ビューティ
連載 海外ビューティ通信

化粧品から食品、トイレットペーパーまで サブスクでSDGsな日用品を販売する急成長中D2Cブランド「パブリック・グッズ」 海外ビューティ通信ニューヨーク編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」ではパリやニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。(本文中の円換算レート:1ドル=104円)

 新型コロナウイルスによって、2020年はニューヨーカーの暮らしぶりも激変した。物を大量に消費するより、SDGs(国連サミットで採択された持続可能な開発目標)に沿ったサステナブルな暮らしにシフトしている。バイデン次期大統領の得票に大きな力となったのがZ世代(1990年代中盤から2010年代中盤までに生まれた世代)といわれているが、彼らはサステナブルで、ノントキシック(毒性のない)、オーガニックな商品を好む世代だ。今や企業の商品開発においてSDGs へのコミットは欠かせず、ちまたには“サステナブル”をうたう商品が溢れている。

 その中で注目したいのが、D2Cブランドの「パブリック・グッズ(PUBLIC GOODS)」だ。16年に創業し、17年にはクラウドファンディングサイト「キックスターター(KICKSTARTER)」で68万6748ドル(約7142万円)を資金調達。ハウスホールド(家庭用品)とパーソナルケア(個人のグルーミング用品)商品から出発したブランドだが、19年には食品にもカテゴリーを広げ再びクラウドファンディングで41万6676ドル(約4333万円)を調達し事業を拡大した。

 特徴は、コストコ(COSTCO)のように59ドル(約6100円)の年会費を払った会員だけが商品を購入できるサブスクリプション(定額制)型のサービスである点だ。モーガン・ハーシュ(Morgan Hirsch)創業者は、故郷モントリオールで家業の皮革製造業にかかわったときに、商品が消費者に届くまでにいかに余計な中間コストがかかっているかを見て、商品を直接消費者に販売するD2C (Direst to Consumer)ビジネスを考えたという。そして良質でエコ、ミニマルな商品を打ち出そうとマイク・ファーチャック(Michael Ferchak)COOと共同で「パブリック・グッズ」を創設した。

商品数は250点以上、食品はオーガニック&フェアトレードが基本

 安定的な売り上げを見込めるサブスクにすることで、エコ商品は高いというイメージに反し、リーズナブルな価格でサステナブルな生活用品を販売している。公式サイトでは、「地球を守るためにスーパーヒーローになる必要はない。私たちの小さな選択が大きなインパクトをもたらす」「私たちが直面している問題は、使うことを選んだ商品による結果だ」などのメッセージを発信している。20年2月以降、新型コロナウイルスの影響もあり会員数は2倍に、売り上げは5倍に急増したという。

 圧巻なのは商品のラインアップで、取り扱う商品は250点に達する。ヘア&ボディー用品はパラベンや硫酸塩などの有害な化学物質を含まず、シャンプー(4.5ドル、約460円)、コンディショナー(4.5ドル)からボディーウォッシュ(4.5ドル)、ボディーローション(4.5ドル)、モイスチャライザー(4ドル、約410円)まで基本的なケア商品をそろえ詰め替え用のレフィルも豊富に用意する。エッセンシャルオイルはアロガンオイル(9.25ドル、約960円)、ティーツリーオイル(7.75ドル、約800円)など6種類がある。紙製品はトイレットペーパー(6個で6ドル、約620円)やキッチンペーパー(2個で6.5ドル、約670円)、ティッシュペーパー、さらには生理用ナプキンなどがあり、再生紙や竹を使用したツリーフリー(木から採取されるのではない)紙でできている。

 食品はオーガニック&フェアトレードを基本とし、小麦粉からパスタ、調味料、オイル、スープ、缶詰、スナックまでパントリーに必要なものを用意。エキストラバージンオリーブオイル(9ドル、約930円)、コーヒー豆(6.5ドル、約900円)、パスタ(5ドル、約520円)などを手ごろな値段で提供している。ビタミンなどのサプリメントやペット用品なども扱い全米に配送可能なため、ワンストップ・ショッピング(さまざまな商品を1カ所で買い求めること)としても便利だ。インテリアの邪魔にならないミニマルなデザインも人気の秘密だ。

 17年に、同じくエコフレンドリーな商品を低価格で提供するECスタートアップ「ブランドレス(BRANDLESS)」がソフトバンクの出資を受けて立ちあがったが、こちらは資金繰りが続かず20年2月に廃業となった。全商品3ドル(約310円)の低価格戦略の失敗と、ポップアップストアなどに投資を行ったわりに売り上げが上がらなかったことが要因といわれている。コロナ時代のオンラインデリバリー特需の恩恵にあずかれなかったのもタイミングが悪かったのだろう。

 「パブリック・グッズ」は全米に展開する大手ドラッグストアチェーン「CVS」と提携し、今年から一部店舗でテスト販売している。ECよりも実店舗で購入する方が高くなり、5.25ドル(約540円)のフェイシャルクレンザーは、「CVS」では8ドル(約830円)で販売する。手ごろに“SDGsな暮らし”を送るための手段として、「D2C×サブスク」でビジネスを展開する「パブリック・グッズ」の今後の成長に注目したい。

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