ファッション

イッセイ ミヤケ「アイム メン」の軽やかな衣服革命 100%植物由来の素材で残布ゼロの服

イッセイ ミヤケのメンズブランド「アイム メン(IM MEN)」は、東レが開発した100%植物由来のナイロン繊維“エコディアN510”を世界で初めて衣服製品に用いたシリーズ“ストリングス(STRINGS)”を2024年1月に発売する。アイテムはコート(14万3000円)とパンツ(8万2500円)で、カラーはブラウンとブラックの2色をそろえる。“ストリングス”の特徴は、イッセイ ミヤケの服作りの根幹“一枚の布”を基に、残布を出さず使い切るデザインだ。男性服の新たな可能性を探求する「アイム メン」は、“エコディアN510”の特性を生かした美しいデザインで服作りの革新に挑む。

「アイム メン」の服作り
“一枚の布”に込めた思い

「アイム メン」が100%植物由来のナイロン繊維“エコディアN510”に出合ったのは必然だった。「アイム メン」は2021年に始動。ブランド名の“アイム(IM)”は、1970年代後半から90年代にかけてのプロダクトブランド「アイム・プロダクト」から受け継いでおり、真摯なもの作りを継承していく。“一枚の布”の考えを男性服に生かしながら、シンプルな構造やデザインで、美しさと強さを最大限に際立たせたプロダクトを提案する。

一見するとシンプルな衣服には、折りたたみを計算したパッカブルの構造だったり、ひもを引っ張って形状が変化したりする仕掛けがあり、袖を通した際の独特な構造と、視覚的な面白さが体感できる。

チームによる多彩なアイデアが時代に左右されることのない衣服を作り、その衣服が日本のあらゆる技術を未来へつないでいく。だからこそ、地球環境に配慮した服の構造やテキスタイルは「アイム メン」には欠かせない要素なのだ。東レとのタッグで完成した“ストリングス”は、文字通り“一枚の布”のみを使い、衣服と繊維の技術者たちが、もの作りや地球環境の未来に思いをはせた結晶である。

残布ゼロの服作りが
未来に希望をもたらす

「アイム メン」の2024年春夏シーズンは、“フルフィル(FULFILL)”をテーマに、残布を出さずに布地の全てに役割を与えるもの作りに挑戦した。昨今の技術の進歩によって残布は再生可能な資源に生まれ変わってきたものの、まだその多くは破棄されているのが現状である。残布がない服作りが実現したなら、多くの人々に希望を示すことができるはず――そう信じる「アイム メン」チームの思いから、“ストリングス”は誕生した。“エコディアN510”を初めて手にしたチームは、その美しい素材感によって“ストリングス”につながるさまざまなアイデアが次々に湧き上がってきたという。

“エコディアN510”を使ったコートは、一枚の平らな布に数本のひもを通し、それらを引っ張ることで立体的な服に変形する。ロングコートの状態からひもをさらに引っ張ると、ブルゾンにもなる。ひもを引くことで生じるドレープが服にニュアンスを加え、軽やかに風になびくほどしなやかでタフなテキスタイルが体を優しく包み込む。

「アイム メン」は、100%植物由来のナイロン繊維を実現させた東レの高い技術をはじめ、イッセイ ミヤケの服作りを支える日本全国のクラフツマンシップを世界に発信し、次世代に継承していく。

高い技術を結集した
100%植物由来ナイロン

イッセイ ミヤケと同じく、地球環境への課題に対して素材開発で向き合ってきたのが東レである。両社はこれまで半世紀以上にわたって協業を続けており、東レが開発したさまざまな素材に、イッセイ ミヤケは新しいアイデアを吹き込んできた。

“エコディアN510”は、ヒマという多年草から作るセバシン酸と、トウモロコシを基にしたペンタメチレンジアミンを重合、紡糸した合成繊維だ。これまでも部分植物由来のナイロン生地はあったものの、融点の低さや染まりにくい、紡糸が難しいといった課題を抱えていた。しかし東レは一般的なナイロン糸とほぼ同じ強度と耐熱性の“エコディアN510”の開発に成功し、2022年1月に事業化をスタート。いよいよ量産化のめどがたったため、長年のパートナーであるイッセイ ミヤケに世界初となる服の生産を託した。

進化したもの作りで
男性服の未来を切り開く

「アイム メン」の2024年春夏シーズンは、“フルフィル(FULFILL)”というテーマに基づき、“ストリングス”を含めて主に5つのシリーズを提案する。生地の中心から4パーツに分割し、回転させながら縫い合わせた“インサイド アウト(INSIDE OUT)”など、残布を出さない知恵を凝縮したシリーズが今後も続々と登場する予定だ。“ストリングス”のアイデアでは、服に加えて、一枚の布のひもを引っ張ることで形状がバッグやハットに変化する“ストリングス バッグ”“ストリングス ハット”も提案する。

「アイム メン」の服作りは、“一枚の布”に立ち返った“ストリングス”によって新たなフェーズへと進んだ。これからもデザインの力で日常を快適にし、未来につながる男性服を創造し続ける。

問い合わせ先
イッセイ ミヤケ
03-5454-1705