「アイヴァン(EYEVAN)」から、新たにリリースされる“アイヴァン ヒストリック コレクション”。アイヴァンの創業時に生み出されたモデルの中から、ブランドを象徴するデザインを選定し、細部まで忠実に甦らせたセルフオマージュコレクションだ。これまで、過去のアーカイブを時代に合わせアップデートしたプロダクトはあったが、完全復刻は初めてのこととなる。そんな同コレクションのクリエイションについて、デザインチームの梅垣俊介に話を聞いた。
改めて実感した
50余年の歴史の重み
アイヴァンの設立は、1972年に遡る。眼鏡がまだ視力矯正を目的とした道具としか捉えられていなかった時代に、“着る眼鏡”のコンセプトを打ち出し、ファッションを軸にしたデザインを展開。50余年における歴史のなかで、国内はもとより、海外のアイウエアシーンにも影響を与える名作を生み出してきた。
「今回過去のコレクションを見直したことで、自社にこれだけ魅力的なアーカイブが存在していることに、改めて歴史の重みを感じました」と梅垣。
たとえば、「アイヴァン」の定番モデル“E-0505”は、もともと85年に“DB-7”としてリリース。プラスチックリムにメタルのブリッジとテンプルを合わせた3ピース構造は、当時かなり斬新で、後に多くのブランドのデザインソースとなった。また、70年代に学生向けブランドとして誕生した「アイビーリーガーズ(IVY LEAGUERS)」では、米国アイビーリーグ大学を実際に視察し、本場のスタイルを取り入れた“ボストン”“ウェリントン”というモデルを発表。この名がフレーム形状を示す一般名称として定着するほど、大ヒットした。
「こうした歴史の原点に立ち返ること。それは、『アイヴァン』というブランドの価値を、今の視点で再定義する試みでもあるんです」
細部に至るまで
忠実に復刻することの意義
当時の製作背景を知るべく、梅垣はブランド設立時から在籍する社員のもとを訪れ、話を聞くところから始めた。また、現存する資料やデザイン図面を掘り起こすなかで、当時多くのデザインを手掛けていた人物の存在を知る。話を聞いていくと、それが現在のデザインチームの師匠的存在の人物が、さらに師匠と仰ぐ存在であることがわかり、そのつながりに感銘を覚えたという。
「『アイヴァン』のデザインがもつ“らしさ”は、こうして脈々と受け継がれているのだということを、改めて実感しました。大先輩から直接話を伺えたことは、自分にとって大きな財産になりましたね」
過去と現在をつなぐコレクションとなるからこそ、今作は忠実に復刻することに意義がある。梅垣はそう覚悟し、当時の図面や実物のフレームに向き合い、0.1ミリ単位で何度も図面を調整した。
「正直なところ、新しいデザインを生み出すより難しい作業だったかもしれません。寸分の狂いもないように復刻したいと思う一方で、『昔のほうが良かった』と思われても意味がないですから。その匙加減が難しく、期日のギリギリまで試作を繰り返していました」
当時の素材や製法でこそ
出せる風合いがある
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オリジナルの意匠を、その質感まで再現するために、今作は可能な限り当時と同じ素材、製法を採用しているのも特筆点だ。アセテートは生地メーカーと協力して復刻し、メタルパーツにはチタンではなく合金素材を使用。チタンが主流となった現在、眼鏡産地・鯖江においても合金を扱っている工場はわずかだが、合金にしか出せない魅力があるのだと梅垣はいう。
「チタンに比べて柔らかさがあるので、掛ける人に合わせた調整がしやすいんです。適度な重みが心地よく、安定感のある掛け心地が得られます」
その加工性の高さから、奥行きのある立体的な彫金表現が可能となり、模様の輪郭がぐっと際立って見える。また、無垢の状態でもツヤがあるため、メッキをのせたときの風合いも豊かなのだという。“DB-7”のテンプルは、合金特有の黒味を帯びた深い風合いを、高度な技術で再現させている。
「合金はチタンに比べると経年変化しやすいのですが、着こむほど風合いが出る服のように、それは合金の“味”と捉えてもいいんじゃないかと思っているんです。モノとしての風合い、雰囲気を楽しむという点でも魅力的な素材だと思います」
今も昔も変わらない
アイヴァンらしさとは
ファーストコレクションは、全6型。龍を模した彫金模様が特徴的な“ドラゴンテンプル”を採用した85年発表の“DD-21”や、片側のテンプルに「EV」のロゴが入った72年発表のツーブリッジ“MA-109”など、時代感の異なる多様なアイテムが揃うのも、ヒストリックコレクションの魅力だ。
「中には、よくこれを商品化したなという攻めたデザインもありました。まぁ、今も自由にデザインさせてもらっているので、これは社風だと言えるかもしれません」
1つひとつを見れば、それぞれに個性があるが「アイヴァンのデザインは昔から変わらないね」と言われることも多いという。では、その共通項はどこにあるのだろうか。
「玉型(レンズシェイプ)じゃないですかね。もちろん、それぞれディテールは違うし、デザイナーの個性も出ていますが、玉型の雰囲気はずっとつながっていると思います。きっとみんな、好きなんです。『アイヴァン』の製品が。そうでないと、受け継がれていかないと思うので。そういう意味で、変わらないというのは誉め言葉ですよね」
そんなブランドの原点に触れながら、懐かしくも新鮮なスタイルを楽しめる“アイヴァン ヒストリック コレクション”。当時の佇まいや空気感まで堪能したい。
また、同コレクションは「アイヴァン 東京ギャラリー」「ジ・アイヴァン」で先行販売中で、7月18日から一般販売を開始する。
INTERVIEW & TEXT:MIREI ITO
アイヴァン 東京ギャラリー
03-3409-1972