フランスでは、燃料をはじめとする物価高騰への抗議や公共サービス改善を求める市民らと、教育環境の改善を求める高校生や大学生、教員らによる政府への抗議活動が9月ごろから続いている。当初は平和的に行われていたデモ活動だが、SNSなどを通じて連帯が広がり規模が大きくなるにつれ、混乱に乗じて破壊や略奪を行う個人や集団が紛れ込むケースが増えていた。各地で警察が出動するなど緊張が高まっていたところ、10月17日から18日にかけてパリを中心に全国で大規模なデモ活動が行われた。多くの参加者は平和的に行進していたものの、一部で暴動や放火、略奪行為が発生。百貨店やスポーツ用品店、ラグジュアリーブランドなどが被害を受けている。
「セリーヌ」「ディオール」「ルイ・ヴィトン」などが被害に
ラグジュアリーでは、パリ・モンテーニュ通りにある「セリーヌ(CELINE)」を筆頭に、サントノレ通りの「ディオール(DIOR)」、マルセイユの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の店舗などが襲撃され、暴徒らがバッグなどの商品を手に持ち去る姿が確認されたほか、「ロレックス(ROLEX)」の店舗も荒らされている。また「バーバリー(BURBERRY)」「ゴヤール(GOYARD)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ケンゾー(KENZO)」などの店舗も、ショーウインドーが割られるなどの被害を受けた。
百貨店では、ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)がパリ、シャンベリー、ナント、ペルピニャン、レンヌ、トゥール、ボルドーの各都市で店舗への侵入が発生。BHVも高級時計などが略奪されている。そのほか、デカトロン(DECATHOLON)やインタースポーツ(INTERSPORT)などのスポーツ用品店、ビューティ小売大手のセフォラ(SEPHORA)、アップル(APPLE)などが被害に遭ったという。
19日の時点で営業を再開している店舗もあるが、臨時休業も多いようだ。パリなど複数の都市では、安全のため夜間外出禁止令が出された。またパリのルーヴル美術館(Louvre Museum)は、一部の学生による封鎖が続き開館できない状態となっている。
「無軌道な暴力行為はどのような理由でも正当化されない」とマクロン仏大統領
こうした事態を受け、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領は18日、国民への演説で「秩序の回復と沈静化」を呼びかけ、抗議の参加者に対して「事態をエスカレートさせない」ことを要求。「私たち全員が怒りと屈辱を感じている」とし、「デモ参加者の正当な要求」と「破壊や略奪を行った者」を区別しなければならないと強調しつつ、「無軌道な暴力行為はどのような理由でも正当化されない。そうした行為をした者には、断固たる態度で裁きを受けさせる」と述べた。
フランス全土で3000以上の事業者に影響
フランス商業・小売連盟(FCD)の会長を務めるアレクサンドル・ボンパール(Alexandre Bompard)=カルフール最高経営責任者は、「損害の規模を正確に見積もるには時期尚早」としつつも「小売セクター全体で数百万ユーロに上る可能性がある」と警告した。FCDによる19日の発表では、全国で3000以上の事業者が影響を受けており、今後さらに増える見込みという。
イタリアやベルギーでも暴徒が略奪行為
欧州の他国でも、フランスと同様に物価対策や教育環境の改善を求めるデモ活動が相次いでいる。イタリア、ベルギー、ポルトガルでも一部の参加者が暴徒化したり、略奪を狙う集団などが紛れ込んだりして政府が対応に追われている。
イタリアのミラノでは17日、スニーカー小売大手フットロッカー(FOOT LOCKER)から商品が略奪されたほか、「ステューシー(STUSSY)」と「アークテリクス(ARC'TERYX)」のショーウインドーが割られたという。現時点では「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のビューティとアクセサリーに特化したブティックを除き、ラグジュアリーブランドの被害は報じられていないが、19日には「エルメス(HERMES)」と「シャネル(CHANEL)」が午後の早い時間から臨時休業としたようだ。