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【9月23日まで無料公開】島国ニッポンで広がる漁網リサイクルの可能性 服や鞄へ【海の危機、私たちはどう動く?】

 島国、ニッポン。全国に2800近い漁港があり、漁網は年間約2万トン生産され、数年後には産業廃棄物として埋め立て、焼却処理をされている。漁網の素材の約3割がナイロンであり、これをごみではなく資源としてマテリアルリサイクルしようという動きが出てきている。海や魚は多くの人にとって身近な存在なだけに、漁網リサイクルは資源活用に加えて町おこしや教育といった社会活動へつながっている。

 日本における廃棄漁網のマテリアルリサイクル使用のカギを握る企業がリファインバースだ。2003年創業の同社は再生樹脂製造販売を生業とし、業務用カーペットや自動車エアバッグといった従来コストをかけて処理してきた廃棄物を収集・中間処理し、独自のテクノロジーを用いてリサイクル素材として活用するビジネスを展開している。

 漁網のリサイクルについては19年に本格的にスタート。北海道厚岸町で廃漁網の回収・分別などを行い、愛知・一宮でペレット化。当初はプラスチックパーツとして販売していたが、同タイミングでアパレルからのニーズが高まったことで、現在は年間約20トンの廃棄漁網を扱い、協力工場で紡糸を行い「リアミド(REAMIDE)」のブランド名で販売している。

 「サステナビリティやサーキュラーエコノミーは、理論やプランだけでは実現できない。廃棄物を運ぶ車両や処理設備、資源化・素材化の技術やノウハウ、循環を支えるネットワークが重要だ」と同社。漁網については同じナイロン素材で実績のあるカーペットのリサイクル技術を応用できるというが、漁網独特の課題が搬送と洗浄だ。塩気を含み、砂や有機物が付着する魚網を回収・運搬、洗浄する工程が技術的にもコスト的にも負担が大きい。今月には北海道・苫小牧にリサイクルの新工場を竣工した鈴木商会と業務提携し、量産化に向けてステップを進めた。

漁網は地産地消のモデルが描きやすい

 マテリアルリサイクルの強みを同社の玉城吾郎取締役素材ビジネス部長は「出自がはっきりしており、地産地消のモデルが描きやすいことだ」と話す。どこの誰が使用していた漁網であるかがわかる、つまりトレーサビリティーがとれていることはリサイクルアイテムを手にする消費者からの信頼につながる。

 同社の糸を使用している例を見てみよう。釣り用品の「ダイワ(DAIWA)」は3月に「楽天 ファッション ウィーク東京」に参加し、漁網アップサイクルプロジェクトを発表。表参道ヒルズでインスタレーションを行い、同ウィークのSDGsレポーターである長濱ねるが漁網をリサイクルしたドレスを披露した。インスタレーションで見せたのは、北海道の漁港に始まり、再生された服を漁協関係者が着る循環のストーリー。「ダイワ」を手掛けるグローブライドはアパレル「ディーベック(D-VEC)」も手掛け、その中で漁網リサイクルナイロンも使用している。漁網をフックに海とつながりを伝えるブランドストーリーは消費者にとって受け取り・共感しやすいものと言えるだろう。

 リサイクル糸全般がそうであるように、漁網リサイクルナイロンも長繊維化に課題が残る。向いているのが地厚さを生かせるバッグやインテリアといったアイテム。兵庫県豊岡市は日本有数の鞄の産地であり、美しい海で知られる。兵庫県鞄工業組合による地域団体商標「豊岡鞄」は現在、「100年後も豊かな海と鞄に支えられた街であるために」をモットーに、14社が参加し廃漁網を有効利用する取り組みを2021年から行っている。海の町の子どもたちが漁網リサイクルのスクールリュックで育つ。説得力のあるストーリーだ。

【漁網リサイクルの可能性】
東海正/東京海洋大学学術研究院教授
 プラスチック製品生産量全体に占める漁網の割合は0.2%程度と少ない分、リサイクル対策は遅れたが、ここにきて海洋分解性プラスチック使いや、使用済み漁具の回収・再利用を進めようといった声が高まっている。漁網に使うナイロンは高品質な物が多く、水平リサイクルは可能だが、課題もある。複合素材使いや加工してあるものも多く、塩分を含み貝殻などの付着物があるため解体、分別は困難。また、漁業者がそれぞれに持つ漁具を集めて運搬する物理的課題もある。最近は、いろいろな企業が漁網リサイクルに関心を寄せており、漁業関係者からリサイクル業者へ、集積して処理するシステムをうまくつなげてコストを下げることでリサイクル利用が進むことを期待している。


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