小田切潤(おだぎり・じゅん)/船場社長:広告代理店でアパレル・ラグジュアリーブランド・コスメ等の担当後、丸紅に入社しライフスタイル部門や財務部在籍中、ニューヨーク駐在中にM&A、経営企画・管理業務に従事。その後アクセンチュア戦略チームのプリンシパルディレクター、オンワードホールディングスの執行役員・戦略企画室長としてウィゴーの買収、同社取締役を兼務。2024年11月から船場に参画。一橋大院卒、HEC Paris経営大学院卒、ハーバードビジネススクールGlobal Strategic Management Program修了。尊敬する経営者は川久保玲 PHOTO : KAZUO YOSHIDA
三井住友DSアセットマネジメントオフィス(虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー)。
「社会・顧客・社員の Quality of Lifeへの貢献」を新オフィスのコンセプトに掲げた、三井住友フィナンシャルグループ傘下の資産運用会社、三井住友DSアセットマネジメントの移転プロジェクトの制作・施工を担当。「資源の循環利用による環境への配慮」「生産性を高め、アイデアの創発を促すオフィス空間づくり」「多様な働き方と健康への配慮」をオフィス設計の狙いとした高難易度のデザインを、高いクオリティーで実現した(竣工年:2020年 担当業務:制作・施工)
コクヨTHE CAMPUS「CREATION PLACE “BOXX”」樹脂ダンゴテーブル。
家具や文具を製造・販売するコクヨのオフィスを横断する12mのビッグテーブルを制作。エシカルデザインの発想から、商品製造過程で大量に排出される樹脂のかたまり「樹脂ダンゴ」を使い、カラフルで表情豊かな天板を企画・制作した。コクヨがイベントやサステナブル活動、ワークショップなどを行う場として新設した共創スペース「CREATION PLACE “BOXX”」に設置し、循環型社会やサステナビリティに対する社員の意識向上を目指した(竣工年:2024年 担当業務:家具什器デザイン・制作)
イオンモール ミエンチェイ(カンボジア・プノンペン)。
ショッピングモール「イオンモール ミエンチェイ」の初期の企画段階から設計、内装監理までを担当。地域に根ざすことを目標に、プノンペンの山の稜線を連想させる、スタジアムベンチ状のシーティグスペースを吹き抜け空間に沿って設置しつつ、カンボジア最大級の多様な大型ビジョンを設置し、カンボジアの文化と最新テクノロジーを融合させたデザインで注目を集めた。施設全体が大きなイベント環境にもなるように設計した(竣工年:2022年 担当業務:マスタープラン、内外装環境デザイン、設計、現場デザインコーディネート、内装監理)
YAMAHA MOTOR Regenerative Lab。
ヤマハ発動機の共創スペース。同社製品の製造・輸送過程で 発生した廃棄物や廃材などをアップサイクルして家具や什器などを制作(竣工年:2024年 担当業務:内装設計・施工、造作什器設計・施工、アートワーク企画および展示、ロゴデザイン・サイン制作) PHOTO : KATSUHIRO AOKI
三井化学 共創空間「Creation Palette YAE®」。
三井化学が東京ミッドタウン八重洲にある本社内に開設した共創空間。滑らかな曲線で構成される高難易度のデザインを、高いクオリティーで再現(竣工年:2024年 担当業務:実施設計助成、制作・施工)
福岡空港国際線ターミナルビル。
「福岡空港国際線ターミナルビル等増改築工事」において、福岡の代表的な光景をモチーフに、賑やかで印象的な空間を創出。ダイナミックなデザインで、世界各地から訪れる多くの人の記憶に残る空港に(竣工年:2025年 担当業務:共通環境デザイン、制作・施工) PHOTO : ©NAKASA & PARTNERS INC. FUTA MORIISHI
KITTE大阪。
JR大阪駅直結「JPタワー大阪」内の商業施設。施設全体のコンセプトであるUNKNOWN(アンノウン)のコンセプトに基づき、まだ知らない、まだ体験したことのないものを集め、日本の良さを発見し、再認識できる場を企画(竣工年:2024年 担当業務:商業コンサルティング、共通環境デザイン、ネーミング、ロゴ制作、内装監理) PHOTO : KAFKA PHOTOGRAPH TOMOKAZU TSUKADA
長崎スタジアムシティ。
ジャパネットホールディングスが手掛ける、スタジアムを核とした複合施設。共通サイン計画、商業エリアの共通環境とフードホールのデザイン、内装監理業務を担当(竣工年:2024年 担当業務:内装デザイン・設計) PHOTO : ©NAKASA & PARTNERS INC. FUTA MORIISHI
THE ROYAL ベトナム ホーチミン店。
ROYAL SOJITZ VIETNAMが、ホーチミンでベトナム1号店となる洋食店を開店。ロイヤルホストの元祖「THE ROYAL」を再現すると共に、南国の雰囲気も味わえる空間に(竣工年:2025年 担当業務:内装デザイン・設計、制作・施工)
国内外の空間作りに関するさまざまな業務をトータルにサポートするのが、1947年創業の船場(せんば)だ。立地の調査・企画・コンサルティングからデザイン・設計、制作・施工まで一貫して行うことができ、国内に8拠点、アジアに5拠点を構える。3月に着任した小田切潤新社長の指揮のもと、強みを生かした事業拡大にアクセルを踏む。
船場は、多くの外資系企業が拠点を構える麻布台ヒルズの半分以上のオフィスの施工を請け負っている。「コロナ禍が収束し、リアルでのコミュニケーションの重要性が見直されている。オフィスのデザイン・施工の需要が非常に伸びている」と小田切潤社長は語る。「オフィス空間が社員同士の交流を促すし、出社したいと思えるオフィスかは、人材の採用にも影響する。そこに投資する企業が急速に増えている」。
デベロッパーである森ビルとは30年来の付き合いだ。「設計・施工の技術力と安心度こそ、船場の強みだ。特に施工においては、技術者の育成を含めて、長年培ってきたノウハウとネットワークを持っている。クオリティーは大手に負けない自信があるが、職人気質でアピール下手な部分が少なからずあった。これからは強みを打ち出し、より積極的に営業活動を行う。オフィスといっても、さまざまだ。物流関連のオフィスやショールーミングスペースなど、幅広く対応している」。
1947年、陳列ケース店として大阪で創業した。店の内外装や売り場作りを手掛けるようになり、事業を拡大。イオングループとは、その前身である岡田屋時代からの付き合いで、国内外のイオンモールを多数手掛けてきた。また、三井不動産のららぽーとも、台湾や福岡、大阪・門真など、リサーチや開発から携わった。2016年に東京証券取引所(スタンダード市場)に上場した。
海外には84年に香港に現地法人を設立。現在、上海、ベトナム、台湾、マレーシア、シンガポールの5カ所に拠点を構える。「海外への出店、設計・施工にはローカルネットワークが欠かせない。特に台湾では35年以上の歴史がある。アジアに進出する日本企業をぜひサポートしたい」。
サステナビリティにも注力する。専任チーム「エシカルイノベーションハブ」がグローバルでリサーチをし、提案・実装までを行う。大阪・関西万博のルクセンブルク館では、施工からパビリオンの建材を会期終了後に神戸のリゾート施設で再利用することまでを実行する。「再利用しやすい素材選びや設計はもちろん、廃材の利用や、今使っている素材や家具を次の空間にも生かすことを提案したりしている」。
5月末には世界的な組織・人事のコンサルティングファーム、マーサージャパンと協業し、グローバル企業のためのワークスペースを再設計するサービスを開始した。マーサージャパンがグローバル基準の調査でワークスタイルの課題を可視化し、それに対する空間的な最適解を船場が企画・設計・施工まで提供する。「店舗や公共施設のノウハウなども生かしながら、その企業と時代性により合う空間を作っていく」。
24年12月期の売上高は前期比16.4%の289億円と好調だった。27年12月期で400億円を目標に掲げる。目下注力しているのが、オフィスとラグジュアリー空間だ。それぞれ専門チームを設けて、事業を強化している。
シナジーを見込める企業のM&Aも視野に、まずは年商1000億円を目指す。「国内の内装市場は約1.8兆円で、前年は約12%伸びており、市場の3〜4%のシェアを獲得できれば、十分に可能な数字だ。今売上高の15%程度の海外事業も伸ばしていく」。
小田切社長は新卒で広告代理店に入り、丸紅、アクセンチュアを経て、オンワードホールディングスで戦略企画室長を務めた。「クリエイティブとビジネスをどう融合するかは、経営者として私自身のテーマでもある。安定性と信頼を基盤に、ラジカルなイノベーションを引き起こす」と未来を見据える。
問い合わせ先
船場
03-6865-1008