ニュース

厚底スニーカー「ホカ オネオネ」 600億円規模への勝算

 2009年にフランス人のジャン・リュック・ディアード(Jean Luc Diard)とニコラ・マーモッド(Nicolas Mermoud)が創業した「ホカ オネオネ(HOKA ONE ONE)」は、山の下り坂を速く走るためのシューズ開発から始まったランニングシューズブランドだ。ブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)やリース・ウィザースプーン(Reese Witherspoon)といったファンを抱え、「アグ(UGG)」や「テバ(TEVA)」といったトレンドブランドを手掛けてきたフットウエア企業のデッカーズ アウトドア コーポレーション(DECKERS OUTDOOR CORP.)傘下となった同ブランドの成長に注目が集まっている。

 「ホカ オネオネ」の18年4〜6月期の既存店売上高は前年同期比53.1%増、19年4〜6月期の売上高は同69.2%増と急激に伸びており、オンライン売上高の約40%が新規顧客で、過去1年間で新規顧客を2倍以上獲得しているという。デッカーズのデータによれば、認知度は北米地域で約12%に達するなど上昇しており、その結果、売上高は卸売りチャネルで同11%増、D2C事業において同16%増と伸びた。

 直近の電話会議で、デビッド・パワーズ(David Powers)=デッカーズ・ブランド社長兼CEOは「ホカ オネオネ」はまだ成長軌道に乗り始めたばかりだと語った。「ホカ オネオネ」の19年3月期の売上高は前期比45.4%の2億2314万ドル(約236億円)だった。「このブランドは5億ドル(約540億円)規模への成長が見込めると常に考えていた。恐らく実際はそれよりも大規模になるだろう。先走るわけではないが、『ホカ オネオネ』については大きな視野で考えており、デッカーズの長期的なゲームチェンジャーになると見ている。言葉では表現しにくいが、このブランドにはカルト的なフォロワーがいて、新しい製品やシリーズがウェブサイトに上がるとすぐに手に入れる人々がいる」とも付け加えた。

 ブランドの飛躍的成長の背景には“ストーリーを共有する”というブランド哲学に基づいた関連製品の開発と、増大するデジタルチャネルの影響力とを組み合わせた強力な方策があるという。

 カーボンファイバープレートをソールに内蔵した、軽量かつクッション性の高い“カーボンX (Carbon X)”を5月に発売した際には、同時にブランドを代表するアスリートたちが100kmマラソンの世界記録に挑戦する「プロジェクト カーボンX(PROJECT CARBON X)」を発表。1人が優勝、もう1人は世界記録達成という快挙を成し遂げプロジェクトは成功裏に終わり、同製品の強力なパフォーマンスはデッカーズが4〜6月期の売り上げを更新する一助となった。「オンラインでの圧倒的にポジティブな製品レビューからわかるように、消費者は“カーボンX”を絶賛している。発売時のプロジェクトの印象がブランド認知に大きな勢いを与え、その後の“クリフトン(CLIFTON)”シリーズの発売に重要な影響をもたらしたと感じている」とパワーズCEOは話す。

 同氏が最も革新的なアップデートと呼ぶ、ブランド創業以来のコアシリーズの最新版“クリフトン6”は、発売からわずか1カ月ながら実売率が非常に高く、現在米国の卸先のランニング部門の大半で売り上げ1位または2位だという。

 デッカーズはまた成長過程のブランドが同程度の成長率を維持し続けることは難しく、新規事業の開拓を積極的に行うため、「ホカ オネオネ」には今後数年にわたって大きな成長余地があると見ている。

 同ブランドの新規顧客獲得において焦点となるのは、企業の予想以上にリピート購入をしている信者的ファン層への継続的な投資と、高価格帯での製品需要を整えることの2通りだ。加えて強力なマーケティング戦略と流通を厳しくコントロールすることで、正規価格販売を高い比率で維持できるだろうともパワーズCEOは述べた。

 新規事業に関して同氏は「ブランドが最初に目を向けるのは既存のチャネルで、特にeコマースの推進によって国外のターゲットを獲得していくだろう。中国や日本といった新たな市場でブランド認知を向上させていくことで、国際規模での成長があると予測している。また顧客の平均年齢がわれわれが望むよりも少々高いため、若年層をターゲットにすることも始めたい」と語り、「ブランドの勢い、消費者とのコミュニケーションそして話題性が良好になってきており、今後3〜5年以内に目指している複数のゴールに到達できると確信している。今すぐに数字で表すことは難しいが、他のいくつかのランニングブランドを含む文脈でこのブランドを見ると、われわれにとって助走はかなり重要だ」とコメントした。

大根田杏(Anzu Oneda):1992年東京生まれ。横浜国立大学在学中にスウェーデンへ1年交換留学、その後「WWD ジャパン」でインターンを経験し、ファッション系PR会社に入社。編集&PRコミュニケーションとして日本企業の海外PR戦略立案や編集・制作、海外ブランドの日本進出サポート、メディア事業の立ち上げ・取材・執筆などを担当。現在はフリーランスでファッション・ビューティ・ライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を行う。