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プラダ財団が新たな本部を披露

 プラダ財団が5月9日、ミラノ南部のラルゴ・イザルコに新しく建設したアート施設をオープンした。芸術作品の収集や保全活動を通してモダンアートの発展に貢献してきたプラダ財団の新しい本部でもあるこの施設は、1916年に開業した歴史ある蒸留所跡の7棟の建物と、このプロジェクトのために建設した3棟の建物からなる。その面積は約1万9000平方メートルにも及ぶ。これまで「プラダ」のショップも手掛けてきた建築家のレム・コールハースが率いる設計事務所OMAが、7年をかけて完成させた。展示品の管理は、イタリアの芸術史の専門家で批評家、キュレーターとして活動するジェルマーノ・セラントが行う。

 施設を初披露したプレス向けの会見でパトリッツィオ・ベルテッリ=プラダ最高経営責任者(CEO )は、「プラダ財団の設立は、純粋に現代文化が必要とするものを供給するためであり、戦略的な狙いはない。われわれが主導してアーティストの刺激になり、アートの未来を照らしたい」とコメントした。「メード・イン・イタリアの精神は、この国の生産物や映画、デザインといったものを通して発信される。産業・経済都市でもあるミラノのさらなる活性化に貢献したい」と話す。施設への投資額は明かさなかったが、2008年にプロジェクトの始動を発表した際には、2500万ユーロ(約33億2500万円)を投じると話している。

 この施設は、ファッションブランドの「プラダ」とは独立して存在するという。「これまでも、アート展を『プラダ』のショーと同時に開催したことはない。そんなことをしたらアーティストに対して失礼だろう」とベルテッリCEO が説明すると、「プラダ」のデザイナーを務めるミウッチャ・プラダは、「デザイナーに対してもね」と加えた。ちなみに、会見でミウッチャが発言したのはこの時だけだ。長年のビジネスパートナーであり夫婦のベルテッリCEOとミウッチャは、1993年にプラダ財団(設立当初の名はプラダ・ミラノ・アルテ)を設立し、現在も共同理事長を務める。

施設の設計を務めたレム・コールハースは、蒸留所跡のリノベーションにあたり、元の建物の形状を生かすように心掛けたという。新設した"ポディウム"と"シネマ"、そして来年完成する"タワー"と名付けられた塔があり、新旧の融合が特徴的だが、「建物が密接した閉塞的な空間にはしたくなかった。室内と室外、通路や中庭など、さまざまな顔を持つ空間だがそれぞれがごく自然につながっている」と話した。目的に合わせて自在に変化する汎用性の高さもポイントだ。例えば、「ロマン・ポランスキー特集」でデビューする"シネマ"は、オープンシアターにも変身する。

 古典彫刻を集め、"ポディウム"の2階層にわたって展示した企画展"シリアル・クラシック(連続する古典)"をキュレーションした考古学者で芸術史家のサルヴァトーレ・セッティスは、「古典的な美術館にコンテンポラリー・アートが並ぶことならよくあるが、現代的な美術館が古典的なアートを受け入れることはまれ。そういった意味でも新しい施設といえる」とコメントしている。

 開館とともに数々の企画展をスタートしただけでなく、映画監督のウェス・アンダーソンがデザインしたカフェ「バー・ルーチェ」もオープン。今後は、子ども向けの体験型イベントや図書館のオープンも予定している。見どころが詰まったプラダ財団のアート施設は、ミラノの新たなランドマークになりそうだ。

 イタリア文化観光省のダリオ・フランチェスチーニ大臣は、「これはミラノのみならず、イタリア全体にとって重要な施設。プラダ財団からの贈り物といっていいだろう。イタリアは長年、芸術の保全運動に注力してきたが、コンテンポラリー・アートには目を向けていなかった。この施設は伝統と新しいものが共存できることを証明している」とコメントした。また、開催中のミラノ万博や、プラダ財団の革新とデザイン、アート、文化に集中した活動のおかげで、ミラノへの注目はますます高まるだろうと期待を示した。

詳細はWWDジャパン5月18日号に掲載