ファッション

デイリーラグジュアリー「セアン」が旗艦店 青山で体感する日本の伝統美 

オンワード樫山が展開するデイリーラグジュアリーブランド「セアン(SCEARN)」の旗艦店が10月31日、東京・青山にオープンした。

同ブランドは、「聞香・瞑想・伝統=心の声を聴き、自分と向き合い、自分らしさを見失わず」をコンセプトに昨年秋にローンチ。天然素材と日本での縫製にこだわり、上質でミニマルなコレクションを展開する。これまでオンライン販売をメインに、リアルではポップアップ展開をしてきたが、1号店で旗艦店の青山店で、ブランドとしての世界観を余すことなく表現する。

“香りを聞く”空間

2層からなるショップの1階は、ガラス張りの壁と高い天井が開放感をもたらす、心地よい空間に「セアン」のフルラインアップをそろえる。空間デザインを手掛けたのは、韓国・ソウルを拠点に活動するクリエイター集団、クリエイティブ・スタジオ・アンラベル(Creative Studio Unravel)。「日本の庭園がもつ、余白の美」をインスピレーション源に、“世界から見た日本の美”を表現した。

店内に足を踏み入れると、みずみずしいお香の香りに包まれる。優しい印象を与える御影石の床と、8mもあるオープンカウンター、そして、無染色の重厚感のあるウール100%の生地を吊るすことでできた壁とフィッティングルームが、訪れた人を奥へと誘い、そして、神秘的な朝の陽光を連想させる、先ほどとは異なる香りに出合う。入り口と奥で2種のお香をたくことで、それらが混ざり合う。まさにブランド名の語源でもある“hear the scent(=聞香)”を楽しめる空間になっている。

コレクションも店舗空間も自然そのものを感じられる素材使いで一貫させた。視覚だけでなく、香りや手触り、そして日本らしいおもてなしの接客で、「セアン」の世界観を体感できる。

日本の伝統美を衣食住で発信

2階は、「リ ギャラリー セアン(Re Gallery SCEARN)」だ。1階同様ガラス張りの開放的な空間で、再解釈した日本の伝統美を発信。「セアン」が大事にする日本の文化と伝統、その心を、衣食住にわたって紹介し、新たな価値観を生み出すことを目指す。

地域の食・文化・人を物語として再編集し発信するコンテンツメーカー、ワンストーリー(ONESTORY)のキュレーションによる作品の展示・販売や、日本の価値ある魅力を感動体験として届ける「Otonami(おとなみ)」とのコラボレーションなどを実施。

オープン時は、デザイナー、猿山修氏の代表作「自在鉤(じざいかぎ)」にフォーカス。確かな職人技によって作られた繊細な自在鉤は、香炉、花入れ、キャンドルなど、吊るすものによってさまざまな表情を見せる。11月以降は「セアン」のコンセプトにちなんだ香道や、2025-26年秋冬コレクションのテーマに合わせた和菓子づくりといった“体験”の提供も行っていく。

「人生をさらに楽しむための、
新たなきっかけや発見がある場に」

「セアン」のブランド責任者である宮脇亮介オンワード樫山グローバル戦略グループ長は、旗艦店について「“余白の美”を大切に、店舗への訪問そのものが豊かな価値観と体験の提供になるような空間づくりをした」と語る。

自身が海外に行った際、現地の人との対話によって日本の伝統美を再発見したことが、ブランドコンセプトの礎になっている。そこから伝統的な風習である“香りを聞く”をキーワードに、自分らしさと向き合うための豊かな価値観と体験を提供するデイリーかつラグジュアリーなブランドを立ち上げた。「“世界から見た日本の魅力”と“日本が受け継いできた伝統や技術”の双方をかけ合わせて、つくりあげている」。

伝統工芸品の展示や、お香や和菓子のワークショップなど、日本の生活に根ざした美を、ウールやカシミヤ、コットンやリネンなどの天然素材を用いた上質で品のあるウエアと共に、大人の女性に提案する。

「贅沢な素材と縫製にこだわった洋服に触れて、心を満たしていただくことはもちろんだが、再解釈した日本の美をテーマにした作品の展示販売やワークショップといった体験コンテンツも用意する。さまざまな経験を積んできた方たちに、これからの人生をさらに楽しむための、新たなきっかけや発見がある場にしていきたい」。

上質な素材を用いた、
体を包み込むようなデザイン


そんな「セアン」の2025-26年秋冬コレクションのテーマは、「Tsu tsu mu(包む)」だ。和の心と深く結びつきながら、千年以上も実用性と芸術性を兼ね備えて発達してきた日本の“包む”文化を、デザインやパターンに落とし込んだ。

ゆったりと丸みを帯びたハーフ丈のベビーカシミヤコート(46万2000円)は、生後12カ月までのベビーカシミヤの被毛を、素材そのものの良さを引き立たせる無染色で使用。大きなショールカラーデザインが特徴で、着る人を包み込むようなデザインになっている。

“KASHIGU”ニット(12万1000円)は、日本の着物の直線的な型紙(パターン)に着想を得た平面パターン設計をベースに、それを45度傾(かし)げ、袖の位置をアシンメトリーに施すことによってドレープと立体感を生み出している。上質なホワイトカシミヤとブラウンカシミヤを使用し、その原料をワタの状態で染めて紡績するまでの全ての工程を国内で行うことで、柔らかで軽く、上品な光沢としなやかさを実現している。

ファーストシーズンから展開する“TSUTSUMU”パンツ(9万6800円)は、脇をシームレスパターンにし、素材そのものの質感を最大限に生かしている。2025-26年秋冬コレクションでは、ウールビーバー素材で登場。厳選した原毛のみを用いた糸を、尾州で丁寧に織り上げた素材は、創業120年の工場で起毛加工を施すことにより、ふんわりと柔らかい風合いと繊細な表情を生み出ている。

■SCEARN AOYOMA
オープン日:10月31日
時間:11:00〜19:00
定休日:月曜日
住所:東京都港区北青山3-13-7

問い合わせ先
オンワード樫山 お客様相談室
03-5476-5811