2017年に“睡眠負債”という言葉が登場して以来、睡眠に対する関心は年々高まっている。厚生労働省の調査によると日本人の平均睡眠時間は年々減少傾向にあり、1日の平均睡眠時間は男女ともに多くの年代が「6時間以上7時間未満」となった。次いで「5時間以上6時間未満」の割合は毎年増加しており、十分な睡眠時間を確保できていない人が多いことが分かる。米のシンクタンク・ランド研究所が行った調査によると、日本の睡眠不足による経済損失は年間約9兆~15兆円にのぼると試算された。企業や社会にとっても大きな問題と言えるだろう。(この記事はWWDビューティ2019年12月5日号からの抜粋です)
また、睡眠に関する悩みは増えているという。30年以上にわたり睡眠に関するグローバル事業を展開する「フィリップス」の日本法人のマーケティング部企画担当は、「ここ数年睡眠に関する市場は伸びている。十分な睡眠時間を確保することが大切だが、難しいケースが多いのが現状だ。そうなると、短い睡眠時間の中で効率的に質の高い睡眠をとることが重要」と述べる。そこで注目を集めているのが睡眠を可視化する“スリープテック”の進化だ。これまでも睡眠を管理するスマートフォンアプリなどは多くあったが、より高い精度で睡眠を管理し、睡眠の質にアプローチすることを可能にした最新技術が登場している。
「フィリップス」は、ヘッドバンド型ウェアラブルデバイス「スマートスリープ ディープスリープ ヘッドバンド」(4万2380円)を11月26日に発売した。脳波をリアルタイムで測定、睡眠の状態を計測し、センサーにより深睡眠と判定されると独自のアルゴリズムによるオーディオトーンを発生させ睡眠の質を高める。「ビジネスパーソンや子育て世代、介護などで睡眠時間を十分確保できない人の睡眠の質を高めると同時に、睡眠を可視化することで健康的な生活の習慣化などにも役立つ」と担当者はコメントした。
寝具や企業向けサービスにも応用
寝具や睡眠改善サービスの企画開発を行う「エムール」は、心拍数、呼吸数、体動データを測定できる次世代型まくら「エムール スリープ ピロー」(2万7500円)を11月に発表した。スマートフォンアプリでは計測できなかった情報を可視化できる。
生産性向上のため、企業が社員の睡眠の質を高める試みも広がりを見せている。スリープテックに特化した「ニューロスペース」が行う睡眠習慣デザインプログラム「リー・ビズ」は、デバイスで計測した睡眠データをもとに、スマートフォンアプリを用いて良い睡眠をとるための改善プランをアドバイスし、組織全体と従業員の双方に適した伴走支援も行う。
睡眠の可視化が進むことでサプリメントや寝具との連動も進みそうだ。スリープテック市場、睡眠に関する市場は確実に拡大していくだろう。