ファッション

ベンベルグ裏地ミュージアム+で干場義雅が語る、服選びの流儀


 旭化成の「ベンベルグ」は、綿糸としては使用されないコットンの種の周りに生える産毛(コットンリンター)を独自の技術で精製・溶解し再生繊維として生まれ変わらせた、キュプラのブランドだ。日本では1931年に生産が開始され、世界的なファッションブランドの裏地素材に選ばれてきた。そんな「ベンベルグ」の歴史と機能性を体感できる「ベンベルグ裏地ミュージアム+(プラス)」をファッションディレクターの干場義雅氏が訪れた。「素材の理解がセンスや着こなしにつながる」——ファッションをこよなく愛する干場氏が「ベンベルグ」の魅力を探る。


 「ベンベルグ」の歴史は、化学繊維が開発されたばかりの19世紀後半のドイツにさかのぼる。旭化成はJ.P.ベンベルグ社が開発したその技術を1928年に導入し、日本で初めての生産に成功した。31年には宮崎県延岡市にベンベルグ工場を建設して操業を開始。心地よさとシルクのような上質さが愛され、60年代以降にはジャケットやコートなどの裏地として浸透した。70年代からはインドを中心にサリーなどの伝統衣装としても人気を博している。その後も表地やインナー、スポーツ、ホームテキスタイルの分野に展開をするなど、時代のニーズに柔軟に対応しながら進化を続けてきた。高い技術が必要な「ベンベルグ」を生産しているのは現在、世界中で旭化成のみ。国内ブランドだけでなく、高級スーツの代名詞的存在である「キートン(KITON)」などの一流ブランドやデザイナーからも厚く支持されている。

20年前に仕立てたスーツの裏地は
「ベンベルグ」だった!

 この日、干場氏が着ていたのは約20年前にオーダーし今も愛用するスーツ。その裏地には、「ベンベルグ」が使われていた。「しなやかで快適な着心地は歳月を経ても変わらないですね」と干場氏。森遥香アナウンサーと、ナビゲーターに前田舞子・旭化成繊維マーケティング室アソシエイトチーフコーディネーターを迎え、メンズファッションに精通する干場氏でさえも知らない裏地の世界に足を踏み入れた。

ベンベルグ裏地ミュージアム+に
潜入

 人間の体からは一日に600ccの汗が気体として放出されており、それがムレの原因とされている。ミュージアムでは、ポリエステル裏地と「ベンベルグ」裏地を密閉した容器に入れて、水蒸気を発生させる模型を見ることができる。水蒸気を発生させたそれぞれの容器を比べると、ポリエステルの裏地はしばらく経っても曇っていて湿気がこもっている印象。「ベンベルグ」はというと、すぐに蒸気が目には見えなくなっていた。「ベンベルグ」は、湿気を吸い取りはき出すことで、ムレやベタつきを抑える機能を持つ。次に二人はジャケットの試着を体験した。用意されていたのは、ポリエステル裏地がついたジャケットと「ベンベルグ」裏地がついたジャケット。見た目だけでは判断が難しい同型のジャケットも、腕を通すと「あれ?分かったかもしれない!」と声をそろえた。「ベンベルグ」は繊維の表面が滑らかなため摩擦が生じにくく、スムーズな体の動きをかなえる。

素材を知ることが
おしゃれを作る

 裏地という表からは見えない素材に、多くの機能と快適さが詰まっていたことを実感した干場氏。また、「ベンベルグ」が天然由来繊維であり、土に埋めると生分解されるサステナブルな繊維であることにも感嘆の声を上げていた。「素材が一番大事。素材の理解がセンスや着こなしにつながる。ぜひ『ベンベルグ』の着心地を体感してみてほしい」——と締めくくった。

ベンベルグ裏地ミュージアム+の見学は、アパレル・小売・流通などの業界関係者に向けて予約制にて公開しております。一般のお客様はご来場いただけませんのでご了承ください

MOVIE DIRECTON:NORICHIKA INOUE
MOVIE & PHOTOS:SHINJI YAGI
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU

問い合わせ先
旭化成パフォーマンスプロダクツ事業本部
ベンベルグ事業部ライニング営業部
03-6699-3805