鮮烈なデビューショーから1年。「シャネル(CHANEL)」のマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)は、プレタポルテのメーン・コレクションとしては3回目となる2027年春夏シーズンも、創業者ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)との“対話”を続けている。「女性たちが自分らしく、そしてありたい自分でいられるキャンバスを創りたい」と先シーズンも話していた彼が今季表現したのは、「ひとつの存在に宿る異なる表情」。女性はその時々によって異なるアプローチで自身を表現しているという点に着目し、「ガブリエルという1人の女性が、やがてシャネルとなっていく物語」を描いた。
「1年前に『シャネル』で仕事を始めて以来、チームやアトリエと共に、“女性”という概念を広げていくことに取り組んできた。つまり、それはただ1人の女性ではなく、『シャネル』の世界に足を踏み入れたり、その一員となったりしうる、さまざまな女性たちだ」。米「WWD」にそう語るマチューは今季、ボクシーなクロップド丈のジャケットをはじめ、ローウエストのスカートやパンツ、メンズライクなシャツ、エフォートレスなドレス、ツイードやカメリアの多様な解釈など、この1年で築いてきた新しい「シャネル」のスタイルを発展させながら、これまでで最も幅広い提案を見せた。
創業者の歩みを現代的な視点で表現
特に新鮮に映ったのは、セカンドスキン(第2の皮膚)のように体に沿ったシルエットだ。ショーは、ボディウエアを想起させるシアーなジャージー素材のドレスで開幕。透け感のあるニットのセットアップから、ボディーコンシャスなトップスやドレススタイルまでが登場した。ジャケットもコルセットのボーン(芯材)のようなラインを装飾としてあしらったり、リボンベルトでウエストをシェイプしたり。そこに重ねたのは、若かりし日のガブリエルの姿。かつて女性たちの体を束縛していた装いを軽やかに解放していくさまを、現代的な視点を通して表した。
また、ガブリエルが生み出した女性のためのスーツスタイルの再解釈も豊富にそろう。例えば、ジャケットの袖を切り落としたように切りっぱなしで仕上げたベストや、たくさんのボタンを首元や袖口にあしらったジャケットもあれば、シアー素材にツイードでチェック柄を描いたデザイン、遊び心を感じるトロンプルイユの表現もある。丸みのあるショルダーラインが特徴的なクロップドジャケットには、幅広のベルトでアクセントを効かせたローウエストのスカートや軽快なミニスカートを合わせた。
新素材で作る次世代の“シャネル スーツ”
終盤には、マチューが思い描く未来を示すように、1年をかけて新たに開発したという伸縮性のある生地「スモッキング ツイード」でボディウエアと呼応するしなやかさと自由な動きを実現したスーツやドレスを披露した。ラストルックで次世代の“シャネル スーツ”をまとったのは、ショーのオープニングも飾ったモデルのディアニラ・ハーブッシャー(Dyanira Hurbuscher)。手には、ファーストルックと同じようにガブリエル本人が所有していたという“2.55”バッグを携え、過去から現在、そして未来へと続くストーリーを完結させた。
そんな「シャネル」というメゾンの本質を語る上で欠かせないのは、「自由」。「鳥のように飛翔を遂げたガブリエル・シャネルの人生は、その歩みとともに、自由に向かってひらかれていった」とマチューは述べる。その言葉を映し出すように、会場となったグラン・パレには95羽の鳥をモチーフにしたオブジェが羽ばたいていた。それは、ガブリエルやメゾンへの理解を深めながら自由な感覚とアイデアを生かしたクリエイションによって、さらに遠く、高くへと進んでいくマチューの姿にも重なった。