ファッション

「アパレル唯一の弱点」は解消可能 他業種が血を流して得た解決法を伝授

 メーカーは作りたいものを作り、消費者は欲しいものを買って個性を表現するというアパレル業界は、人間の根源的なニーズを叶える魅力的な世界だ。しかし、他業種と比較してモノを売る企業の命綱とも言えるサプライチェーンに光が当たっていないから、大量生産・大量廃棄から脱しきれておらず、業界が停滞する大きな原因になってしまっている。そこで世界的なコンサルティング企業のゴールドラット・ジャパン(GOLDRATT JAPAN)は「アパレルの常識は、業界の非常識」と訴え、他業種が血のにじむ思いで確立した知見を交えながら、採用すると在庫と廃棄が減少したのみならず、生産のリードタイムが圧縮され、経営まで改善した理論を提案する。岸良裕司ゴールドラット・ジャパン最高経営責任者(CEO)に、その理論を聞いた。

 まず岸良CEOは、「ルールを変えたゲームチェンジャーが勝つ世界」であり、「売れる・売れないの決定的な要因は、商品力や陳列方法など数値化できない」ものばかりなどの理由で、AI(人工知能)などのテクノロジーが発展しても、アパレル業界で予想を立てることは非常に困難と指摘。これを踏まえ、市場の売れ行きに応じて在庫量を調整する「需要連動型」の生産モデルを確立すべきと説く。

 家電業界はかつて、日々刻々と価格が下がり、過剰在庫のダメージも深刻だった。結果かつては「作りすぎはあの世行き」と言われたが、今は数百点の部品が必要な商品さえ少量多品種で、需要に連動して柔軟に対応するサプライチェーン革命を実現。それをグローバルにリードしたのは、日本だ。これを踏まえ岸良CEOは「アパレルでも一度に思いっきり作りすぎず、まずは半分くらい作って、残りは生地とパーツの状態で保管、必要があれば少量をすぐに生産できる能力をもつ工場は、日本のみならず海外にもある」と続け、「需要連動型」の生産モデルはすでに可能だと主張する。リードタイム圧縮の手段となる「いずれ生地は必ず買い取る」という注文書を発行することで素材を縫製メーカーに抱えてもらう体制については、この提案を取り入れるメリットと、取り入れないデメリットの双方を明示することで、その意味を説いた。

 また予想を立てる際は、日ごとのばらつきが大きい店舗よりも、統計的にもばらつきが小さい倉庫での予想を勧め、同時に店頭在庫量の抑制を指南。次の補充まで品切れしないだけの在庫をこまめに送る体制構築のためにも、在庫に関しては倉庫で情報を一元管理し、それを工場と共有する意義を語る。在庫を材料で持つと、リードタイムが圧縮され、予想の精度が上がるからこそ、市場の変化に素早く対応できるようになるともいう。すると欠品と過剰在庫の双方が減り、欠品で逃していた売り上げや過剰在庫に費やしていた費用、つまり会社の「埋蔵金」が解放されることを実践事例とともに説いた。

 下のリンクでは、アパレルの非常識を疑い、他業種の常識を学んできた「WWDジャパン」の記事の特別版が入手できる。末尾には、改革に向け、工場との協力関係改善に向けた提言も盛り込んだ。参考にしながら、岸良CEOが「アパレル業界の唯一の弱点」と話すサプライチェーンを改革し、サステナブルへの転換を進めながらビジネスも好転させたい。

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ゴールドラット・ジャパン
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