ファッション

「ディーゼル レッド タグ」と「ア コールド ウォール」 飽食の時代に突きつけたコラボレーションの真価

 情報過多の現代のファッションシーンにおいて、優れたデザインや高い品質はただの前提条件でしかない。だからこそ、多くのブランドは成功の決め手となる話題性を求め、コラボレーションを仕掛ける。先ごろ発表された「ディーゼル レッド タグ(DIESEL RED TAG)」プロジェクトと「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL以下、ACW)」のジョイントのニュースを耳にして、トピック性の高さゆえにそうしたコマーシャルなイメージを抱く人も少なくないだろう。しかし、そこには確かに互いへの敬意と、モノ作りの本質が息づいている。表面的なコラボが台頭している今こそ際立つ、強力な個性たちの出合いとその必然とは。

互いの垣根を超えた
強力コラボレーションがついに実現

 12月10日の東京湾岸、東雲の倉庫街。普段は閑静なエリアだが、この日は国内外で活躍するファッショニスタやセレブリティたちが一堂に会した。その場所は、「ディーゼル レッドタグ」と「ACW」によるカプセルコレクションのプレゼンテーションイベントが行われる巨大なアートスペース、TOLOT。ストリートとラグジュアリーの蜜月を象徴する英国の気鋭ブランドと、イタリアンプレミアムカジュアルウエアの名門とによる共作というだけあって、その関心の高さにもうなずける。エレベーターで上がり、ホワイトキューブが並ぶエントランスを抜けると、そこにはマットブラックの鉄パイプが縦横に走る広大な空間が広がる。その中に浮かぶようにディスプレーされたウエアの数々が、今回のコレクションだ。

洒落者たちを沸かせ続けた、
一夜だけの異空間

 まるで大理石のようにランダムなコントラストが目を引くデニムや、形状記憶のナイロンをメインマテリアルに据えた今回の試み。そんな展示空間からさらに奥へ歩を進めると黒山の人だかりが目に入る。Thom Yorkeのプレイリストにも抜擢されたMars89、新世代のガールズアイコン、ZOMBIE-CHANGや飛び入りでマイクを握ったラッパーのHIYADAM、UKの有力レーベル、BONE SODAからはSKINNY MACHOらがフロアを沸かせる。この日の来場者にはアーティストやモデル、クリエイターらが多数名を連ね、「ア コールド ウォール」のデザイナー、サミュエル・ロス(Samuel Ross)とかねてから親交の深い佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)が激励に駆けつける一幕もあった。

実験的コラボプロジェクト、
その系譜と新たな一手

 そもそも「ディーゼル レッド タグ」とは、世界各地の有力デザイナーやブランドを招き、「ディーゼル」のブランド哲学を彼らがそれぞれ再解釈して独立コレクションとして具現化するというプロジェクト。これまでには、かつて「フッド バイ エア(HOOD BY AIR)」を展開していたシェーン・オリバー(Shayne Oliver)や「ワイプロジェクト(Y/PROJECT)」のグレン・マーティンス(Glenn Martens)、ゴーシャ・ラブチンスキー(Gosha Rubchinskiy)による「GR ユニフォーマ(GR-UNIFORMA)」らとタッグを組み、その第4弾として白羽の矢が立ったのが「ACW」というわけだ。変則的なパターンワークによる洗練されたシルエットや、植物染料を用いたアイコニックな柄の表現、先述のデニムとナイロンに象徴されるハイブリッドな素材使いーーひとつひとつのピースだけを取っても特別感と特異性が実感できるアイテムがラインアップされている。

キーマンが語る、
コラボレーションの
ビハインド ザ シーン

 「『ディーゼル』は僕の育ったイングランドのカルチャーに深く根ざしていて、みんな当たり前のように『ディーゼル』を着ていた。だから、言ってしまえば民主的なブランドだと思っている」。目を見据えながら、サミュエル・ロスはそう言い切る。そんなブランドのヒストリーに彼はどんな1ページを加えたのか。

WWD:今回のコレクションを作る上で意識したことは?

サミュエル・ロス(以下、サミュエル):まず「両者の共通項は何か」を考えました。そうして出た答えが、テクノロジーやエンジニアリングだったんです。例えば「ディーゼル」はデニムに関する深い造詣や素材加工のノウハウを持っていますよね。「ACW」で言えば、ナイロンやテック素材がそれにあたるのかなと思ったんです。どちらもアクセントの利いたブランドなので、いかにブランドの哲学や精神を融合させていくかをずっと考えてきました。その象徴として服がある、という風にしたかったんです。

WWD:今回のコレクションのキーアイテムは?

サミュエル:ジレがまさにそれですね。デニムという「ディーゼル」を象徴する素材を使った、脱構築的かつ実験的な一着で、今回の取り組みをもっとも象徴していると思っています。

WWD:「ACW」が多用するダメージ加工やエージングと、このジレに施されたブリーチ、アプローチの視点は異なるか?

サミュエル:一見するとブリーチに見えますが、実はあの柄は植物由来の染料を使って表現しているんです。染料を3層構造にしたことでブリーチのように見えているんですね。デニムは生きている素材ですし、同様に各素材も使い込んでいくうちに表情が変わっていく。一度作ったらずっとそのままの状態という、いかにも人為的なものではなく、商品とともに思い出が育っていったり、経年によって劣化するのではなく味となるような商品を作りたいといつも思っています。

WWD:今回のプロジェクトで学んだことは?

サミュエル:正直、世の中には単なるロゴやイメージを共有しただけのコラボレーションが多くありますよね。だけど、個人的にはコラボはチャレンジであるべきだと思いますし、実際に今回は「ACW」にとってまさにそうだったと思います。グローバルでリーチも大きい「ディーゼル」に対して「ACW」はすごくニッチなブランドで、言ってみれば近しい人に話しかけるような感覚で発信しているわけです。だから、そこにはメッセージの規模に大きなギャップがありました。今後「ACW」がグローバルな方向を目指す上で、その発信の仕方がどう変わっていくか、今回はそのよい予行演習になったし、「ディーゼル」に学ばせてもらったと思っています。

WWD:あなたやヴァージルのように、モードとストリート、両方の言語を持っている人がシーンをけん引している現状をどう見ているか?

サミュエル:そういったデザイナーの多くに共通しているのは、ファッションではなくデザインの学校を卒業していること。建築やプロダクトデザイン、グラフィックデザインといったように。手法として記号論やビジュアルコミュニケーション、エンジニアリングというようなものがあって、ファッションの学校を出た人たちは一着の服を作るときに目指すべきゴールへの行き方を知っているので、たいてまっすぐ向かうんですが、僕たちはそういった教育を受けていないから、回り道をしたり抽象的な行き方をすることがよくあるんです。その分、モードやストリートの度合いについて、バランスやさじ加減をどのように測るのか、感覚が身についているんだと思います。リトマス紙みたいなものですね。コミュニケーション戦略や商品の打ち出し方についてもプロダクトデザインと同じくらいの時間をかけて考えているので、世の中から見たら独自のものに見えているのかも知れません。

WWD:今回のコラボレーションも含めて多忙さが伝わってくるが、余暇はどんな風に過ごしているか?

サミュエル:読書ですね。特に文学が好きで、だいたい3、4冊の本を並行して読んでいます。スピリチュアルなものから、生物が今後進化してAIとどのように融合されていくのかというものまで、いろいろと。

WWD:あなたにとってのバイブルは?

サミュエル:2015年に発刊された「サピ・エンス(Sapiens): A Brief History of Humankind」という本です。人類の生誕から現在までの軌跡と、今後人類がどんな方向に向かっていくのかというのをまとめたものです。あとは旧約聖書にも、今の世の中にも通じるような記述がある章があって、かなり影響を受けています。

WWD:最後に、今回のコラボレーションやあなたの活動を目で追っている人たちへメッセージを。

サミュエル:見てくれた方が作品から何かのインスピレーションを得たり、自由であることの価値を感じたりしながら、心に残ったことを周りにシェアして、広めていってくれたらうれしいです。

PHOTO:TAKAKI IWATA(EVENT) , RYO KUZUMA(INTERVIEW)

TEXT:RUI KONNO

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