ファッション

「コーチ」が新ビジョン“コーチ フォーエバー”に込めた環境への思い

 1941年にニューヨークで創立され、今年で80周年を迎えた「コーチ」は、環境に配慮して制作した2021年スプリング・コレクション“コーチ フォーエバー”を発表した。スチュアート・ヴィヴァース=クリエイティブ・ディレクターは、同コレクションを語る上で「実践」「学び」という言葉を繰り返し、リサイクル素材や“ナチュラルレザー”の使用、アーカイブの復刻、“アップサイクル”などをコンセプトにデザインをすることで、環境やコミュニティーへの責任を示した。ここでは、挑戦しながら進化し続ける「コーチ」の新たな一面を象徴する“コーチ フォーエバー”の特徴を紹介する。

過去のコレクションピースや
リサイクル素材で作ったバッグ

地元ニューヨークへの愛を込めた
カプセルコレクション

 地元ニューヨークの職人とのコラボレーションも初の試みとして実施。職人技術の魅力を届けるため、家族経営の小さなニット工場や刺しゅう工房に依頼して“A Love Letter to New York”と題したカプセルコレクションを“コーチ フォーエバー”の中で制作した。“NEW YORK”の文字やてんとう虫、花などを刺しゅうしたアウターウエアやバッグを展開している。

 日本の店舗でも、今シーズン販売するレザーバッグなどの一部アイテムに、好みの刺しゅうを施せるサービスを期間限定で実施する。アルファベットを自由に組み合わせたイニシャルやお気に入りの言葉、または「コーチ」を象徴する9つのモチーフから選ぶことができる。刺しゅう糸は10色。(※詳細は、記事の最後にあるINFORMATIONをチェック!)

歴代の人気アイテムも
アップデートして復刻

スチュアート・ヴィヴァースが語る、
“クリエイティブとは、前進すること”

WWDジャパン(以下、WWD):今シーズンのコレクションの着想源は?

スチュアート・ヴィヴァース=クリエイティブ・ディレクター(以下、スチュアート):当初は、ニューヨークのアッパーイーストサイドをインスピレーション源にしていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大によって状況が一変し、私たちが取り組んでいたことの多くが、無意味でちっぽけに感じられたんだ。だから従来とは違う視点で制作しようと自然な流れで方向転換し、環境への責任やコミュニティー、前向きな姿勢をコレクションを通じて伝えたいと考えた。直感的に、自分自身のアイデアをさらに深く掘り下げる必要があると感じたんだ。

WWD:昨年の夏には双子の父親になるなど、プライベートでも変化があったが、その影響は?

スチュアート:親になったことで、次世代のためにより良い未来を作っていきたいという気持ちがさらに強くなった。そして、今シーズンのコレクションで表現したかった“環境に配慮したものづくり”は、より急を要するものだと実感した。

WWD:テーマを“コーチ フォーエバー”にした理由は?

スチュアート:「コーチ」のレガシーとファッションのライフサイクルという意味を込めた。本来なら廃棄される素材の再利用や、リサイクルを前提とした循環型デザインを意識した。また、若い世代が50〜60年前の「コーチ」のビンテージバッグを持っている姿を何度も目にし、ブランドが永く続いていく願いを込めて“フォーエバー”という言葉で表現したんだ。

WWD:“環境への責任”という言葉が印象的だったが、その責任をどのように捉え、打ち出そうと考える?

スチュアート:コレクション制作の過程で気付いたのは、私自身がサステナビリティについてもっと学ぶ必要があるということだ。最初から完璧でなくていい。環境に配慮したデザインプロセスによって環境負荷がどれくらい軽減されるかなどを、私たちチームは常に考え続け、実践することで学んでいる。固定観念を捨てて、サステナビリティに対してオープンな姿勢で取り組んでいきたい。そこで、私たちが描くビジョンを、環境や自然、お互いに対する“責任”という言葉で示した。

WWD:具体的に“責任”をどうアイテムに落とし込んだ?

スチュアート:今シーズンは、アーカイブの復刻や“アップサイクル”の手法、リサイクル素材やオリジナルの“ナチュラルレザー”を取り入れたコレクションを制作した“。ナチュラルレザー”は、イタリアの工場を訪れた際にオーナーから「祖父の代から受け継いでいる技術で、素材を埋めると土に還る」と聞き、レザーから始まった「コーチ」のルーツと重なった。だからそのレザーを用いて新しい「コーチ」を表現したいと考えたんだ。

さらに、“責任”は生産工程全体も指している。今回新たに挑戦したのが、コミュニティーへの還元だ。ニューヨークはパンデミック初期、厳しく苦しい状況にあった。そこで、地元のメーカーを支援するために“、A Love Letter to New York”と題したカプセルコレクションも“コーチ フォーエバー”の中で発表した。職人たちが、アイテムに刺しゅうを施したり、アポロのセーター、キース・ヘリングのTシャツ、モトジャケットなど、最近のコレクションからお気に入りのアーカイブピースを制作したりした。今までになかった新しい試みで、ニューヨーク発の素晴らしさを証明するものに仕上げることができた。

WWD:具創立80周年を迎えた「コーチ」の今後のビジョンは?

スチュアート:今の時代をとにかく生きること。適切なものとつながり、正しいと思うことを信念を持って実践していきたい。この1年で物事が急速に変化した。私たちはそんな世界の状況に目を向けながら常に実直であり続け、リアルでオーセンティック、かつオプティミスティックな「コーチ」を進化させる。もちろん“コーチ フォーエバー”のコンセプトも継続させ、さまざまなテクニックを研究しながら、新たなアプローチを試験的に取り入れていく。クリエイティブとは、前進することだから。

INFORMATION
アイテムに刺しゅうができる期間限定サービスを開催

開催期間:3月12〜31日
開催場所:「コーチ」表参道、「コーチ」銀座、レイヤード久屋通パーク、心斎橋パルコ、大丸札幌の5店舗(要予約)
納期:最大1カ月
価格:ワード(最大10文字・スペースも1文字換算)、モチーフ1点/各5000円

PHOTOS : © 2020 JUERGEN TELLER(LOOK IMAGES)

問い合わせ先
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750