ファッション

LA発「オリバーピープルズ」の美学を支える「メイド・イン・ジャパン」

オリバーピープルズ,OLIVER PEOPLES

現在、世界60ヵ国以上で販売され、45店舗のブティックを展開するアイウエアブランド「オリバーピープルズ(OLIVER PEOPLES)」。創業当初から変わらないモノ作りへのこだわりは、確かな職人技に裏打ちされていなければならない。その想いに応える「メイド・イン・ジャパン」の精神に迫った。

「オリバーピープルズ」の歩みと
日本の技術力

「オリバーピープルズ」は1987年に創業、その第一号店はカリフォルニア州ウェスト・ハリウッドの中心地であるサンセット・ブールバードにオープンした。ブランドの創設者が所有していたアメリカ製ビンテージアイウエアのエステートコレクションをヒントに、そのエッセンスを取り入れたオリジナルデザインのフレームを発表、展開。その独自のビンテージ美学は時の映画俳優や監督の間で人気を博し、当時のスクリーンやファッション誌にも登場していく。

「オリバーピープルズ」のDNAとして刻まれているのは、ビンテージの優美なデザイン以外にも多岐にわたる。それは、ブランドが誕生したLA特有のファッションや映画、アート、音楽といったライフスタイルカルチャーだ。そんなルーツを持つ「オリバーピープルズ」のアイウエアの多くは、実は日本で作られている、ということをご存知だろうか。LAのカルチャーやビンテージデザインのエッセンスを表現するために必要なのは、匠の技を持つクラフツマンシップだ。軽量だが加工の難しいチタン製のアイウエアは、福井県鯖江市にある福井めがね工業が手掛けている。日本製眼鏡フレームの約90%を生産するこの福井めがね工業の製造拠点は、自動車学校跡地を利用して2021年に竣工、1日セルフレームを約1700本、メタルフレームを約1300本生産している。

アイウエア製作を熟知した職人がプロトサンプルを制作し、そこから数値化された設計図が作られ工場での量産がスタートする。鯖江のアイウエア製作の技術継承を重視し、チタンをはじめとした“メタル”とアセテートを中心とした“セルフレーム”にそれぞれ分かれて製作が進む。スタッフの制服は役割ごとに4色に色分けされ、作業の効率化に一役買っているのも特徴だ。

特注の機械を採用しながらも多くの工程で手仕事が用いられていることも、デジタル技術と職人の手仕事を推進する同社ならではだ。イタリアでは“ガラ”と呼ばれるウッドチップを使用した磨き上げの技法と、鯖江の伝統的な技法を融合させた製法が精度の高いアイウエアを生み出す要因で、良質なアイウエアを1日約3000本も製造できるスピード感は素早くトレンドに対応できる同社の強みでもある。

メイド・イン・ジャパンの
アイウエア

ブランドを展開する
日本法人代表が見る、
日本と「オリバーピープルズ」の
関係性

WWD:「オリバーピープルズ」のアイウエアの多くが日本で作られているのは、どのような背景からでしょうか。

フランチェスコ・アルクーリ(以下、アルクーリ):LAカルチャーやビンテージのエッセンスを美学として持つ「オリバーピープルズ」にとって、モノ作りに対するクラフツマンシップは非常に重要な要素です。日本伝統の匠の技によって生み出されたアセテートフレームは、面がクリーンかつ美しくフロントとテンプルが綺麗に接合され、角が丸くない“シャープなエッジ”が特徴です。その高精度な機械加工によるバレルの少なさと、手磨きによる艶のある美しい表面によって実現されています。その全てが日本の技術だからこそ可能なものです。「オリバーピープルズ」の美学を体現する、コアワイヤーに施されるフィリグリーと呼ばれる見せる彫金も日本のクラフツマンシップによって成り立っています。

WWD:日本におけるブランドの顧客層をどう分析していますか。

アルクーリ:日本の顧客はブランド・製品に対する審美眼が高く、常に厳しい視点で我々の商品を見ていると理解しています。それに応えることができるよう、常にクオリティーの高い製品を提供することはもちろんですが、店舗でのサービス、製品を購入いただいた後のアフターケアなどさまざまなことを日々アップデートしていくことが大切だと考えています。

WWD:現在日本のアイウエアのトレンドは、クラシックブームが根強く続く一方、90年代を彷彿とさせるデコラティブなデザインも増えています。「オリバーピープルズ」ではこのトレンドをどう捉えていますか。

アルクーリ:我々のコアにあるのは、常に自分たちのブランドを形作るカルチャーです。スタイルは時代を反映しますが、中には時代を超越しているタイムレスなトレンドもあります。そのクラシックなスタイルとタイムレスな価値観はブランドの根本でもあり、その進化こそが「オリバーピープルズ」のデザインを象徴しています。

WWD:今後のグローバル戦略について教えてください。

アルクーリ:LAでデザインされ、日本の伝統的なメガネ産地である福井県鯖江市で生産されたコレクションを通じて、「オリバーピープルズ」の位置づけを再定義すると同時に、メイド・イン・ジャパンの製品を世界へ送り出すことによる認知向上や技術伝承、雇用創出にも貢献を続けていきます。

WWD:日本のショップにはどのような思い入れがありますか。

アルクーリ:日本での代表着任前に、LAのオフィスにて「オリバーピープルズ」のビジネスを統括する立場にいたので、ブランドに対する想いは人一倍強いです。またLAで誕生した「オリバーピープルズ」ですが、東京のショップはブランド史上初の海外店舗となります。そのため日本はブランドにとってとても重要なマーケットでもあり、思い入れの深い場所でもあります。ブランドの持つ美学は日本人の持つ繊細な美学と共通する部分があると考えており、日本の顧客からの高い希望に応えることは、ブランド自身の向上にもつながります。今年、日本の3店舗が新たに直営店舗に加わりました。日本においてのブランドの存在感をより高め、日本の顧客とのさらなる結びつきを強化するチャンスと捉えています。

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