ファッション

フューチュラが語る“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”との邂逅と、武器を持たない“ポイントマン”が示す未来

フューチュラ/グラフィティアーティスト

PROFILE:1955年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。1970年代初頭の15歳頃からフューチュラ 2000を名乗り、地下鉄を中心にグラフィティを描き始めると、文字装飾が主流だったシーンで抽象的なアプローチを取り入れ注目を集める。その後、“抽象グラフィティの先駆者”として音楽、ファッション、トイカルチャーなどを横断して活躍し、70代を迎えた今もなお新たな表現を開拓し続ける、ストリートアートシーンの生ける伝説 PHOTO:RYUSEI SABI

1970年代のストリートアート黎明期のニューヨークにおいて、フューチュラ(FUTURA)は、繊細なスプレーワークと抽象表現、SF的な世界観を取り入れたグラフィティでシーンを切り拓いた。以来、ストリートアートの枠組みを飛び越え、ファッションや音楽など多様なシーンでもカルチャーをけん引してきた生ける伝説は、次なる協業の相手として「レゴグループ(LEGO GROUP)」を選んだ。

今回発表されたのは、両者による長期的なパートナーシップの締結で、フューチュラは今後、ニンジャを主人公にファンタジーとアクションで子どもを中心に熱狂的な支持を集める“レゴ®ニンジャゴー レジェンド(LEGO® NINJAGO®: Legends)”のクリエイティブ・コラボレーターおよび共同アートクリエイターとして、ストーリーやキャラクター、プロダクトに新たな命を吹き込んでいくという。その第一歩として、このたび彼のクリエイティビティを注ぎ込んだ3体の大型フィギュア作品が制作された。カウンターカルチャーを出発点とするストリートアートシーンの重鎮は、なぜ世界的なメインストリームの企業と交わり、いかにして自らのアイコニックなモチーフ“アトム(Atom)”やキャラクター“ポイントマン(Pointman)”を融和させたのか。来日した本人に、その真意を聞いた。

「ひとりの愛好家として協業を望んできた」

ーーまずは、「レゴブランド」とのコラボに至った経緯から教えてください。

フューチュラ:正直なところ、10年以上前から「レゴブランド」とコラボがしたかったんだ。というのも、1980年代半ばに息子が3歳になったタイミングで買い始めて以来、40年ほど前から集めてきたコレクターだからね。ただし、所有しているのはパッケージされたセットではなく、膨大な数のレゴ®ブロックとレゴ®ミニフィギュアだね。私のインスタグラムを少し遡ってもらえれば、単におもちゃとして遊んでいたわけではなく、実際に家具として機能するようなスケールの作品までレゴ®ブロックで組み立てているのが分かるはずだよ。

「レゴブランド」は常に、子ども時代に芽生える想像力や好奇心を象徴している。それは若者であれ、大人であれ、私のような“最も年老いた子ども”であっても変わらない。ひとりの愛好家として協業を望んできたなかで、2年ほど前にプロジェクトが現実味を帯びてきたときは、運命としか思えなかった。時間をかけた分、きわめて自然に進めることができたよ。

ーーあなたのルーツであるグラフィティは、街や地下鉄といった公共空間をキャンバスに生まれたカルチャーですが、これまでに洋服やスニーカー、レコード、トイなどを通じても表現してきましたね。その中で、今回は何を意識して作品を手掛けましたか?

フューチュラ:まず、普通のレゴ®ミニフィギュアでは小さくて極細の筆で描かないといけなかったから、大型のフィギュアがベースになったのは幸いだったね(笑)。スニーカーも、Tシャツも、レコードも全てが違う媒体だから、それぞれに応じた思考や周到な計画が必要で、型通りの定型(クッキーカッター)のようにワンパターンで済むはずがない。そして、今回のコラボで何よりも強く意識したことは、“受け取り手の存在”だった。

世界観が確立された“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”とのコラボは、Tシャツやスニーカーよりもずっと深い意味を持っている。なぜなら、確固たる商業的ポップカルチャーとして成立しており、無垢な子どもたちをファンとして抱えている以上、彼らの素朴で清廉な心を尊重しなければならない。それに比べて、私のスニーカーを購入する大人たちは大半がリセール目的で、純粋なわけがないだろ?(笑)。なんにせよ、その世界の隔たりを理解しているからこそ、「レゴブランド」との試みを心から尊重し、より意義深く感じているんだ。そういう意味では、これまでに数々の美術館で個展を開き、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ナイキ(NIKE)」とも協業してきたが、「レゴブランド」とのプロジェクトがそれらと同等にクールだと断言できるよ。普段の私は「作品が誰に向けられたものか」を意識しないが、今回ばかりは誰の手に渡るかを考えざるを得なかった。「この“未来の忍者”を、子どもたちは受け入れてくれるだろうか?」と心配になるほどにね。だが結果として、私にとっても、“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”にとっても、そしてファンにとっても、意味のあるコラボになったと信じているよ。

ーー“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”に登場するキャラクターたちには、それぞれ固有の能力(エレメントパワー)が宿っており、ご自身のモチーフ“アトム”との結び付きを感じたそうですね。

フューチュラ:キャラクターたちが持つ炎や水のエレメントパワーの概念そのものに、強いシンパシーを覚えたんだ。エレメントパワーとは、言うなれば地球や生命の根源的なエネルギーであり、“アトム”は私自身のエレメントパワーだと捉えているからね。“アトム”は、文字通り原子力が着想源だ。“アトム”のルーツは、私が少年時代を過ごした1960年代の冷戦期にある。当時、学校で空襲や核攻撃を想定した避難訓練のベルが鳴ると、私たちは地下ではなく机の下に潜らなければならなかったんだが、核爆弾に対して机の下だなんて、あり得ないだろ?(笑)。子ども心に「意味がない」と感じていたが、学校には常にあのシンボルが掲げられていて、あの時代がはらんでいた深刻でネガティブな記号を、自分自身のポジティブな表現の力へと昇華したのが“アトム”の出発点なんだ。

ーー他のキャラクターが刀や剣を携えているのに対し、“ポイントマン”には武器が見当たりません。彼にはどのような役割を与えたのですか?

フューチュラ:良い機会だから、“ポイントマン”の背景から説明をしてもいいかな?“ポイントマン”は本来、部隊の先頭に立って進む兵士を意味する軍事用語なんだ。部隊が未知の領域へ進む際、1~2名で先行して地形を索敵し、地図を描き、危険を知らせる重要な役割を果たす。そして、カルチャーのシーンにおいて年長者である私自身が担ってきたのも、まさにその役目だった。かつて誰よりも早く東京や香港、ロシア、アフリカを訪れては、ニューヨークの仲間にそのカルチャーのリアルを伝えていたんだ。東京であれば、「まるで映画『ブレードランナー』の世界そのものだった」「銀座や歌舞伎町はおもしろいぞ」「渋谷のハチ公前には……絶対に行け」といった具合にね(笑)。先陣を切ることは常に危険と隣り合わせだが、その開拓者としての私の生き様を投影したのが“ポイントマン”なんだ。

“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”の他のキャラクターが、刀や剣を持っているのは忍者として当然な一方で、“ポイントマン”は戦わない。どんな文明やコミュニティーにも、領地を主張するためではなく、人々のために標識やシンボルを描く人間が存在するように、彼もまた道標を描く役割を担っている。戦うのではなく、仲間たちが迷わず進み、無事に帰還できるように導く存在ということさ。今回は、師匠や先生のような立ち位置でもあり、これまでのどの作品よりも現実の私自身に近い存在かもしれないね。

ーー“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”の世界観と向き合う中で、自身の哲学と重なり合う部分はありましたか?

フューチュラ:“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”の次のチャプターは、時間軸を超越して未来へと進む展開になると感じていた。だからこそ、私という存在が引き合わされたのは必然だったと思う。なにせ、私自身が“Futura(未来)”なのだから!(笑)。それに、未来も過去もすべては相対的なものだ。昨日があるから、今日がある。私は常々「どうか、いまこの瞬間を生きてほしい」とみんなに伝えているんだ。指針を得るために過去を振り返ることはできても、旅路において後退することはあり得ない。人生は常に前進し続けなければならないからね。

ーーグラフィティというカウンターカルチャーを出発点とするあなたが、今日では「レゴブランド」のようなメインストリームの企業とも協業しています。一見すると対極にある2つのフィールドを行き来することは、ご自身の創作活動において矛盾するものですか? それとも地続きの表現なのでしょうか?

フューチュラ:ストリートカルチャーが一種の非行や不良行為から始まったのは事実だが、それは半世紀も前の話だ。何十年もの歳月をかけて若者たちの自己表現の手段へと成熟し、世界的なカルチャーストーリーへと進化した。ただ、正直に言えば、私が普段手掛けている商業プロジェクトの多くは、企画してモノを売るビジネスの側面が強く、どうしても表層的な部分が拭えないこともある。だが、今回のプロジェクトは違った。より深い精神性の部分で、自分自身が投影されている手応えがあるんだ。“レゴ®ニンジャゴー レジェンド”を通じて、“ポイントマン”も世界中の子どもたちにとって長く愛され、心に残る存在になってくれたら、これ以上の喜びはないよ。

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