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ロレアルが「EC化率50%を目指す」と宣言 ゲームやeスポーツなどの“リテールテインメント”に注力

 2020年1〜9月のデジタル事業での売上高が48億ユーロ(約5904億円)を記録したロレアル(L’OREAL)は、今後売り上げの50%、売り上げをけん引するグロースドライバー(成長推進力)の50%、さらに消費者とのコミュニケーションの80%をデジタルに移行する方針を明らかにした。現在グループ全体の売上高の24%を占めるEC事業だが、さらなる成長を促進するため、D2Cから従来のオンライン販売まで、さまざまな形態のデジタルリテールを活用する。

 なお、同社は米国でビデオチャットを用いた個人向けのカスタマイズ・ヘアカラーサービス「カラー アンド コー(COLOR & CO)」を通じて、サブスクリプション(定額制)を基本としたEC事業モデルを展開している。また、SNSを活用したソーシャルショッピングは中国ではすでに約1300億ドル(13兆5200億円)を生み出す巨大市場となりつつあり、同市場のEC売り上げの10%ほどを占めている。このように、すでにさまざまなデジタル戦略を施行している同社だが、ルボミラ・ロシェ(Lubomira Rochet)=チーフ・デジタル・オフィサーは11月5日に行われたデジタル記者会見で、今後のDXのためにさらに強化するデジタル戦略について説明した。中でも注力するのは、最近台頭しているリテールテインメント(リテール+エンターテインメント)やソーシャルコマース、ビューティテックなどだ。

ゲームやSNSを活用したショッピング体験

 ゲームやeスポーツなどのリテールテインメントは、さらなるデジタル化に一役買うと期待を寄せる。「今の消費者にとって、エンターテインメント要素があることも重要だ。特にZ世代を中心とした若者の間では美容製品の消費の仕方が変わりつつある。ビューティ市場の未来には、ライブ配信、ゲーム、ビューティテック、リテールエンターテインメントが大きな要となるだろう」と話す。このことから、「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」はツイッチ(TWITCH)でライブ配信を行い、中国のテンセントQQ(TENCENT QQ)でユーザーがゲーム内のアバターにメイクを施せるサービスを開始した。

 また最近は皮膚科医や化粧品研究員、美容部員、メイクアップアーティストをはじめとするプロのコンシューマー (通称プロシューマー)やマイクロインフルエンサーによる情報発信も、消費者の購入に影響を与えている。このようにメーカーからの発信だけでなく消費者同士のコミュニケーションが活発になる中で、ソーシャルメディアを活用したソーシャルセリングも盛り上がりを見せている。この動きは、110年以上もの間にわたり世界中のヘアスタイリストや皮膚科医、メイクアップアーティストと関係を保ってきた同社にとっては強みなると続ける。「彼らがオンライン上で発信し、インフルエンサー化すると、われわれのブランドや製品をSNS上で宣伝・販促するソーシャルセラーになる」。そのため、「ランコム」は3月8日の国際女性デーに向けて、中国で2300人のビューティーアドバイザーをソーシャルセラーおよびインフルエンサーにするためのトレーニング行った。

 また、消費者同士のコミュニケーションは、消費者とメーカーの関係性にも影響を与えたという。これまではメーカーが消費者に対して一方的に訴えかけるマーケティング手法が主流であったが、消費者がメーカーに対して声を上げることも増え、特に新型コロナウイルスでその動きはさらに活発になっている。その証に、全ての販売チャネルで消費者からの(製品やサービスに対する)リクエストが40%増加しているという。それら全てのリクエストに対応することが顧客満足度やブランドに対する信頼、支持につながると話す。

ビューティテックも拡大

 ビューティテックも、同社が以前から投資を続けてきた分野だ。Tモール(TMALL)やアマゾン(AMAZON)、ウィーチャット(WECHAT)、ピンタレスト(PINTEREST)といったプラットフォームにモディフェイス(MODIFACE)のAR技術を導入しており、バーチャルのタッチアップを提供している。その結果、消費者はバーチャルのタッチアップを7分以上も行い、購入率は(通常に比べ)3倍となっているという。
 
 今後はモディフェイス(MODIFACE)の技術をグーグル(GOOGLE)傘下のユーチューブ(YOUTUBE)や検索エンジンに組み込む計画だ。例えば、アイライナーやリップスティックをグーグル検索すると、検索結果のページから直接タッチアップのバーチャル体験に進むことができたり、インフルエンサーの動画で紹介されている製品のバーチャルタッチアップを体験したりすることも可能となる。なお、グーグルが自社のソフトウエア・システムに外部の技術を適用するのは初めての試みだ。

 これらDXにより「美容は今後ますますパーソナライズ化されるとともに、よりプライベートなものになるだろう。プライバシーや個人情報の保護はますます重要になる」とロシェ氏。美容サービスをパーソナライズ化するためには、データの集積やアルゴリズムの構築が必要だが、ロレアルはそうしたデータの保護に慎重な姿勢だ。同社が運営するウェブサイトでは、データの収集方法や利用目的を説明したプライバシーポリシーを表示している。「それだけでは十分で、消費者から個人のデータを収集する代わりに、それに値する付加価値を提供しなければならない」と話す。例えば肌診断器で消費者の肌データを集積する代わりに、消費者に対してこれまで以上に精密で信頼できる肌分析結果を届けないと、信頼につながらないと指摘する。これを「バリュー(価値)のエクスチェンジ(交換)」と言い、デジタル化が加速するにつれ、ますます重要になると予測する。

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