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インスタ「#足元倶楽部」の仕掛人に聞く、“SNS世代”流ビジネス

 インスタグラム上で「#足元倶楽部」というハッシュタグと共に、靴を履いた足元の写真が投稿されるのを見たことがあるだろうか。現在、投稿数が200万件を超えているこのハッシュタグの考案者が、株式会社いいねの小林稜社長だ。小林社長は2014年にスニーカー特化型のキュレーションメディアとして「足元倶楽部」をスタート。インスタグラム上で「#足元倶楽部」と投稿されたスニーカーの情報発信を始めた。17年にはSNSコンテンツに特化した企業、いいねを設立。19年8月にはキュレートした写真を雑誌のように加工したファッションメディア「SNS世代」を立ち上げた。SNS領域での事業を拡大している同社の小林社長に「足元倶楽部」誕生秘話から“SNS世代”の価値観までを聞いた。

WWD:「足元倶楽部」をスタートした経緯は?

小林稜いいね社長(以下、小林):学生時代からファッションに興味があったのですが、雑誌を読んでも、僕自身太ってるので全く参考にならず(笑)、唯一読んでいたのが「オーシャンズ(OCEANS)」のスナップ企画“街角パパラッチ”でした。その中には自分と同じ体格の人もちらほらいて、リアルで共感できたんですよね。次第にこの人たちは普段、他にどんなスタイリングをしているのか興味が湧いて、スナップ内に出てくる人の名前をSNSで検索するというネットストーカー的なことをして(笑)、すると意外にもヒットして沢山の情報が得られました。このことをキッカケにSNSの楽しさというか可能性を感じたんです。そこから“体形に縛られない”、“身近で男女共に楽しめる”スニーカーに特化した足元倶楽部をスタートしました。

WWD:そこからキュレーション型のメディアに進路変更した理由は?

小林:まずコンテンツを作るために、スナップ撮影を原宿で行っていたのですが、思いのほか撮れ高が悪くて。そこで目を付けたのがインスタグラムでした。インスタグラムの根底には「周りから評価されたい」「いいねされたい」「取り上げてほしい」といった承認欲求や自己顕示欲があると考えています。みんなが投稿している写真をキュレートすることを思いつきました。当時から発売されたばかりのスニーカーを購入した人が即日SNSに写真を上げていたので片っ端から声をかけて写真を募りました。そこから効率化を測るために“#足元倶楽部”を作り、ハッシュタグを付けてくれた人の中から抽選で掲載する“当選”のような仕組みを作りました。

WWD:なぜ、「足元倶楽部」という名前にしたのか?

小林:正直、カッコ良くはないですよね(笑)ただ個人的に重要視していたのは、文字のインパクト。当時は今ほどハッシュタグが浸透していなくて、付けても英語やカタカナがほとんどだった。そういった中で漢字のハッシュタグは目立つし、覚えやすいだろうなと思ったんです。

WWD:「足元倶楽部」がメディアとして成長したきっかけは?

小林:弊社以外にも「~~部」というタグが徐々に生まれていた時期で、テレビやメディアで取り上げられたこともあり、バズったんです。その他にもスニーカーセレクトショップやスニーカー専門誌との合同キャンペーンも次々とやることになりました。気が付けばスニーカー業界の人やスニーカーヘッズがこぞって「#足元倶楽部」を付けて投稿してくれるようになりました。

WWD:17年には企業を設立した。どういった事業を行っているのか?また、業績は順調か?

小林: SNS領域に特化したマーケティングコンサルタント事業やメディア運営、モデル・インフルエンサーのマネジメント、キャスティング事業です。まだ3期目ですが、業績は順調に伸び続けています。

WWD:主なクライアントは?

小林:主にアパレルからスポーツブランドまでジャンルに関わらず、SNSに力を入れている企業様とお取り組みしております。

WWD:現在の社員数は?

小林:業務の大半は正規雇用ではなく20代の若手を中心にフルリモート、フルフレックスで運営しています。

WWD:小林社長も含め、10代から20代のメンバーが中心となって進めているいいねの事業において、重視していることは?

小林:メンバーたちの声を吸い上げ、それを臆せず、クライアントにちゃんと伝えることですね。クライアントにそのまま言っても大丈夫かなと悩んだ時期もありましたが、“SNS世代”の僕たちだからこそ感じることもあるし、時には正しいこともある。その意見にどれだけ柔軟に向き合えるのかを大切にしています。クライアントに応えるのが僕たちの仕事ですが、「その商材はインスタでヒットしない」など思った事はしっかりと伝えて、クライアントと話し合いながら、より良いSNS戦略を常に考えています。

WWD:若者たちの働き方や、仕事に対する意識などをどのように捉えている?

小林:僕自身もそうですが、インターネットのおかげで好きなこと、得意なことを仕事をしている人が増えている。これもSNSのおかげで、会社に雇われるのではなく、個々として活躍できる環境が増えてきているので、働き方や在り方もいい意味で変わってきていると感じています。

WWD:今年の8月にはファッション領域での新たなキュレーションメディア「SNS世代」をインスタグラム上で立ち上げた。現状の手応えは?

小林:順調ですね。ローンチ2カ月で1万フォロワーを突破し、現在は1日300~400フォロワー増えています。ファッションのキュレーションメディアですが、SNS上に投稿される写真のクオリティーが高いのでコンテンツも一定に保てています。またコンテンツのディレクションには、インフルエンサーの高島涼さんに携わってもらっており、インサイトを最大限活用してユーザーの動向を追い続けることで需要のあるコンテンツを配信しています。

WWD:インスタグラムが先日、いいね数を非表示にした。ビジネスに支障はあるか?

小林:元々、フォロワー数やいいね数よりも、保存件数やインプレッション数、リーチ数、ハッシュタグからの流入数などを元に運営していたのであまり不便さは感じません。ただインフルエンサーの間でいいねを獲得するために頑張っていた人たちのモチベーションが下がっているのは事実ですね。

WWD:自社運営のメディアはどうマネタイズするつもりか?

小林:現段階では主に広告ですが、今後はD2Cブランドの立ち上げなども視野に入れています。

WWD:今後の計画は?

小林:「足元倶楽部」や「SNS世代」に続くメディアをこれからも増やしていくつもりです。可能性を秘めた若い世代が輝けるインフラを作り続けたいです。