ファッション

「メンズノンノ」は、検索では得られない“寄り道”も提案できるメディア【編集長インタビュー】

集英社の男性ファッション誌「メンズノンノ(MEN'S NON-NO)」は、来年で創刊40周年を迎える。ブランドを統括する丸山真人WEB編集長は、「昔から大学生や働き始めた社会人はターゲットでしたが、今は20代後半の読者も多いです」と話す。読者像の拡大やターゲット世代の価値観の変化は、「メンズノンノ」をどう変えたのか?一方で40年間変わることのない読者や媒体への思いや、来年のアニバーサリー・イヤーの計画も含めて聞いた。

WWD:読者が広がることで、媒体も変化している?
丸山真人「メンズノンノ」ブランド統括・WEB 編集長(以下、丸山):例えばラグジュアリー・ブランドの取り扱いが増えています。「信頼できるもの」を求める世代は、「どうやりくりしているの?」と調査したくなるほど、上手に工面して、ラグジュアリー・ブランドの商品を買っています。もちろん買うのはフレグランスなどのエントリー商材が多いけれど、バッグなどへの興味や関心も高く、取り上げれば読者はもちろん、モデルからも人気。従来は「まだ先の話」だったかもしれないけれど、今はちゃんと“ 刺さっている”手応えがあります。20代後半の読者が増えたこともあって、「メンズノンノ」の読者が、ラグジュアリー・ブランドの商品を「買う世代」になっているので、今後もこうした憧れのブランドを世の中に広げていく役割を担いたいと思います。結婚や婚約指輪も含むジュエリーの企画では、「ハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON)」や「カルティエ(CARTIER)」など、ハイジュエラーとの取り組みも大きな反響がありました。最近はレスポンスの高さがブランドにも伝わってきたので、時計も含めて注力しています。

WWD:読者の拡張で、登場人物も広がっている。
丸山:直近では俳優、佐藤健さんの表紙の反響が大きかったです。「メンズノンノ」専属モデルにも30代が存在します。加えて創刊当初からモデルの強さで一定数の女性読者を抱え続けているので、彼女たちとも、もう一度強く繋がりたい。40周年では、改めてモデルの強さを押し出します。24人のメンノンモデルと、イベントをいくつか企画できたら。飲み会の延長みたいなトークイベントも楽しいし、初めてのビューティやラグジュアリー・ブランドを学ぶ機会でもいい。自分がその世代だったら、きっと一緒に学びたいと思うんです。

WWD:ビューティは、近年強化している。
丸山:「メンズノンノ美容大賞」は2015年から行い、今年は11月9日売りの誌面で発表しました。コロナ禍を契機に男性読者の美容意識は大きく変化し、スキンケアからメイク、そしてフレグランスへと広がっています。昔は社会の偏見があったかもしれないけれど今は取り払われ、面白さを感じている読者たちはビューティに積極的です。彼らにはファッションもビューティも、「オシャレ」や「カッコいい」もの。特にビューティはその文脈で商品を提案しやすいので、「メンズノンノ」にできることは多いと考えています。ビューティがまだ未知の領域な読者のためには、特にウェブでは敷居を下げて、ハウツーを積極的に。自分も最初はよくわからなかったので、「アイブロウペンシルは、こう持つんだよ」から寄り添います。一方で、例えばオススメの香水10選というウェブ記事だったら、「全部知ってる」ではないものも仕込みたい。

知っている名前で検索する時代に
「初めて知る」を提供したい

WWD:その香水10選のように、「『初めて知る』をちゃんと提供したい」という思いが強い。
丸山:特定の商品名やブランド名で検索する時点で、その分野にある程度の知識があるわけなので、だからこそ「メンズノンノ」では、紙でもウェブでも(検索では出てこない)「こんなものもあるんだよ」を仕込んでいきたい。回答はもちろん大事だけれど、回答にたどり着く前の“寄り道”も提案する媒体になれたらと思います。例えばウェブでは少し毛色の違う記事も混ぜ、ヒット記事を目掛けてサイトを訪れてくれたユーザーに「こんなものもあるんだね」と思ってほしいんです。「味付けのちょっと違うおかず」も提供したい。オシャレな男子が好きそうな車やバイク、カメラなども、同じ考えで取り上げたいと思います。

WWD:「味付けのちょっと違うおかず」の具体例は?
丸山:たとえばBLドラマに主演したタイの俳優たちのインタビュー集があります。インタビューすると考え方はしっかりしていて、知らなかったカッコよさがありました。また個人に紐づく情報をSNSで手に入れるのが当たり前の時代だからこそ、個人のSNSでもできることではなく、「メンズノンノ」としての打ち出しを強化したいと思います。スーパースタイリストが大活躍していた時代は彼らの私物や気になっているアイテムを何度も紹介してきたけれど、特に誌面では今、「メンズノンノ」の審美眼や選択眼を意識しています。一方、「これが正解」や「これをやらねば」とプレッシャーをかける発信は、40年の看板を背負っている「メンズノンノ」のやるべきことではありません。「カッコいい」の定義は、1つではありません。100人いれば100通りの「カッコいい」があることを、特にウェブではさまざまな「カッコいい人」を出すことで訴え続けたいと思います。

WWD:40周年は、イベントを強化する。
丸山:メーンイベントの1つは、「メンズノンノ美容大賞」。読者を招いての選考会の規模を拡大し、久しぶりの大きなリアルイベントとして秋に開催する予定です。社内に読者を招いて実施した選考会でも、その場で仲良くなってLINEを交換するなど、彼らが交流する姿を見て嬉しくなりました。12月に発売する26年1&2月合併号は、創刊から43号連続で表紙モデルを務めた阿部寛さんと、現在の「メンズノンノ」モデルの代表的存在である鈴鹿央士さんの2人が表紙を飾り、アニバーサリー・イヤーのキックオフを祝います。


「メンズノンノ」(集英社) DATA
【MAGAZINE】創刊:1986年5月 発行部数:4万7000部(印刷証明付き)
【WEB】月間UU:241万UU 月間総PV:3453万6000
【SNS】X:29万0000 IG:29万6000 LINE:11万5000 YT:6万7000 TikTok:7万2000(2025年10月末現在)

PHOTO:TAMEKI OSHIRO
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