ファッション

ハシモト産業がVR展示会で皮革業界の新たな扉を開く

  皮革販売・加工のハシモト産業(大阪府大阪市、橋本信一社長)は11月15日〜2022年2月28日、2回目となるバーチャル(VR)展示会を、自社ホームページ内の特設サイトで開催する。昨年、コロナ禍で自粛を余儀なくされた展示会の代わりに顧客との新たなコミュニケーションの場として企画。皮革業界では初めての試みだったが、海外からのアクセスも増え、結果的に国内外での認知拡大に成功した。時代の先駆けとして、新たな業界のスタンダードに挑む。

国内屈指のタンナーと
共に作り上げる
上質な皮革を販売

 ハシモト産業は1968年に橋本現社長の父親が革紐メーカーとして創業した。革紐を製作するために、革素材からオリジナルで開発している。40種類以上の革素材をそろえ、各10色前後、多いものは80色超のカラーバリエーションを展開する。橋本社長は「うちは“皮革業界一”ハードルが低い。革を知らない人にこそ革の良さを知ってもらいたい。全ての革を一からご説明させていただく」と言い、個人から同業者まで革1枚から販売する。

 国内有数のタンナーと共同で行う素材開発にも積極的だ。橋本社長は「革紐製作で培った技術があるからこそ、タンナー(皮革製造工場)に作り手の視点から革の利点や欠点を理解した要望ができ、より良い素材開発ができる」と話す。革紐を作るためには、革を漉く、切る、つなぐなどのさまざまな工程が発生するが、 ハシモト産業では、中に芯を通した細さ1mmの革紐まで作れる。そのときの革の厚さは0.25mmと毛穴が透き通るほど薄い。天然素材である革を一定の厚さで漉くには高度な技術が必要なのはもちろん、より吟味された素材を扱う必要もある。タンナーへの要求は高くなるが、一歩踏み込んだ素材提案は、ハシモト産業ならではの強みとなった。

 ハシモト産業は15年ほど前に、業界では比較的早めにインターネット通販事業に取り組み始めた。個体差のある天然素材をECで販売するのは難しいが、「コロナ禍をきっかけに皮革業界全体にとってもデジタル化は避けては通れないものになった」と橋本社長。そこで 昨年、業界に先駆けてVR展示会をスタートした。イベントスペースに会場を設営し、Mat terportで3Dパノラマ動画を撮影することで、展示空間のリアルでスムーズなウオークスルー体験を実現。国内外から好評を得たものの改善点も見えた。今回は新たに購入機能を設け、動画の質も向上させる。「お客さまの利便性が一番大事。どうしたらお客さんが革を買いやすいか、その利便性を提供し続ける」と、皮革産業の発展に尽力する。

ハシモト産業の革を手掛ける
国内タンナーの魅力

 「栃木レザー」は、昔ながらのピット鞣しを用いて、最も素材に優しい加工を行うタンナー。石灰漬けによる毛抜きに1週間、50枚の皮をプール槽につけて鞣すのに1カ月、さらに乾燥に2週間かけるという。このように長い時間をかけながら作られた革は、独自の色艶や色合いを発し、繊維層が傷んでいないため形崩れしにくいのが特徴だ。

 「新喜皮革」は“革のダイヤモンド”と呼ばれるコードバンを鞣しから仕上げまで、日本で唯一、一貫生産する世界屈指のタンナー。高級バッグや革靴に使われるコードバンは非常にキメが細かく、扱うには技術力を要するが、60年以上にわたって積み上げた技術と最新鋭の設備を用いて、 上質なコードバンを生産する。

 「キモトレザーワークス」柔軟性と耐熱性の高い革を作れるクロム鞣しを用い、主に靴用の革を扱う。原皮を仕入れ、下鞣しを自社で行っているため、革を細部までコントロールできる。そのため、キモト製の革はオリジナル性とクオリティーの高さが伴っているのが特徴。

EDIT&TEXT:YUKI KOIKE
問い合わせ先
ハシモト産業
06-6771-6911