ファッション

髙橋くみCEOに聞く 吸水ショーツ戦国時代に「ベア」が打つ次の一手とは 

 2020年6月、クラウドファンディングで9062人から1億円以上の支援金を集めて、デビューした吸水ショーツブランド「ベア(BE-A)」。この2年のあいだにアップデートを重ねながらラインアップを増やし、高機能吸水ショーツブランドとして、独自の地位を確立してきた。

 今年6月には、ベア ジャパン(BE-A JAPAN)とMNC New Yorkのグループ体制への移行を発表し、ホールディングスカンパニー・V Holdingsを設立。これまで二人三脚でビジネスを展開してきた髙橋くみベア ジャパン代表取締役CEOと山本未奈子MNC New York代表取締役CEOが、両社が展開するブランドにそれぞれ注力し、シナジーを産む。

 ベア ジャパンは先進的なウエアラブルIoT技術を開発するミツフジと業務提携し、経血を計測できるショーツの開発に着手する。吸水ショーツの新たな展開を切り開くベア ジャパンの髙橋くみCEOは、現在の吸水ショーツ市場を「吸水ショーツ戦国時代」と表現。「ベア」がデビューしてから2年の間の市場の変化と、今後の展開を聞いた。

WWD:「ベア」の立ち上げから、2年が経った。吸水ショーツ市場はどのように変化しているのか。

髙橋くみCEO(以下、髙橋):実は私たちが吸水ショーツを作ろうと思ってから4年半が経ちます。吸水ショーツは欧米を中心に流行っていたもので、当初は輸入を考えていました。ですが、実際に使ってみると穿き心地や耐久性に納得できず、自分たちで作ろうと決意。当時吸水ショーツは国内では目新しい製品ですし、工場探しは難航しました。2年半前にやっとの思いで形になり、クラウドファンディングに至りました。たくさんの人に支援をいただいて良い形でスタートできましたが、この2年ほどで大手下着メーカーやアパレル企業からも新ブランドが続々と登場しています。消費者にとっては、それぞれがどのように違うのか、そして吸水ショーツの良さをまだ知らないという人も多いのが現状だと考えています。

WWD:吸水ショーツを試したことがないという人も多い。

髙橋:一度穿いてもらえたら、生活自体が変わるほどの商品だと思っています。それを普及させるためには、便益が分かるように市場を広げていかなければなりません。正直に言えば、中には機能性や穿き心地がいまいちなものもありますし、われわれのこだわりや良さを伝えていかなければなりません。

WWD:最新作“ベア エアライト ショーツ”の発表会で、現在の市場を「吸水ショーツ戦国時代」と表現していたのが印象的だった。ブランドや製品が豊富になる中で「ベア」の立ち位置は。

髙橋:「ベア」は高価格帯吸水ショーツカテゴリーに位置し、吸水量はもちろん、漏れにくさやにおい対策など機能性の高さで支持をいただいています。生理は年間12回とすると、開発する私たちも年間で12回しか試作品を試すことができません。そこで、約7000人もの実際に使ってくださっている人の声を毎週のようにオンラインでヒアリング。加えて「ベアサークル」と称して、“サニタリーライフをよくしよう”というミーティングも頻繁に行っています。また購入者には、アンケートに答えていただけるような動線を作っています。ポジティブな声だけでなく、1つ1つを拾い上げるようにしています。

WWD:「ベア」の取扱店舗はECやドラッグストアから百貨店まで、幅広いのも特徴だ。どのような考え方、戦略で販路を拡大しているのか。

髙橋:吸水ショーツ自体の認知度をあげていきたいので、ECだけでなく百貨店やドラッグストアなど、いろいろな場所で「こんな選択肢があるんだ」と認識してもらうことが大切だと考えています。時代的にも吸水ショーツに興味を持っている人も多く、低価格帯の製品がたくさんある中でも、「ベア」がうたう高機能とはどんなことだろうと実際に手に取ってくれる人も多いです。昨年は“フェムテック”が新語・流行語大賞にノミネートし、リテールのバイヤーさんからの理解や共感が深まっています。一緒に時代を作っていこうという思いでいてくださる取引先も多いですね。

フェムテックを超えてヘルスケアに挑む
「ベア」のネクストステージ

WWWD:今年6月、ミツフジと提携し「経血量を測定できる吸水ショーツ」の開発へ着手することを発表した。

髙橋:これまで生理について語られてこなかったからこそ、より快適にしようという動きがありませんでした。女性にとって生理は40年にもわたって付き合うものにも関わらず、改善されてきませんでした。そんな生理について考えるきっかけとしても吸水ショーツは機能しています。さらに、自身の経血量が分かるようになれば、生理や健康に対する意識は変わるのではないでしょうか。生理の不調が内膜症や子宮筋腫などの病気に気づくきっかけになることもありますし、生理だから体調が悪いと思いがちですが、実は貧血だということもあります。今、生理による労働損失は4960億円にのぼるとも言われています。自分の経血量を知り、どういった理由で不調なのか。生理が可視化されて、一人一人が向き合うことで、労働損失も減っていくのではないでしょうか。

WWD:どのようにして実用化に踏み切るのか。

髙橋:実用化に向けた実証実験を来年早々には始めていきたいですね。そのために、ミツフジとベアジャパン、福島県川俣町で3社協定を結びました。

WWD:フェムテック企業が自治体と手を結ぶということも新鮮だ。

髙橋:川俣町は東日本大震災のときに、多くの避難者を受け入れました。着の身着のまま避難する中で、生理用品を持って避難した人はいませんでした。防災用品としても生理用品の備蓄がなく、民家を1軒1軒回って、町全体で協力して生理用品を集めたというエピソードがあります。そのときに、女性にとってどれほど生理用品が必要なものなのか、男性を含めて役場での理解が高まったのです。そんな経験があるからこそ、川俣町は生理へのリテラシーが非常に高いのです。

WWD:MNC NewYorkとベア ジャパンをホールディングス化して、V Holdingsを設立した狙いは?

髙橋:「シンプリス」は美容ウエルネスブランドとして14年前に立ち上げ、「ベア」は吸水ショーツブランドとして2年前にスタートしました。どちらも山本と二人三脚で、女性で構成される同じチームでやってきました。これからさらに両方を成長させていきたいと考えた時に、体制を変える決断をしました。どちらも女性向けの商材で、「シンプリス」も「ベア」も成長させていきたいし、女性のライフスタイルそのものを変えていきたいという思いは一緒です。生理だけでなく、更年期にも目を向け、ライフステージによって起きるペインに向き合う商品を提案していきたいですね。

WWD:組織体制にも変化が生じたのか?

髙橋:われわれの強さは、3人の執行役員が14年もの時間をともに全てを分かち合ってきた仲だということ。それに加えてこの体制変更を経て、ミドルマネージャーの育成にも力を入れていきます。リーダーを増やしていきたいですね。実は社員を募集すると、900人ほどの応募をいただくこともあるんです。当社はフルフレックスを取り入れているので、豊富な経験を持っていたり、仕事と子育てを両立させていたり、いろいろな環境に身を置くメンバーでチームが成り立っています。企業の成長には人の成長が欠かせません。長い時間を共にしているメンバーと作っていることも楽しみですし、さまざまなステージを経て女性のみの会社としてチャレンジしています。そんな思いもあるので、人材育成にも注力していきたいですね。

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