大学卒業後、ウォルトディズニージャパン、アディダスジャパン、日本トイザらス、バートンジャパンなどを経て、2020年にヘインズブランズジャパンに入社。22年より現職。
1919年に創業したスポーツウエアの草分け的存在であり、アメリカンカジュアルを象徴するブランドである「チャンピオン(CHAMPION)」。同ブランドは近年、古着市場でのビンテージアイテムの高騰や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「シュプリーム(SUPREME)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」をはじめとする数々のブランドとのコラボレーションなどによって、今まで以上に存在感を高めている。それを裏付けるように「チャンピオン」は日本において、2024年度、前年から2ケタ成長を記録した。同ブランドが好調な理由はどこにあるのか。また昨年「チャンピオン」を買収したオーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP)(以下、オーセンティック)との関係性はどのようなものなのか。日本で「チャンピオン」ブランドの事業を展開するヘインズブランズ ジャパン(HANES BRANDS JAPAN)の及川洋一社長に、ブランドの現在地と、これからの展望を聞いた。
世界最大級のIP企業との連携強化

「チャンピオン」は、24年、1989年から同ブランドを管理していたヘインズブランズ(HANES BRANDS)からオーセンティック社への譲渡を経て、新たな体制に生まれ変わった。同社は、「リーボック(REEBOK)」「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」など50以上のブランドを傘下に持ち、グループ全体の売上高は320億ドル(4兆6150億円)に及ぶ世界有数の知的財産管理企業だ。
「オーセンティック社は、単にブランドを保有するだけではなく、ブランド同士、ブランドとエンタメ、カルチャーとの“接続力”に長けている。我々『チャンピオン』にとっても、新しいパートナーシップの可能性を広げうる存在」と及川社長は語る。前述の通り、日本国内においては引き続きヘインズブランズジャパンが、同社とのライセンス契約に基づいてブランドを運営する。オーセンティック社が23年に設立し、ジェフリー・ダゲット(Jeffery Daggett)=日本地区シニアバイスプレジデントおよびケビン・サルター(Kevin Salter)=アジア太平洋地区シニアバイスプレジデントらが常駐する日本法人とは日常的に協議を行い、スピード感をもってグローバルと連携できる環境が整っている。
価値観でつながるコラボレーション
ボディ提供ブランドから共創者へ
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アスレチックウエアとしてのアイデンティティーが根幹にある「チャンピオン」だが、近年は、さまざまな施策を通じてライフスタイルウエアとしての側面もより強化している。ここ数シーズン、パリ・ファッション・ウイーク中にヨーロッパの「チャンピオン」チームと共同で実施している展示会もその一つ。国内外で実現してきた印象的なコラボレーションは、そんな中で自然に生まれてきたものも多い。
昨年、発表と同時に大きな話題となった「アンダーカバー」とのカプセルコレクションは、上述の展示会がきっかけとなり形になった。「『アンダーカバー』の高橋盾さんは、元々『チャンピオン』のビンテージアイテムに深い愛着を持たれていた。このような自然な関心の積み重ねが、パリでの展示会での対話となり、コラボレーションという形に育った」。この「オーガニックな繋がり」こそ、他社との協業において「チャンピオン」が大事にする哲学。単なる話題づくりや近視眼的な企画ではなく、互いの思想やこだわりが交差し、“1+1が2を超える”化学反応を目指す。
またブランドとの協業とは別に、アーティストや若手クリエイターとの「クリエイターズ・コラボレーション」も多数進行中だ。「チャンピオン」は創業当初から、多くのアーティストやデザイナーに無地のスエットやTシャツを“キャンバス”として提供してきた。このDNAは今も色濃く受け継がれており「鋭い感性を持つクリエイターの方々と、新しい何かを作っていく。そういった自由で柔軟な姿勢も、我々の強み」と及川社長は語る。
「本物」にこだわる
日本チームの挑戦
ブランドの価値を語る上で及川社長が強調したキーワードは「オーセンティシティー=本物志向」だ。例えば"MADE IN USA" というコレクションは、その名の通りアメリカ国内で作られている日本企画のもの。米国企画のプロダクトは、既に製造拠点を他国に移しているため、これは米国内で作られている唯一の「チャンピオン」製品ということになる。「“キング・オブ・スエットシャツ”と称されるブランドが築いてきた信頼を守る」という信念のもと、製造コストや流通効率の面から見れば非効率とも言えるこのような選択をあえて続け、「本物」にこだわる。また100年以上の歴史の中でリリースしてきたアーカイブアイテムを研究し、素材やデザインを忠実に再現したスペシャルライン「トゥルー・トゥー・アーカイブス」も、その信念を表現したもの。1930年代に特許を取得した「リバースウィーブ」のファーストモデルの復刻をはじめ、ビンテージの「チャンピオン」ファンもうならせるクオリティーを誇るアイテムの数々は、即完品も出るなど高い評価と人気を集めた。
その思いはプロモーション面にも反映されており、様々な分野で活躍する18名を起用し、それぞれが「チャンピオン」のスエット商品への愛を語る「I Love Sweats」というキャンペーンや、ラップグループ、スチャダラパーがブランドの歴史や背景をラップで表現した楽曲「キング・オブ・スエット」は、業界内外からも大きな反響があった。今後も、このような特色あるキャンペーンを通して、ブランドの資産である「オーセンティシティー」やブランド価値をアピールしていく。
成長を続けるための
戦略的なチャネル展開
最後に、今後のビジネスの展望について聞くと「単年で2ケタ成長を達成した昨年度に比べて曲線はゆるやかになるかもしれないが、今後数年で再び2ケタ成長を目指す。そのためには、お客さまとつながり、意見に耳を傾けることが第一。各地のパートナーとの協力で、私たちだけではリーチできないお客様にもアピールできる卸売りはもちろん、さらなる成長のドライバーとして直営店舗とデジタルチャネルを改めて強化していく」と語った。
現在、全国に53店舗ある直営店は、顧客がブランドの世界観をリアルに体感できる場所。各地の直営店では顧客のエンゲージメントを高めるために、販売だけでなく体験型のイベントを実施する。また「デジタルファースト」の戦略を掲げ、自社サイトでの販売だけでなく、オンライン上でのキャンペーンやプロモーション、商品情報の発信にも注力していく。
誰もが知るブランドであり、今再び「本物」としての価値が注目される「チャンピオン」。遊び心と柔軟性のあるプロダクトやキャンペーン、そして革新性のあるコラボレーションを通じてブランドの「歴史」や「ストーリー」を消費者に丁寧に伝え、今後も成長を目指す。
チャンピオン カスタマーセンター
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