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連載 エディターズレター:FROM OUR INDUSTRY 第110回

「躍動」や「守り抜く」への危機感 伝わる文は、美化せずポジティブな事実を淡々と積み上げる

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最近、ニュースを見るたびに「大谷翔平選手は、『躍動』しているなぁ」と思います。大谷選手の実際の活躍に感銘を受けているのではありません。特にテレビのニュースを中心に、ことスポーツ選手の活躍を「躍動」と表現する番組が多すぎやしないか?という、我ながら相変わらずな皮肉です。なんだか語彙が貧困な気がするんですよね。「躍動」ばかりが使われがちなのはもちろん、それなりに大層な言葉を乱発しているのでは?と思っています。

同じような印象は、政治の世界で聞く機会が増えた「〜〜抜く」にも抱いています。皆さんも「守り抜く」なんて言葉、何度も聞いてきたのではないでしょうか?「守る」ではなく、「守り抜く」。そこには「死守する」や「必死で守る」「命懸けで守る」なんてニュアンスが含まれているのだと思います。「躍動」同様、本来ならば“ここぞ”というときに使うべき大層な言葉を乱発し、その言葉の価値を自ら毀損しているような印象を受けます。もちろん結果「守り抜く」ことができなかったときの落胆は、「守る」という言葉で語られたときの比ではありません。

後輩が記事を書くとき、特にクライアントとご一緒するタイアップコンテンツを作るとき、彼らには「耳障りの良い言葉を使うのではなく、ポジティブな事実を淡々と積み上げ、結果、全体として好印象につながる記事を書こう」と伝えます。これは、全てにおいて大事なことだと考えています。例えば先日、私はあるデザイナーインタビューの記事で、後輩がつけた「隙のないMDで顧客のニーズを満たす」という中見出しに噛み付きました(笑)。「ん!?」と思い、「本当に『隙のない隙のないMDで顧客のニーズを満た』していると思ったのですね?ならば、このままでOKです」と戻しました。すると後輩は、「正直美化して書いてしまった感は否めないです。自分でもそう感じます」と白状してくれました。きっと、次回以降、同じ轍は踏まないことでしょう。文字を生業とする人間として、私たちは、せめてこのくらい自分の言葉に責任を持つべきでは?そう考えると私は、政治家のように安易に「〜〜抜く」なんて言えません。

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