舟山瑛美デザイナーが手掛ける「フェティコ(FETICO)」は7月16日、2027年春夏コレクションをランウエイ形式で発表した。会場は、東京・大久保の淀橋教会。神聖な空気が漂う大空間に、幾何学模様の三角窓やアーチ状の高い天井といったモダンな建築美が共存する。中央にはダンスフロアを思わせる大きな正方形のランウエイを設置し、モデルはその対角線上を歩いた。パンプスのキトゥンヒールが床を打つ音が、静謐な会場に響き渡る。
今シーズンの出発点となったのは、シアー素材とドレープとの出合いだ。緩やかで柔らかく、それでいてセンシュアルで女性らしい。その特性を探求する中で、舟山デザイナーはフランスの写真家サラ・ムーン(Sarah Moon)の作品に見られる、ぼかしの表現や神秘性、曖昧な美しさに着目した。また、パリの蚤の市で目にしたアンティークガラスやレースカーテン、古い壁紙、刺しゅう糸などにも着想を得て、色褪せや摩擦、歪みによって生まれた陰影やダメージを落とし込んだ。
ファーストルックは、幾重にも重なるドレープが特徴的なトップス。紫がかったグレイッシュなシアー素材を白いキャミソールに重ね、見る角度によって陰影や表情が変化する。フェティッシュでありながら軽やかな透明感が今シーズンの象徴となった。続いて登場した同素材のドレスも、白いブラトップやペチコートのようなスカートとのレイヤードによって、繊細さとドラマチックな存在感を両立させた。
ニットのキャミソールドレスには、着用時の伸縮による柄の変化を生かし、全面に花柄をプリント。さらにプリーツを加えることで、輪郭や模様を曖昧に見せている。透け感のある尾州ウールを用いたジャケットは、黒とベージュなど表裏の色をあえて重ねることで、奥行きのある陰影を演出。デニムはプリントを施した上から加工を加え、長い年月を経たような褪せた表情に仕上げている。体のラインや色の境界を意図的にぼかし、見る角度によって表情を変化させる今シーズンは、そうしたアプローチがセンシュアルなムードの中に、春夏らしい涼しさと軽やかさをもたらしていた。
日常に溶け込むテーラリングと新たなドレス
今シーズンは、ブランドの輪郭をさらに明確にする新たな“顔”もそろった。前シーズンから定番として提案するテーラードジャケットは、肩周りやラペルを構築的に仕立てる一方、ウエストを絞り、タックやドレープを加えることで柔らかさと女性らしさを引き出した。舟山デザイナーは、「尾州のウールでスーツを仕立てることもブランドの強みの一つ。特別な日だけでなく、カーディガンのような感覚でスタイリングできるジャケットを提案したい」と語る。ここ数シーズンは、東京での発表に先駆けてパリで展示会を開催していて、現地ではジャケットやレースを用いたアイテムが人気を集め、イヴニングドレスへの期待も高まっているという。
ショー後半には、そうした反響に応えるように、存在感のあるドレスが目を引いた。ランジェリーを思わせるソフトで繊細なレースは、ローブ風のドレスやペプラムドレスへと展開。さらに、今シーズンを象徴する十字架のようなカッティングモチーフをフロントに大胆に配したドレスも披露し、新たなステートメントピースに仕上げた。「ドレスはブランドの世界観を表現する1着として、今後、国内外で力を入れていけると考えている」。
バッグには、アイコンモデルの“ザ アーチ(THE ARCH)”に加え、新作の“ザ フレーム(THE FRAME)”が新たに仲間入りした。ベルトやシューズにも用いたフレーム状のバックルを取り入れ、コレクションを横断する新たなデザインコードとして提示する。また、ウエアにも用いたニットと十字架のカッティングを採用したトートバッグも3色で発表。ヘアアクセサリーは、バレッタやヘアクリップのミニサイズが加わった。
ショーのフィナーレは前回同様に、モデルたちが自由に行き交うシーンを演出。街中で「フェティコ」のコレクションはどう映るのか。舟山デザイナーが示す、年齢問わず着られるウエラブルな服のイメージを明確に伝えた。