サステナビリティ

ファーストリテイリング、“サステナブル素材”の自社基準策定 まずは綿で25年8月までに

ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」などを運営するファーストリテイリングは、 “サステナブル素材”の自社基準を策定する。これまでは、「原料調達基準」として温室効果ガス(GHG)排出量指標は業界データベースを参照し、重要素材は個別目標を設定するも環境指標の定量基準は設けていなかった。新定義では、「GHG排出量」「水使用量」「生物多様性」「人権」「動物愛護」の5項目で自社基準を順次策定する。自社基準を土台にして、第三者認証も運用団体と意見を交わしながら活用していく。

同社は、2030年8月期までに全使用素材の約50%を、リサイクル素材など GHG排出量の少ない素材に切り替えることを掲げている。23年は商品全体で8.5%、24年は同18.2%とその比率を高めているものの、目標達成までにはへだたりがある。「グローバルで業界全体としての“サステナブル素材”の基準がない。それゆえ、使える素材はリサイクルポリエステルが中心で、選択肢が限られている」と、同社でサプライチェーンのサステナビリティ分野を担う新田幸弘グループ執行役員。“サステナブル素材”の基準や定義を自社やパートナーであるサプライヤー、工場などとの取り組みの中で具体的に定め、「持続可能な調達を高水準で実現する」。

自社基準の策定はまず綿で先行し、25年8月期に自社基準策定を終え、26年8月期から基準を適用。環境負荷を検証する材料として個別の環境負荷測定データ(LCA)も参考情報として活用するほか、環境再生型(リジェネラティブ)コットンを新たにサステナブル素材に組み込む。その他の素材についても、順次基準を定めていく。

なお、GHG排出量(スコープ1,2)については、2030年8月期までに19年8月期に対し90%を、取り組み先工場などサプライチェーン領域でのGHG排出量(スコープ3)については20%を削減すると掲げており、23年8月期は前者が69.4%削減、後者が10%削減を達成している。

先行してきたトレーサビリティーの強化

ファーストリテイリングでは17年以降、縫製工場や素材工場を集約して情報公開し、サプライチェーンの可視化を進めてきた。素材工場よりもさらに上流の紡績工場までさかのぼっての監査も、綿から始まって、ウール・カシミヤへと広げている。「カシミヤは全商品の工場・牧場を把握済みで、ウールでも同様の枠組みを進めている」このように、トレーサビリティーを強化してきたからこそあらゆる情報が可視化し、“サステナブル素材”の自社基準が策定できる。また、背景には各国で強まるサステナビリティ関連の法規制がある。環境保護関連の法規制では欧州が先行するが、欧州で決まったことを受け入れるだけでなく、ルール作りに主体的に携わっていくことにもつながる。「法規制はむしろビジネスチャンスととらえている。自社基準が評価されれば、業界内に広めることもある」という。

ファーストリテイリングは、11月13日に今年で4回目となるサステナビリティ方針説明会を開催。“サステナブル素材”の自社基準策定のほか、01年以降継続してきた難民支援やリサイクル活動、古着販売など同社が取り組む多様な活動を紹介すると共に、17年にスタートした“有明プロジェクト”における「無駄なものを作らない、運ばない、売らない」仕組み作りなどを紹介した。「(サステナビリティ実現のため)多岐にわたって活動してきたが、それがお客さまに適切に伝えられているかと言えばまだまだ。商品も本当にお客さまの役に立つものならヒットするように、本当に世の中の役に立つ活動は世の中に広がっていく。やるべきことを誠実に続けていく」と柳井康治 取締役グループ上席執行役員は話した。

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