365日で雨が降らないのは、たった5日だけ。ザーザーとした雨は、朝から夜まで降り続き、空はどんよりとした雲に覆われているー。そんな「雨の止まない世界」における暮らしと、人々の装いはどうなるだろう?そんな視点でのディスカッションに参加したのは、防水やはっ水などの機能性とファッション性を融合する「アンドワンダー(AND WANDER)」の池内啓太デザイナーと、人間社会で生まれるさまざまな価値観の中でも「美力=美的価値」が人間を人間たらしめると考えて文化と「美力」の関係性を考察・表現するアーティストの神楽岡久美だ。 (この記事は「WWDJAPAN」2024年1月8日号からの抜粋です)
プロフィール
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池内啓太/「アンドワンダー」デザイナー
PROFILE: (いけうち・けいた)1978年神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業後にコレクションブランドに勤務。2011年、森美穂子とともに「アンドワンダー」をスタートする
神楽岡久美/アーティスト
PROFILE:(かぐらおか・くみ)医療職の両親の元に生まれ、身体に興味を持ち、ファッションや玩具など身体と密なコミュニケーションツールにまつわるデザインをバックグラウンドにもつ。「身体とは感覚を持って外界と対話するためのツールである」をステートメントに2015年に制作活動を開始。現在寺田倉庫が天王洲で運営するWhat MuseumのTakeuchi Collection「心のレンズ」展に参加している(2月25日まで)
音から湿度まで、感覚が装いに大きな影響を与える
WWDJAPAN(以下、WWD):2人にとって「雨の止まない世界」のイメージは?
池内啓太「アンドワンダー」デザイナー(以下、池内):水たまりに入っても問題ない靴から、レインコートのようにはっ水するテーラードジャケットまで、雨の中でも快適に過ごせる洋服は既に数多い。「雨の止まない世界」と上手く付き合うこと自体は難しいことではない。一方、地球温暖化に伴い、今世紀末には世界人口の1/3が50度以上の最高気温や1日300mm以上の降雨などの気候変動に遭うリスクにさらされるという分析・予想がある。1日に300mmも雨が降ると、河川の氾濫や家の浸水といった危機に直面する。このときは、洋服の機能だけで対応するのは難しい。今後は、「体と建物の間のもの」が重要になるのではないか?登山では、普段は最低限のレイヤリングで行動し、強い雨や日差しの下では山用の軽くて機能的な傘を差したり、エマージェンシーシートを使ったりする。「体と建物の間のもの」を発想することで、未来と向き合うフェーズが来るかもしれない。
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