勢にほかならない。

※1 特別な酵母の株を独自のプロセスで発酵させて生み出した、「SK-II」独自の天然由来成分(ガラクトミセス培養液、整肌、保湿成分)
※2 ハリの低下、乾燥による小ジワ、キメの乱れ、乾燥による毛穴目立ち

個人的に今注目している人

ミュージシャン プリンス

惜しくもこの世を去ってから今年で10年。今改めて、その存在から大きな刺激を受けている。ボーカルから楽器演奏までを自在にこなし、ジャンルの境界を壊し続けたその姿勢は、マーケティング、営業、人事、ファイナンスと複数の領域を横断しながらブランドを率いる、今の自分が目指したい姿と重なる。「SK-II」もまた、スキンケアという枠に留まらず、常識を更新し続けるブランドでありたいと思う。

COMPANY DATA
P&Gプレステージ

特別な酵母の発酵がもたらす唯一無二の成分「ピテラ™」を配合したスキンケア製品“フェイシャル トリートメント エッセンス”は、日本酒の酒造で働く杜氏の手肌の美しさにヒントを得て1980年に誕生した。91年に米プロクター・アンド・ギャンブルがマックスファクター傘下の「SK-II」事業を買収。「SK-II」製品の海外販売を開始した。2016年8月に日本法人の社名をP&Gプレステージ合同会社に変更した


問い合わせ先
SK-II
0120-021325