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「チームターザン」の体験型イベントで立体的に ウェルビーイングを重視【編集長インタビューVol.5 マガジンハウス「ターザン」】

ビューティの世界が体、そして心の健康へと広がったように、コロナ禍を経て「ターザン」の世界も変化している。麻坂博史編集長は、「以前は、フィットネスや体づくりに関する特集が年間23冊の過半数。次いで健康やダイエット、食事管理だった。ところが今は、ウェルネスが過半数。次いでフィットネスと逆転している。フィットネスでも、以前のテーマは『鍛える』や『筋肥大』だったが、最近は『硬いカラダをゆるめるストレッチ』や『科学的に正しいセルフマッサージ』など。ランニングだけでなくウォーキングも特集するなど、以前より幅広い人が楽しめるコンテンツを増やしている」と語る。麻坂編集長自身も、今はフルマラソンに出場するのではなく、「4駅くらい離れた映画館までランニングして、映画のあとは電車に乗って帰ってくるくらい(笑)、気軽に運動を楽しんでいる」という。「健康への意識が高まっているのと同時に、筋肥大のような外見よりも、股関節や横隔膜、自律神経など内面に価値を置く人が増えた」と続ける。麻坂編集長のような40〜50代の長年の読者には、子育てがひと段落した一方で親の健康が気になり始めたことを契機に、自分の将来の健康を考える人が増えている。と同時に髙橋優人デジタルビジネスディレクターのような30代は、「そろそろお腹周りが気になって、自分でできる体形補正を考える頃」。そこで「ターザン」は、「体を快適にすることで、より良く生きるための情報を届け、健康こそがラグジュアリーという価値観を啓蒙したい」(麻坂編集長)。タグラインも「ベストアンサー・フォー・フィットネス」から「ベストアンサー・フォー・ウェルビーイング」に変更した。こうして生まれた「肝臓と腎臓 徹底メンテナンス術」や「間違いだらけの健康常識」「ベジ活はじめよう!」などの特集は、読者からの評価も高い。

人気コンテンツになり得る新しいトピックスが次々発見できるのは、2020年に立ち上げたオンライン・コミュニティー・サービス「チームターザン」のおかげでもある。月額(毎月2980円)会員制のサブスクリプション・サービスは、隔週発売の雑誌の定期購読と、月2回、1回1500円のオンラインイベントへの参加権が主軸。現在のメンバーは、およそ230人だ。髙橋ディレクターは「チームターザン」発足のきっかけを、「毎年恒例になった変身企画『脱げるカラダ』特集に応募してくださる参加者同士が楽しそうに話をしていたのを見て、コミュニティーとして立ち上げた」と振り返る。オンラインイベントは「初めての太極拳講座」などの実践系から、「正しい腸内環境の整え方」などの講座系まで幅広いが、いずれも雑誌やウェブサイトのコンテンツを一緒に作るプロが監修・出演。麻坂編集長は、「チームターザン」のメンバーは、「自分に合い、健康に寄与するものを積極的に取り入れる意識が高い」と話す。ここにメルマガ会員の「クラブターザン」から都度都度参加するメンバーを加えると、毎回150人程度がオンラインプログラムのライブ配信でつながっている(アーカイブ視聴も可能)。女性の参加も多い。「チームターザン」のメンバーは、熱量の高さから「クライアントイベントにも積極的」だ。例えば江崎グリコの「アーモンド効果」とのタイアップでは、参加者に90日間分の商品を支給。「チームターザン」のメンバーにはプロテインで割ったり、自炊する料理やデザートに取り入れたりと、クライアントの予想を超える楽しみ方をする人も多く、新たな気づきも提供している。

こうしたメディアとイベントの循環は、マガジンハウスの中でも「ターザン」だけという特別な組織体系にも起因している。「ターザン」は、髙橋ディレクターのような営業チームも編集部所属。だからこそ編集コンテンツはタイアップにつながり、さらには自然な形でマネタイズできるイベントへと発展するようになった。組織改変の原動力になったのは、副編集長の後、広告営業も経験した麻坂編集長。麻坂編集長は10年以上前から、まだ存在さえ浸透していなかったパーソナルトレーナーを探せるサイトを開発したり、フィットネスのグループセッションを企画したりと、「ターザン」のビジネスを雑誌やウェブサイト以上に拡張することに挑戦してきた。麻坂編集長は、「2018年にウェブサイトができて成長し、自分たちでも告知できるようになって、イベントビジネスも発展できる環境が整った」とさらなる好循環を思い描く。2月に西川貴教をゲストに招いて開催した「ターザン・デイ」のオンラインプログラムは、初日で4000人、1カ月で延べ1万人が視聴する人気コンテンツとなった。コロナ禍で浸透した“おうちフィットネス”の習慣に「ターザン」らしく科学的にアプローチすることで、雑誌やウェブの人気コンテンツをオンラインプログラムでも展開したり、反対にオンラインで人気のプログラムを雑誌やウェブで深掘りしたりの循環が生まれつつある。「イベントの成功は、編集長がどれだけリソースを割くことにOKが出せるか」と麻坂編集長。編集部スタッフと実績を積み重ね、今後もオン/オフラインイベントの可能性を模索する。

ファッションで言えば、毎号洋服やバッグ&シューズを紹介する巻頭ページのほか、隔号掲載のシューティングページも好評だ。特に「ターザン」読者は購入先など、掲載商品についての問い合わせが多いことで知られている。特にファッション・シューティングでは、今まさに各界で活躍するアスリートを起用したビジュアルへの反響が大きい。麻坂編集長は、「スポーツブランドを含めライフスタイル化するファッションと、そんなファッションをカッコよく着こなせるアスリートの掛け合わせは『ターザン』らしい」と、ここにも可能性を見出す。

「ターザン」(マガジンハウス)DATA
【雑誌】創刊:1986年、月2回発行 発行部数:10万8417(印刷証明付発行部数2023年1〜3月)
【WEB】 UU:110万 PV:610万
【SNS】 X:7万200 IG:10万8000 LINE:73万2000 YT:2万4200

問い合わせ先
マガジンハウス
tarzanweb-ad@magazine.co.jp