トヨタ自動車は2021年、「トヨタアップサイクル(TOYOTA UPCYCLE)」プロジェクトをスタートした。「『モッタイナイ』を、『もっといい』へ」をキーワードに、自動車の製造過程で生まれる端材や廃材を、新しい価値を持つ商品に変わらせる取り組みだ。25年には、プレミアムアップサイクルブランド「ツギ クラフト バイ トヨタ アップサイクル(TSUGI-CRAFT BY TOYOTA UPCYCLE)以下、ツギ クラフト」を立ち上げた。
「ツギ クラフト」の新商品発表会の冒頭で、中村慶至 トヨタアップサイクルプロジェクトオーナーは「自動車を作る過程では、機能性や美しさを備えた、モッタイナイ素材がたくさん生まれる。しかし、ただ素材を再利用するだけでは、価値は生まれない」と述べた。同社がこだわる“価値”とは何か。
クオリティーを底上げするトヨタ製法
「ツギ クラフト」は“一手間”を惜しまない。自動車の本革シートの製造過程では、どうしてもレザーの端材が生まれる。「何とか生かす方法はないか」と工場に相談しても、「そのままでは難しい」と言われることが多い。「であれば、私たちが一手間を加えられないか」。そうして始めたのが、端材を大きさ別に仕分けることだった。大きな端材からはペンケースを、一回り小さな端材からはカードホルダーを作る。この一手間で、新たなモノ作りが始まる。
「ツギ クラフト」を象徴するのが、ブランド名の由来にもなった“継ぎ目”を生むパッチワークだ。パッチワークの製造では「何mm以上のズレだからダメ」といった数字を用いてフィードバックする。改善を繰り返すことで、品質を安定させ、生産性を高める。トヨタ自動車のモノ作りの根底にある考えだ。一方、数字だけでいいものは生まれない。一法師拓門「ツギ クラフト」デザイナーは「トヨタチームは工場に足繁く通っている。質問もものすごくする」と明かす。サステナビリティへの好奇心が、「ツギ クラフト」を突き動かしている。
仕上がりは“トヨタらしくない”
現在は自動車好きの40〜60代から支持を集めているが、今後は幅広い層に届けるため、ファッションの見せ方を強化する。その1歩として、今秋にはサドルタンとサンドブラウンの新色が登場した。同ブランドにとって、初めての柔らかい色味となる。デザインの方向性も変化した。初年度は「ニュートラル」をコンセプトに、性別や年齢、着用シーンを問わないデザインを心掛けていた。今秋はビジネスで使えるブリーフケース(11万5500〜12万6500円)やお出掛け用のミニバッグ(6万6880円)と、あえて着用シーンを想定し、一歩踏み込んだモノ作りへと進化している。
トヨタ自動車のモノ作りを土台にしながらも、仕上がりまで「トヨタらしい」と思われるものを作るつもりはない。一法師デザイナーは「デザイナーとして『トヨタっぽいよね』と言われるものを作るのは、新しい価値の創出にはならない。今回、トヨタさんがファッションという言葉をはっきり言ってくれたのがうれしかった。『トヨタのファッションイケてるよね』。そう言われるよう、来年以降も継続したい」と述べた。“トヨタのアイテム”ではなく、ファッションアイテムとしての確立を目指す。