
ゴールドウインが2025年秋冬シーズンにローンチした新スキーウエアライン“オヤべ(OYABE)”は、ブランドの出発点である“スキー”に改めて向き合い、半世紀以上にわたるクラフツマンシップと技術を凝縮したプレミアムコレクションだ。上下で30万円を超える価格帯ながら、既存のスキーウエアとは一線を画すラグジュアリーな設計と、ディテールへの徹底したこだわりで、“本物志向”のスキーヤーと、新たなスキースタイルを楽しむ層をターゲットに据える。
ブランドの創業地・富山県小矢部市の生産拠点で生産されるこのラインは少量生産体制で、本質的な価値を重視する時代において「丁寧なものづくり」そのものをテーマとし、従来のファッション的スキーウエアやスポーツプロダクトの枠を超える、新しいスタイルを提案する。アクティビティだけでなく旅行全体を通じて着用できるウエアを目指す。
創業地“小矢部”を名乗る意味
ブランド名にあえて地名を冠した背景には、ゴールドウインが自らの原点と“日本のものづくり”を見つめ直した思いがある。企画を担当したゴールドウイン事業部パフォーマンス企画グループMDの柴田大翼さんは、「もともとは“プレミアムシリーズ”の仮称で進めていたが、プロジェクトの進行とともに、クラフツマンシップと日本的美意識が融合するこのラインには、創業の地である小矢部という名前がふさわしいと考えるようになった」と語る。アルファベット表記で“OYABE”と名付けられた本コレクションは、プロダクト、撮影ビジュアルともに“日本発”の本質を掘り下げる姿勢が貫かれている。
見えない部分にこそ、神は宿る
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コレクションのテーマは“ディテールへの献身”。外からは見えにくい内側の縫製処理や裏地の設計、シームの重なり方に至るまで、微差を突き詰めた機能美が追求されている。例えば縫い代は、縫製課程での特殊な加工により、通常なら省かれる工程をあえて重ね、強度と美しさを同時に成立させている。この“見えない部分”へのこだわりは、日本の「侘び寂び」や「禅」の思想にも通じる。華美な装飾ではなく、内面の丁寧さに宿る美しさ。柴田MD は「脱いだときにこそ美しいウエアを作りたかった」と語るが、まさに、表に現れない部分にまでも美を見出す、日本的な感性の具現化といえる。1日わずか2着しか生産できないほど、手間と時間を惜しまず仕立てられたそれは、まさに“作り手の執念”を体現している。裏面のラインや切り替えまでもが美しく整然と仕立てられたウエアは、まるで機能を超えた“工芸品”に近い仕上がりだ。
雪山と街を繋ぐ機能美

素材選定にも妥協はない。ウール混率54%の3レイヤー素材、「ゴアテックスウィンドストッパー(WIND STOPPER BY GORE-TEX LABS)」と、柔らかく軽量性に優れる「プリマロフトゴールド」の組み合わせ、900フィルパワーの光電子ダウンと、“オヤべ”のプロダクトには、素材の組み合わせによって雪山と街をシームレスに繋ぐ快適性が備わっている。見た目にはウールコートのような穏やかさを湛えながらも、標高1000メートル超・気温−20℃のスキー場にも耐えうる保温性を確保。ダウンジャケットに至っては、スキー競技者の移動着としても使える仕様で、1枚で体温を守れる汎用性を実現している。
パターン(設計図)にも徹底的にこだわり、裾をあえて短くしたビブパンツは、スキーブーツにインしているようにも見える丈で、もたつきを抑えつつも見た目は太めのシルエットを保つ。コート丈のロングジャケットやショート丈のダウンなど、リゾート地でのアプレスキーや移動時にも着用しやすいバリエーションが揃っている。
マーケティングを担当するゴールドウインマーケティング部マーケティンググループの石井智也さんは、2018年の平昌五輪にも出場した元アルペンスキー日本代表。選手時代からゴールドウインのウエアに信頼を置いてきた一人でもある。その石井さんが「袖を通してみないとわからない良さがある」と話すように、“オヤべ”の機能美は、数字やスペックだけでは語れない。着たときの体感こそが最大の魅力なのだ。
競合不在の“美意識と本物志向”

“滑れて、美しく、街でも映える”、そんな日本的な美意識を持つラグジュアリーなスキーウエアとして、“オヤべ”は他に類を見ない独自のポジショニングを築いている。ターゲットは、ニセコや白馬といった“リゾート・ジャパン”を訪れる世界中の旅人たち。長期滞在中に滑る、寛ぐ、装うをシームレスに楽しむ、新たなスキーライフスタイルに寄り添う存在だ。「日本の雪山を目的に世界から集まっているのに、日本発のスキーウエアが届いていないのは寂しい」と語る柴田MD。「だからこそ、少数でも丁寧につくり続けたい。自分たちの手の届く範囲で、自分たちの信じる価値を表現していきたい」と、その姿勢を明かす。
販売は国内直営店(ニセコ、札幌、丸の内、神田、京都)を中心に、一部セレクトショップでも展開予定で、今後は中国やシンガポール、欧州といった海外チャネルも視野に入れる。世界中のスキーヤーが良質な雪を求めて日本を訪れる今だからこそ、“日本の美意識とクラフトが生んだスキーウエア”で、雪山に新たな価値を描く。
TEXT:YUKI KOIKE
ゴールドウイン カスタマー サービス
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