ファッション

気鋭ストリートブランド「シュン イケダ」と画家・川上盛司  2つの若い才能がNYで“共鳴”

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日本の2つの若い才能がこの夏、ニューヨークで共鳴した。気鋭ストリートブランドの「シュン イケダ(SHUN IKEDA)」を手掛ける池田舜と、現代美術家の川上盛司。互いに友人であり、創作においてはライバルでもある2人の共同創作のテーマは、“Nobody is Perfect”。多様性のるつぼの街で自分たちの“未完成”を臆さず、ありのままをさらけ出すことで得たものは何だったのか。

反骨と遊び心が同居した、
“普通じゃない”服作りを目指す

現在24歳の池田が服作りを志した原体験は、1枚のTシャツだった。高校を卒業してすぐに作ったのは、ブランドネームを刺しゅうしたシンプルなデザイン。それが周りの友人に評判になると、ファッションデザイナーへの志が芽生えた。その後、一度は地元・九州の企業に就職したものの夢を諦めきれずに退職。服飾学校でビジネスを学びつつ、服を解体するなどしてパターンやデザインを独学で磨き、2023年に自身のブランド「シュン イケダ」を立ち上げた。

「反骨心と遊び心にあふれた、“普通じゃないもの”を作り出せたら」と語る。シグネチャーはオーバーサイズのTシャツやジャケット。少年時代に打ち込んだバスケットボールや同じ服を破れるまで着倒した記憶を、スプレーペイントや切りっぱなし加工、手作業のダメージに刻む。販売はインスタとECが中心。運営規模はまだ限定的だからこそ、ECで売れた商品を手渡しすることも。今後はセレクトショップへの卸を徐々に広げていく方針だ。

中目黒のシェアアトリエで池田がミシンを踏む傍ら、川上は筆をゆっくり動かす。今では日夜の創作を共にする2人だが、始まりはひょんな邂逅。1年前、都内のとあるバーで自分のブランドの夢を語る池田に、川上は「同じ夢を追う情熱」を感じ、すぐに意気投合した。

人と触れ合った感情を色彩に
“手”の癒しと希望の力を信じて

川上は、かつてプロサッカー選手として日本でキャリアを積むも、限界を感じて豪州へ。ペンキ塗りの仕事に就き、そこから絵にのめり込んだ。思うままに描いた絵が道端で300ドルで売れ、その瞬間に「これで生きていこう」と決めた。川上にとって絵は“出会いの記録”だ。人と触れ合い生まれた感情を、そのまま色彩に落とし込む。アクリル絵の具、オイルクレヨンで赤・黄・青・ターコイズ・ピンクなどの強い色をぶつけ、黒の太いアウトラインで人物などのモチーフを切り出す。彼が“右手”をたびたび描くのは「触れたものを癒やす」「未来の希望をつかむ」という、職人の父から教えられた“2つの力”を信じているからだ。

「完璧じゃなくていい」
新たな創作を糧に志を磨く

人と人のつながりの中に創作の情熱を見出す姿勢が、2人を強く結びつけている。8月中旬、2人はNYへ渡った。池田はストリートでモデルをキャスティングし、ルック撮影を敢行。26年春夏コレクションのアイテムにはタグを付け、QRコードからNYで撮影した写真やムービーなどのコンテンツを閲覧できるようにする。いつか手放された服が次の着用者へ渡るとき、そのストーリーをたどれるように―人から人へ“旅する服”になってほしいという思いを託す。一方の川上も、マンハッタンやブルックリンの空気、人との出会い、湧き上がる感情をキャンバスへ積層させた。

それぞれの個性と人生を認め、「誰も完璧じゃなくていい」という2人の思いは、今回のテーマ「Nobody is Perfect」に結晶した。あえて未完成のままNYという“本場”に身を置いたのもその思いの体現であり、この大きな経験を経て、2人の志はさらに磨かれていく。

EXHIBITION

池田舜と川上盛司は9月、東京・表参道で共同展示会を開催する。会場では「シュン イケダ」の26年春夏のコレクションのほか、川上がNYのストリートでライブ制作した作品、2人のコラボレーション商品などを展示する。

会場:東京都神宮前4-13-12 seeen
会期:9月25日(木)〜28日(日)
協賛:オリバー(青木優太 代表取締役)

問い合わせ先
オリバー