
コロナ禍において、ファッション業界で一気に浸透したことのひとつが「オンライン展示会」だ。新興サービスも次々と登場し、各社がサービスの差別化にしのぎを削っている。展示会の開催手段としてのデジタル化が浸透し、その先にファッションビジネスはどう変容していくべきなのか? 展示会のデジタル化から始まる「展示会のDX(デジタルトランスフォーメーション)」のあり方について、いち早く取り組んできた「ターミナル(TERMINAL)」を運営するターミナルの伊奈亮輔社長に話を聞いた。
オンライン展示会開催は
あくまでもデジタル化の
スタートライン

「コロナ禍で、ターミナルのサイトにも“オンライン展示会”という検索キーワードでの流入が増えた。しかしリアルの展示会の代替としてデジタル展示会をやるのはただの対処療法にすぎず、ターミナルが目指すところではない」と伊奈社長は語る。実際に数ある“オンライン展示会”と呼ばれているサービスを比較すると、その内容には大きな違いがある。イメ―ジを大切にするファッション業界ではフロント側のリッチなウェブ表現の違いが目につきがちだが、各サービスとの一番の大きな違いは「既存の業務プロセスにどれだけ浸透できるか」という点にある。
2015年にサービス提供を開始したターミナルは、もともとはオンラインで展示会を行うことではなく、リアルで行われる展示会において、紙ベースで煩雑になりがちな受発注をデジタルで一括集計できるサービスからスタートした。「ファッションビジネスをデジタルで支援するという理念は、設立当初から変わらない。以前から、国内にあるアパレル業務向けのサービスは、システムを開発して終わり、要望に対応したら終わりというものがメイン。しかし担当者もそのプロではないので、問題解決にベストな要望を出せていないことが多く、結局使えないサービスばかりという印象だった。なので、まずは負荷の大きい展示会に関する業務を減らすために、ターミナルを活用して受発注業務の効率化を提案した」。
ターミナルを通じて
あらゆる課題を解決し、
ビジネスの全体最適を実現
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ターミナルにとって、展示会のデジタル化はファッションビジネス支援の入り口にすぎず、その本懐は「その先」にあると伊奈社長は言う。現在は展示会の受注データをまとめるだけではなくラインシートの作成、セールスレポートの出力、納品書の作成など、できることは多岐にわたっている。「まずは展示会をデジタル化し、受発注業務の効率化が最初のステップ。さらに展示会のデータを使い、生産、物流、基幹システム、EC、商品マスター作成など、ターミナルを組み込んだファッション・ビジネスの全体最適を図る業務フローの改善の提案までもします。ツールの提供はただの手段の一つにすぎず、それを使って組織の抱えている問題を解決できることが、ターミナルの考える真のDXだ」。
国内の中小ファッションブランドやセレクトショップの支援から始まったターミナルだが、大手取引先が増えたことで、変化したこともあると言う。「代理店や問屋と取引をするときに、ターミナルを使ってもらう座組や、特殊な商取引慣習がある商材を扱うときのデータの連携の仕方など、業界や規模感に合わせてきめ細かく対応できるよう、ターミナル側も常にアップデートし続けなくてはならない」と。国内のデジタル展示会の先駆者であるだけでなく、導入ブランドが内包する問題を解決すべく伴走し続ける姿勢が、展示会の真のDXにつながっている。
有力セレクト&有力ブランドから
高い評価
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森威/Bshop社長
バイヤーとして最初に利用をしたのは2015年頃でした。展示会には必ず訪問をするようにしていますが、オーダー画面も日々進化を感じますし、発注の意思決定もしやすいです。グループではブランドとしても利用していますが、業務の生産性が飛躍的に向上したと報告を受けています。
田辺雄一郎/トゥモローランドバイヤー
現在は20ブランド超の発注にターミナルを使用しています。海外のサービスも使っていますが、発注のしやすさという点ではオーダー画面が充実しているターミナルがもっとも優れていると感じています。特にこの1年で導入するブランドが増えた印象です。
黒石奈央子/「アメリ」社長兼クリエイティブディレクター
展示会の受注業務の効率化を目的に導入をしました。コロナ禍以前より卸、PR展示会に加え一般のお客様の先行予約会でも活用しています。データの一元化により、速報値の把握や、実績の分析をスピーディーにできるようになりました。
小野田 剛/TSI第3事業 ディヴィジョン第2事業部長
コロナ禍が後押しをしましたが、オンラインでの展示会開催は以前から考えていました。表現の幅が広がったことで、来場の難しい取引先からのオーダーも増加しました。結果的に展示会経費の削減やスタッフの残業も軽減しました。
浅川 喜一朗/「シュタイン」デザイナー
導入前から周囲から良い評判を聞いていました。展示会では事前に公開をしておくことで、会場ではゆっくりと洋服をみていただけるようになりました。データを営業・生産などに簡単に活用できることも大きなメリットです。
ターミナル
03-6455-2268