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伝統の技を基盤にラジカルなイノベーションを 船場が目指す空間作りとは?

国内外の空間作りに関するさまざまな業務をトータルにサポートするのが、1947年創業の船場(せんば)だ。立地の調査・企画・コンサルティングからデザイン・設計、制作・施工まで一貫して行うことができ、国内に8拠点、アジアに5拠点を構える。3月に着任した小田切潤新社長の指揮のもと、強みを生かした事業拡大にアクセルを踏む。

船場は、多くの外資系企業が拠点を構える麻布台ヒルズの半分以上のオフィスの施工を請け負っている。「コロナ禍が収束し、リアルでのコミュニケーションの重要性が見直されている。オフィスのデザイン・施工の需要が非常に伸びている」と小田切潤社長は語る。「オフィス空間が社員同士の交流を促すし、出社したいと思えるオフィスかは、人材の採用にも影響する。そこに投資する企業が急速に増えている」。

デベロッパーである森ビルとは30年来の付き合いだ。「設計・施工の技術力と安心度こそ、船場の強みだ。特に施工においては、技術者の育成を含めて、長年培ってきたノウハウとネットワークを持っている。クオリティーは大手に負けない自信があるが、職人気質でアピール下手な部分が少なからずあった。これからは強みを打ち出し、より積極的に営業活動を行う。オフィスといっても、さまざまだ。物流関連のオフィスやショールーミングスペースなど、幅広く対応している」。

1947年、陳列ケース店として大阪で創業した。店の内外装や売り場作りを手掛けるようになり、事業を拡大。イオングループとは、その前身である岡田屋時代からの付き合いで、国内外のイオンモールを多数手掛けてきた。また、三井不動産のららぽーとも、台湾や福岡、大阪・門真など、リサーチや開発から携わった。2016年に東京証券取引所(スタンダード市場)に上場した。

海外には84年に香港に現地法人を設立。現在、上海、ベトナム、台湾、マレーシア、シンガポールの5カ所に拠点を構える。「海外への出店、設計・施工にはローカルネットワークが欠かせない。特に台湾では35年以上の歴史がある。アジアに進出する日本企業をぜひサポートしたい」。

サステナビリティにも注力する。専任チーム「エシカルイノベーションハブ」がグローバルでリサーチをし、提案・実装までを行う。大阪・関西万博のルクセンブルク館では、施工からパビリオンの建材を会期終了後に神戸のリゾート施設で再利用することまでを実行する。「再利用しやすい素材選びや設計はもちろん、廃材の利用や、今使っている素材や家具を次の空間にも生かすことを提案したりしている」。

5月末には世界的な組織・人事のコンサルティングファーム、マーサージャパンと協業し、グローバル企業のためのワークスペースを再設計するサービスを開始した。マーサージャパンがグローバル基準の調査でワークスタイルの課題を可視化し、それに対する空間的な最適解を船場が企画・設計・施工まで提供する。「店舗や公共施設のノウハウなども生かしながら、その企業と時代性により合う空間を作っていく」。

24年12月期の売上高は前期比16.4%の289億円と好調だった。27年12月期で400億円を目標に掲げる。目下注力しているのが、オフィスとラグジュアリー空間だ。それぞれ専門チームを設けて、事業を強化している。

シナジーを見込める企業のM&Aも視野に、まずは年商1000億円を目指す。「国内の内装市場は約1.8兆円で、前年は約12%伸びており、市場の3〜4%のシェアを獲得できれば、十分に可能な数字だ。今売上高の15%程度の海外事業も伸ばしていく」。

小田切社長は新卒で広告代理店に入り、丸紅、アクセンチュアを経て、オンワードホールディングスで戦略企画室長を務めた。「クリエイティブとビジネスをどう融合するかは、経営者として私自身のテーマでもある。安定性と信頼を基盤に、ラジカルなイノベーションを引き起こす」と未来を見据える。

問い合わせ先
船場
03-6865-1008