「フミカ_ウチダ」2016-17年秋冬
「フミカ_ウチダ(FUMIKA_UCHIDA)」は、東京・中目黒の人気ビンテージショップ、ジャンティーク(JANTIQUES)のバイヤーを経た内田文郁によるブランドだ。芸能人やスタイリストからの支持が高く、SNS上でも熱狂的なファンが多い。商品に出会えるのはビオトープやトゥモローランドなど約25店舗の卸先の入荷直後。どの店舗も商品は早々に店頭から消えていく。
きっかけは「ジャンティーク」オリジナルのデニム
WWDジャパン(以下、WWD):ブランド立ち上げた経緯は?
内田文郁「フミカ_ウチダ」デザイナー(以下、内田):ブランドを始める1年前まで、「一生、ビンテージの仕事をするだろう」と思っていました。きっかけはジャンティークでオリジナルデニムを作ったこと。店頭ではいていたら、お客さんが「欲しい」と言って購入してくださった。他人が作った一点モノを販売していたなかで、自分が作ったモノを買ってもらえることが素直にうれしかった。服飾学校に通ったこともなく、デザイナーになれるとは思っていなかったけれど、いろんな方に相談する中で背中を押してくださる方もいた。少しでも可能性があればと、知らない世界を見てみたいと好奇心がわきました。
WWD:立ち上げのための資金は?
内田:スポンサーになるというオファーもいただきましたが、できるだけ自分の力でできる範囲で、好きな服を作りたかった。女性の新規企業を推進する団体に書類を送り、融資をいただき、貯金もすべて使って始めました。好きな服は作れた。でも、商売の仕方がわからなかった。当初は展示会が何なのかさえ知らなかった(笑)。友人の協力を得て最初のコレクションを作り、知り合いの店にだけ、「一生懸命に作ったので見てください」と手紙を送りました。デビューシーズン、ビオトープなど15店舗で取引が決まりました。
WWD:服作りの出発点は?これまで触ってきた古着からインスピレーションを得るのですか?
内田:例えば、民族衣装は売り物としてではなく、自ら着ることを目的に作られているから、手が込んでいる。だから服としてとても美しいですが、私が目指す服作りではないんです。私は着たいと思ってくださる方に届くように、1点モノを作るのではなく、量産スタイルで作りたい。一方で、古着って思ってもみないようなことが起きていて、それを再現するのは大変なのですが、どうやったら今の時代にマッチするか、自分だったらどう着こなすかなどを考えながら作っています。なので、私の服作りは実験に近いです。また、いい素材で作られた服は何年たっても味があります。モノ作りはごまかしがきかないと古着から学びました。
アイデア次第でいかようにもなる“隙がある服”
内田文郁/「フミカ_ウチダ」デザイナー
PROFILE:1979年宮城県生まれ。ビンテージショップ「サンタモニカ」のバイヤーを経て、2005年東京・中目黒に夫とともにビンテージショップの「ジャンティーク」をオープン。10年からジュンのセレクトショップ、ビオトープのビンテージ商品のバイイングを担当。14-15年秋冬に「フミカ_ウチダ」をスタート。卸先は2016-17年秋冬で約25店舗
「フミカ_ウチダ」2017年春夏
「フミカ_ウチダ」2017年春夏
WWD:ユニークなアイテムも多いですが、コーディネートを考えながらモノ作りをするのですか?
内田:ほとんどが着方から考えています。“こういう風に着たいからこのアイテムが必要”というケースが多い。ベースには自分の着方やバランスがありますが、それが100%正しいわけではもない。作りながら「これにこれを合わせても面白いね」とか、他の人から別の着方を学ぶこともあります。お客さんが自分の着方を発見されたときに喜びも感じる。他人の面白い着方のアイデアを見たときに「やられた!」って思います。
WWD:女性ならではのデザインで柔軟な服が多いですね。
内田:余白がある服や、アイデア次第でいかようにもなる“隙がある服”が好きなんです。
WWD:セレクトショップやデザインの同質化はどのように感じていますか?
内田:今は消費者優先になっていて、同じようなアイテムをそろえるお店が増えていると感じています。「ジャンティーク」でバイヤーをしていた頃は、売れないけれど“雰囲気がある”という理由で仕入れる商品もたくさんありました。そういう商品は店作りに大切なんです。今、地方のセレクトショップがすごくおもしろい。東京にも素敵なお店はあるけれど、その場所でないと買えないものや、その地域ならではの個性やオーナーの人間味が伝わるから。人もモノも「安全に」という考えが、世の中をつまらなくしていると感じます。皆、もう少しクセがあってよいと感じるし、そのクセを好きと言ってくれる人もいるはず。私の作る服も全員にいいと思われたらダメだと思っています。私の服を「着たくない!」というくらいの人がいないといけないと思う(笑)。
WWD:直営店の出店は?
内田:表現の一部としても、しっかりフルラインを見せられる店が欲しいとは思いますが。やりたいことは山ほどある。急がずにタイミングでいい場所に出会えたら。
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