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「アイヴァン 7285」がレンズの付け替え機能を備えた“804”を発売 中川浩孝デザイナーが語る“今しか作れないもの“の価値

「アイヴァン 7285」がレンズの付け替え機能を備えた“802”を発売 中川浩孝デザイナーが語る“今しか作れないもの“の価値

技術的な制約を設けず、自由な発想で「アイヴァン(EYEVAN)」のデザインチームが本当に作りたいものを形にする「アイヴァン 7285(EYEVAN 7285)」。3月に発売する新作“804”は、レンズを“着替える”という機能を、ミニマルな外観に落とし込んだモデルだ。

その構造は斬新で技巧的でありながら、佇まいはあくまで静ひつ。そんな独自の世界観を持つ「アイヴァン 7285」のプロダクトは、いかにして生み出されているのか。中川浩孝デザイナーに話を聞いた。

ピュアなモノ作りが可能となる理由

新作“804”をはじめ、「アイヴァン 7285」のプロダクトは毎シーズン新しいアプローチに満ちている。常に新しい技巧を取り入れ、そのスタイルも多様だが、ブランドの“らしさ”はどこか通底しているように感じられる。

「それは多分、会社が僕に個人的なモノ作りが出来る環境を与えてくれているからだと思います」と中川デザイナー。聞けば、コレクションすべてのデザインを担うだけでなく、プロトタイプ製作の段階に至るまで、社内会議などを一度も経ることなく、ほとんど中川デザイナーの裁量で進行しているのだという。

「最終的な型や色決めはデザインチームで行っていますが、それ以前の段階はすべて任せてくれています。相談する人数が多く、デザインが平均的になっていきがちな一般的な環境に比べて、ユニークな作り方ができる環境だと思います。加えて、僕は個人でやっているわけではないから、経営面をあまり考えなくて良い分、クリエイティブな面にかなり多くの時間を費やせます。良いデザインやアイデアは時間を掛ければ必ず生まれるという保証はないですが、そこに至る可能性は高くなると思います。自由な立場で純粋に"かっこいいプロダクトとは何か"を考えることに没頭させてもらえるので、製品に一貫した潔さやピュアさを感じられるのかもしれません」。

今しか作れない魅力的なものを

今しか作れない魅力的なものを

“今は作れないものと、今しか作れないものは同等の価値がある”。これは「アイヴァン 7285」のモノ作りの理念だ。

「ビンテージはまさに今は作れないものであり、とても魅力的です。とはいえ、『そっちのほうがいいよね』とは絶対にならないモノ作りをしたいと考えています。昔のものに負けていると感じながらものを作るのは、ユーザーに対して無責任ですし、作り手として満足感も得られないじゃないですか」。

 だからこそ中川デザイナーは、ビンテージをイメージソースとしながらも、新しいアイデアや革新的な技巧により進歩性を付加してみせる。レンズを着替える機能をミニマルに表現した“804”も、その理念を体現したものだ。

「今生きている僕らが一生懸命考えて、現代の職人の技術を生かし、昔はなかった機械で作る。そうした機能的進歩性のあるものは今しか作れないもので、ビンテージと同様に価値があるものだと思っています」。

緻密なデザインにより生まれる優美な佇まい

“804”は、小ぶりなメタルのオーバルフレームをベースに、リムレス、プラスチックリム、メタルリムの3種類のレンズが付属。前後に2本ついたブリッジの後方のリューズを付属のドライバーで回転させ、前方のブリッジを半回転させることにより、レンズを交換できる。だがブリッジの形状は、そうしたギミックを内包しているとは思えないほど繊細だ。

「ブリッジは、上下の角を一段落とすことで、少しでも細く見えるよう仕上げています。そもそも眼鏡は顔の上に金属の塊を乗せるわけですから、細部の形状まで気を遣わないと表情に馴染まないですよね」。

同製品の図面を見ると、スペアレンズを留めるツメの形状やリューズパイプを通す穴の形状に至るまで、各パーツの寸法が細かく書き込まれている。製造工場の担当者をもってしても、「ここまで細かく断面図や寸法を指示するデザイナーはまれ」なのだという。

これまでに前例のない構造については工場からノーを突き付けられることも少なくないが、そうしたときは「技術的に製造可能であることを、図面で具体的な数値を示して説得する」ことも。斬新かつ技巧的でありながらエレガントである「アイヴァン 7285」の“らしさ”は、こうした緻密なデザイン工程から生まれているのだ。

組み合わせの妙から生まれる“モード”

過去にとらわれない自由な発想で作り上げられながらも、「アイヴァン 7285」の佇まいはあくまで普遍的だ。

「僕にとって眼鏡の理想的な外観は、革靴や時計のように100年以上前から大きく変わることがないもの。そのなかで、今の気分を反映させていきたいと思っています」。

コレクションには一見クラシックなムードが漂うが、決して懐古主義的なわけではない。様々な年代におけるビンテージの意匠やアイデアを要素として取り入れながらも、既存のスタイルにカテゴライズされない組み合わせの妙で、独自の世界観を構築してみせる。

「『アイヴァン 7285』はモードだと思っているんです。僕はよくブランドを語る上で『古い物を集めて新しい物を作る』という話をします。ファッションで言うと、たとえば1950年代のミリタリーウエアに、70年代のブーツカット、80年代の『リーボック(REEBOK)』を合わせることで、古着でもモードなスタイリングは可能になるじゃないですか。これまで見たことのない表現でなくても、組み合わせで新しさを感じさせることはできると思っています」。

異なる時代感のミクスチャー、そして伝統的な職人技と、革新的な技法と。それらの巧みな組み合わせによって、「アイヴァン 7285」は、“今しか作れないもの”たる価値を放つのだ。

PHOTOS:MASAHI URA
INTERVIEW & TEXT:MIREI ITO
問い合わせ先
アイヴァン 7285 トウキョウ
03-3409-7285