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大丸東京店の「明日見世」、2つの新プラン始動でさらなる進化 増床で客数4倍の好調

大丸東京店9階の「明日見世(あすみせ)」は、新進気鋭のブランドをキュレーション展示する複合型体験ストアだ。昨年9月の移設・増床から半年が経過し、好調な滑り出しを見せている。ブランドの「認知」「購入」のきっかけだけでなく「ストーリーの深掘り」と「共感」を生み出し、来店客・出品者双方の満足につながっている。秋には、百貨店ならではのサービスに着眼した2つの新プランをスタート。ブランドの成長を多角的にバックアップする。

客数・滞在時間が大きく伸長
出品ブランドの9割が「満足」

2021年10月に発足した「明日見世」は、当初4階婦人服フロアの一角で、ショールーム機能に特化してスタートした。ファッションやビューティ、雑貨などジャンルレスにブランドを編集・展示し、店頭に立つ大丸松坂屋の「アンバサダー」が魅力をプレゼン。出品ブランドの負担は基本的に出品料のみで、常設展開やポップアップストアよりも低コストで出品が可能だ。そのため資金や人材に限りがある小規模なブランドにとっては、百貨店に出品できる貴重な選択肢として重宝されてきた。移転後は面積を4倍に拡げる一方、展開ブランド数はほぼ据え置きとすることで、動線にゆとりを持たせ、ブランドブースに十分なスペースを確保。ほとんどの商品が店頭購入も可能となり、体験とユーザビリティーの両面を強化した。

一般に百貨店は上層階ほど集客が難しくなるが、「明日見世」は移設後の客数が移設前から3 〜 4倍と、そのセオリーを覆す結果に。ポップアップカフェの併設などが集客に大きく寄与する。また、かつて売り場があった4階婦人服フロアは、オフィスワーカーの女性などが主な客層だったが、9階は「時間に余裕があり」「目的意識を持って訪れる」客が中心となり、滞在時間も伸長。成果は出品者アンケートに表れる。移設後の満足度評価は「89%」。出品料は移設前の2倍だが、費用を上回る満足が実感されている。売り場収益目標として掲げた「半期で移設前の2.5倍」という数値も達成した。

来店客との対話の気づきが
新商品開発のアイデアにも

店頭に立つアンバサダーは、実際に商品を試用し、ブランドの背景や開発者の思いにまで深く理解する。こうしたアンバサダーと来店客との密度の高いコミュニケーションは、ブランド側にも学びや気づきをもたらす。第一工業製薬が手がける消臭雑貨ブランド「NIOCAN」は、店頭での接客中に得たアンバサダーからのフィードバックをもとに、新しい容量展開が実現した。来店客からは「玄関や外出先で使いたい」「ギフトに適したサイズが欲しい」といった声が多く寄せられた。当初展開していたのは500mLの通常サイズのみだったが、100mLサイズを新たに開発して定番化。売り場での“対話”がリアルなニーズを捉える貴重なヒントとなった好例だ。

館内送客や会員180万人への訴求
百貨店の強みを活用する新プラン

「認知」「購入」「ブランド価値訴求」。これらを一つの売り場でかなえる「明日見世」ならではの課題解決力を、さらに高める新プランがこの秋スタートする。一つ目の「コネクト」プランは、百貨店の優良顧客層に向けて、よりダイレクトにアプローチできるプラン。大丸松坂屋百貨店の公式アプリを通じて、約180万人の会員から想定ターゲットに近い顧客をセグメントし、サンプリングやアンケートを実施。新規顧客の獲得から、収集したデータを次のマーケティング戦略に活かすサポートまで行う。二つ目の「ブランディング」プランでは、店頭での訴求力を高める仕掛けに加え、館内各所からの動線設計、百貨店が運営するオウンドメディアでのコンテンツ配信を組み合わせる。リアル・デジタル横断の多面的な露出によって、新商品のプロモーションからブランドの価値訴求まで、広がりのある情報発信を実現する。

百貨店の新たな可能性と価値を創造
ブランドが力強く羽ばたける場所へ

移設から半年、ようやく「明日見世」として思い描いていた環境・機能が整ってきました。ショールーミングだけではなく、商品を買える仕組み、カフェやインスタレーションなどの体験要素を取り入れ、お客さまにとっても、ブランドにとっても価値のある場所になってきたと感じています。

「NIOCAN」のように、顧客の声をもとに新商品のサイズ展開を決めるといった、気づきを得られる事例もあります。接客レポートでも、5分以上の接客が7割を超えるブランドも出てきています。

フィードバックの濃さ、顧客との対話、ストーリーテリング。こういった「明日見世」の価値を実感いただけるブランドを、これからもっと増やしていきたいと思っています。秋にスタートする「コネクト」「ブランディング」プランは、そうした出品者のニーズにより私たちらしくお応えし、ブランドの成長を力強く支援するために生まれました。百貨店の優良顧客にセグメント配信やサンプリングができる仕組み、VMDや館内誘導、オウンドメディアなど、百貨店ならではのリソースを活用し、バックアップしていきます。

百貨店はブランド様にとっても敷居が高いと思われがちですが、「明日見世」はいわば本格展開に向けた予行演習の場。ここで芽を出したブランドが将来的に百貨店のポップアップストア、常設売り場に出て、世界へと羽ばたいていく。そんな志を持ったブランドとぜひ一緒にお取り組みをしたいですし、百貨店の新たな役割、可能性を見せる場にできたら嬉しいですね。

問い合わせ先
大丸東京店「明日見世」
050-1782-8547