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特集 繊維商社2026 第14回 / 全15回

【蝶理 迫田竜之社長CEO&COO】「専門性×グローバル×事業投資」で繊維商社の枠を超える

繊維・化学品を手がける複合型専門商社の蝶理が、2026年度スタートの新中期経営計画で「領域の拡大」を掲げた。北陸産地との深い結びつきを武器に出口強化とグローバル展開を加速させるとともに、3年間で175億円超をM&Aや設備投資に振り向ける。迫田竜之社長に戦略の核心を聞いた。

北陸の産地企業とともに
世界のトップ市場を攻略

WWD:蝶理は世界的に高い競争力を有する合繊産地である北陸との結び付きが強い。強みと課題は?

迫田竜之社長CEO & COO(以下、迫田):北陸産地の強みは、糸加工から織り・編みを経て染色加工まで、サプライチェーンが一カ所にまとまっており、しかもそれぞれの技術レベルが非常に高い点だ。当社は糸の供給を通じて北陸産地にかなり深く入り込んでいるものの、課題は出口だ。例えば糸の供給では百数十億円の取扱高があるのに対し、テキスタイルの販売がほぼ同額にとどまっている。日本だけでなく世界に目を向ければ繊維・アパレル産業は成長産業だ。特に注目しているのがスポーツ分野だ。香港子会社のMCCインダストリーを通じて、すでにグローバルなスポーツブランドへの販売実績を積み重ねつつある。もともと強みを持つ中国では大手スポーツブランドの上位サプライヤーのポジションを確立しており、北陸産テキスタイルの供給拡大も進めたい。

WWD:新しい中期経営計画「蝶理イノベーションプラン2028」では「領域の拡大」を掲げた。

迫田:これまではどちらかというと、既存の枠組みの中で強みを磨き続けてきた。新中計では「専門性」×「グローバル」×「事業投資」を掛け合わせることで、事業をさらに成長させる。この3年間で約350億円のキャッシュインが見込まれるが、その内の175億円プラスアルファをM&Aを含めた成長投資や経営基盤投資に振り分ける。北陸産地には優れた技術を持ちながらも苦戦されている企業がある。単独で課題を解決することが難しい場合はM&Aにまでは踏み込まなくても、当社が設備を購入して染色企業に貸与するというやり方もある。実際、北陸では撚糸でこうした手法を実施しており、一定の手応えを感じている。M&Aについても、この10年ほどで4件を実行してきた。PMI(買収後の統合プロセス)も含め、社内に一連のプロセスを担うことのできる人材が育ってきた。繊維では2021年に住友商事の子会社だったスミテックス・インターナショナル(現STX)を買収したが、STXはすでに税引前利益で10億円超を計上するまでに成長している。これまでは本部主導でM&Aを進めてきたが、今後は事業部門や現場発のM&Aも積極的に推進していく。また、ブランド戦略のさらなる強化も図る。糸についてはサステナビリティコンセプト「ブルーチェーン」を軸に取り組みを進めてきたが、生地や製品への展開には伸びしろがある。川上から川下まで一気通貫で事業を展開できる当社の強みを、より一層発揮していく。

WWD:求める人材像やダイバーシティーへの考え方は?

迫田:「蝶理パーソン」として変わらず大切にしているのは「前進する実行力」だ。変化が激しく先が見通しにくい時代において、やり遂げる力、不確実性に耐える力が求められる。一方、変わってきているのは、必要とされる人材の多様性だ。かつて商社では営業力が最重視されていたが、今は事業構想が得意な人、交渉が得意な人、ファイナンスが得意な人、オペレーションが得意な人など、多様なタイプの人材が必要になっている。M&Aが増えていることも、外部パートナーとの事業開発が多くなっていることも、その背景にある。今年度の新入社員は総合職27名中10名が理系で、海外にルーツを持つ社員も6名含まれる。キャリア採用も増えており、新卒とほぼ同数をコンスタントに採用している。その一方で、女性管理職比率は低く、現状では約4%にとどまっている。

WWD:どう変えていく?

迫田:女性管理職比率は3年後の目標として10%を掲げている。ただ定量目標を追うだけでなく、重要なのは業務に対する考え方、すなわち現場レベルでの働き方を変えていくことだ。昨年4月にSAPシステムを稼働させ、業務の標準化を進めている。繊維事業はいまだに属人的な仕事のやり方が根強い。業務を標準化すれば、産休・育休時の引き継ぎがしやすくなり、復帰もスムーズになる。DXと業務標準化は女性活躍推進と一体のテーマだ。この4月からはインナーブランディング推進委員会とダイバーシティー&インクルージョン推進委員会も設置した。従来は管理部門が旗振り役であったが、それでは現場への浸透に限界がある。繊維と化学品それぞれの事業部門トップがそれぞれの委員会の推進委員長を務め、タスキ掛けで委員長が所管する別事業の企画部長を事務局とし、連携する体制にした。多彩なバックグラウンドを持つ人材を増やし、かつ公正・誠実に誇りを持って行動できる「蝶理パーソン」として育成していくことが、当社の次の成長を担う基盤になる。

COMPANY DATA
蝶理
沿革:1861年(文久元年)に大橋理左衛門が京都西陣にて生糸問屋として創業。1948年に蝶理株式会社を設立。53年に東洋レーヨン(現・東レ)と合繊販売を開始、2004年に東レの連結子会社に

本社所在地:東京都港区港南2-15-3(東京本社)/ 大阪府大阪市中央区淡路町4-2-13(大阪本社・本店)
従業員数:連結1444人・単体465人(2026年3月31日現在)
業績:売上高2993億円、営業利益131億円(連結、2026年3月期)
売上高:1458億円、セグメント利益71億円(繊維、同上)
事業比率:繊維事業49.0%、化学品事業50.7%、機械事業0.3%(2025年3月期)
グループ会社:〈国内〉STX、蝶理 MODA、エルトップ、アサダユウ(自動車内装資材・梱包資材販売)〈海外〉蝶理(中国)商業有限公司、蝶理(香港)有限公司、MCC Industry Company Limited、蝶理ベトナム、タイ蝶理、蝶理インドネシア

問い合わせ先
蝶理 経営管理部
03-5781-6201